
2025/07/30(水)
Google Agentspaceは、企業内の情報を統合してAIエージェントによる横断検索や業務自動化を実現するプラットフォームとして、多くの企業で注目を集めています。しかし、実際にどのような活用事例があるのか、具体的な導入効果はどの程度なのか、詳細な情報はまだ限られているのが現状です。
今回は、Googleのイベントで紹介された3社の具体的な活用事例を通じて、Google Agentspaceの特長と実際の導入効果について詳しく解説します。これらの事例を参考にすることで、あなたの組織でのAI活用の可能性を具体的にイメージできるでしょう。
目次
Google Agentspaceは、企業内の情報を統合してエージェントによる横断検索や活用を実現するプラットフォームです。最大の特徴は、事前構築されたコネクタによって、Google WorkspaceやBigQueryなどのGoogle Cloudサービスだけでなく、主要なサードパーティサービスとも簡単に連携できる点にあります。
Googleの日本代表である平出氏は、「自律的に試行と判断を繰り返し、検索から実行まで一気通貫で管理を行うAIエージェントは、精緻な業務に深く組み込まれる鍵になっている」と述べており、単なる検索ツールを超えた業務支援システムとしての位置づけを明確にしています。
Mixiは日本企業として初めてGoogle Agentspaceを大規模導入した企業として注目されています。同社がGoogle Agentspaceを選択した理由は、Google WorkspaceやBigQueryなど、企業が既に保有していたGoogle Cloudサービスとの親和性の高さにありました。
Mixiでは、以下の3つのステップでGoogle Agentspaceの導入を段階的に進めています:
ステップ | 内容 | 具体的な取り組み |
---|---|---|
1. 社内情報検索の統合 | 社内にある情報を横断的に検索できる環境の構築 | サードパーティサービスとの連携により、部門を超えた情報アクセスを実現 |
2. 社内AIの集約 | 既存の社内AIエージェントの統合 | 従業員がワンストップで複数のAIツールを利用できる環境を整備 |
3. 自律連携AIの業務支援 | 高度な業務自動化の実現 | マーケティングコンテンツ生成からキャンペーン可視化、新アイデア提案まで一連の業務を自動化 |
特に注目すべきは第3ステップの内容です。Mixiでは、マーケティングコンテンツの生成、キャンペーンの可視化、これを基にした新しいアイデアの提案、さらにクリエイティブ画像の作成までを一連の流れとして自動化しています。
この際、BigQueryに蓄積された過去のキャンペーンデータを活用することで、データドリブンな提案を実現していると考えられます。
メルカリでは、「カスタマーエンゲージメントスイート with Google AI」として、Google Agentspaceを活用したカスタマーサポートシステムを構築しています。同社は既に出品時のサポートや自動違反検知など、様々なAI機能を実装してきた実績がありますが、Google Agentspaceの導入により、さらに高度なサポート体制を実現しています。
実際の運用では、ユーザーからの問い合わせに対してAIが回答の提案内容を作成し、それを使って返信できる仕組みを構築しています。AIが回答できない場合でも、人間のオペレーターが素案を確認して対応するというハイブリッドな運用体制により、品質を保ちながら効率化を実現しています。
またメルカリは、自社システムにGoogle Agentspaceで作成したエージェントを組み込んで利用しています。このような「モジュール単位」で利用できるのもAgentspaceの特長のようです。
「生活者価値デザインカンパニーになる」というビジョンを掲げる博報堂では、GeminiおよびNotebookLMを全社利用できる環境を整備し、独自の取り組みを展開しています。
博報堂では「AI逆メンター制」という興味深い制度を導入しています。これは、積極的にAI活用している若手社員が役員に対してAIの使い方を指導するという、従来の組織構造を逆転させた画期的な取り組みです。この制度により、組織全体でのAI活用スキルの底上げを図っています。
博報堂では、NotebookLMを活用して以下のような業務改善を実現しています:
特に注目すべきは、NotebookLMを単体で使用するのではなく、Google Agentspaceと連携させることで、より高度な自動化を実現している点です。これにより、NotebookLMの情報をAPIや別のワークフローの中で活用できるようになっています。
通常のNotebookLMでは、登録した内容を外部に出力することはできないのですが、NotebookLMのEnterpriseプランではAgentspaceに組み込むことができるようです。
これらの事例から見えてくるGoogle Agentspaceの主要な特長は以下の3点です:
Google Agentspaceの最大の強みは、Google CloudやGoogle Workspaceとの親和性の高さです。既にこれらのサービスを利用している企業であれば、追加の複雑な設定なしに、既存のデータやワークフローを活用できます。特にBigQueryとの連携により、蓄積されたビジネスデータを直接AI分析に活用できる点は、他のプラットフォームにはない大きなアドバンテージです。
Google AgentspaceとNotebookLMの連携は、特に知識集約型の業務において威力を発揮します。NotebookLMで蓄積した情報を、リアルタイムでアプリやプロジェクトからアクセスできるため、組織の知識資産を効果的に活用できます。
例えば、博報堂の事例では、CM制作に関する特有の知識やノウハウをNotebookLMに集約し、それをGoogle Agentspace経由で様々な業務プロセスから参照できるようにしています。これにより、個人の経験や知識に依存していた業務を、組織全体で共有・活用できる仕組みに変革しています。
Google Agentspaceで作成したエージェントは、外部から呼び出すことが可能です。これにより、社内で開発したAIエージェントを、自社開発のアプリケーションやカスタマーサポートツールに組み込むことができます。
メルカリの事例では、この機能を活用して自社開発のカスタマーサポートツールにGoogle AgentspaceのAI機能を統合し、24時間対応のサポート体制を構築しています。従来のチャットボットとは異なり、モジュール単位で柔軟にカスタマイズできるため、企業固有の要件に合わせた最適化が可能です。
Google Agentspaceの3社の活用事例から、以下の重要なポイントが明らかになりました:
Google Agentspaceは、単なるAIツールではなく、企業の業務プロセス全体を変革するプラットフォームとしての可能性を秘めています。これらの事例を参考に、あなたの組織でも段階的なAI活用の検討を始めてみてはいかがでしょうか。
本記事の内容は、以下の資料も参考にしています:
Google Agentspaceは、企業内の情報を統合し、AIエージェントによる横断検索や業務自動化を実現するプラットフォームです。Google WorkspaceやBigQueryなどのGoogle Cloudサービス、主要なサードパーティサービスと連携できます。
Mixiは、社内情報検索の統合、社内AIの集約、自律連携AIの業務支援という3段階でGoogle Agentspaceを導入しています。マーケティングコンテンツの生成、キャンペーンの可視化、新しいアイデアの提案、クリエイティブ画像の作成などを自動化しています。
メルカリは、「カスタマーエンゲージメントスイート with Google AI」として、Google Agentspaceを活用したカスタマーサポートシステムを構築しています。24時間のエージェントサポート、リアルタイム予約による回答広報などを実現し、AIが回答できない場合は人間のオペレーターが対応するハイブリッドな運用体制をとっています。
博報堂は、GeminiとNotebookLMを全社利用できる環境を整備し、AI逆メンター制を導入しています。NotebookLMにCM特有の情報を集約し、Google Agentspaceと連携させることで、報告書作成の自動化や、組織全体での知識共有・活用を実現しています。
段階的な導入アプローチ、既存システムとの連携設計、組織文化の変革が重要です。一度にすべての機能を導入するのではなく、まずは社内情報検索の統合から始め、徐々に高度な自動化機能を追加していくと良いでしょう。また、既存のGoogle Cloudサービスやサードパーティツールとの連携を事前に設計することが重要です。
Workstyle Evolution代表。18万人超YouTuber&『ChatGPT最強の仕事術』著者。
株式会社Workstyle Evolution代表取締役。YouTubeチャンネル「いけともch(チャンネル)」では、 AIエージェント時代の必須ノウハウ・スキルや、最新AIツールの活用法を独自のビジネス視点から解説し、 チャンネル登録数は18万人超(2025年7月時点)。