
2025/08/02(土)
OpenAIが2025年8月に発表したRealtime APIの一般提供開始により、音声AIエージェントの世界が大きく変わろうとしています。従来のテキストベースのやり取りから、まるで人間と話しているかのような自然な音声対話が可能になり、さらにMCP(Model Context Protocol)サーバーとの連携により、外部データとの接続も簡単に実現できるようになりました。
この記事では、実際にOpenAIのプレイグラウンドでZapier経由のNotion連携を試した体験を通じて、音声エージェントの可能性と現在の課題について詳しく解説します。ビジネスでの活用を検討している方にとって、実践的な知見をお届けできるでしょう。
目次
OpenAIのRealtime APIは、音声を直接単一のモデルとAPIで処理することにより、従来のアプローチと比較して大幅な遅延削減を実現しています。これまでの音声AIは、音声をテキストに変換し、テキストで処理してから再び音声に戻すという複数段階のプロセスが必要でしたが、新しいgpt-realtimeモデルでは、音声のニュアンスを保持しながらリアルタイムでの音声対話が可能になりました。
特に注目すべきは、複雑な命令への対応能力と感情表現の豊かさです。新しい音声合成モデルは、さまざまな感情を表現する抑揚があり、非常に人間的な対話を実現します。実際にプレイグラウンドで体験してみると、その自然さに驚かされます。
MCPは、AIモデルに追加のツールと知識を拡張するための業界標準となりつつあるオープンプロトコルです。OpenAIは「MCPが音声コマンドに適しており、ユーザーが接続されたアプリからシームレスにアクションを実行できる」と言及しています。
これにより、音声で依頼するだけで以下のようなアクションが可能になります:
つまり、裏側の設定でかなり柔軟にさまざまなサービスと連携できるということです。
実際にOpenAIのプレイグラウンドで、Zapier MCPを使ってNotionとの連携を試してみました。設定手順は以下の通りです:
設定完了後、「Notionから最新のAIニュースを引っ張ってきて、それに関して英語で議論したい」と音声で依頼しました。AIエージェントは自然な日本語で応答し、データ取得を開始しました。
対話の自然さは印象的で、まるで人間のアシスタントと話しているような感覚でした。感情表現も豊かで、「怒っている感じで説明できる?」という依頼にも適切に対応してくれました。
しかし、実際の運用では重要な課題も見えてきました。最も大きな問題はデータ取得の遅延です。
リモートMCPサーバーを使用する場合、以下のような経路でデータが流れます:
OpenAI → Zapier → Notion → Zapier → OpenAI
この多段階の接続により、データ取得に予想以上の時間がかかってしまいます。動画撮影用の短時間では、結果的にNotionからのデータ取得が完了せず、期待した動作を実現できませんでした。
また、使用したクエリデータベース機能が新しいツールであることも影響している可能性があります。より軽量な「Notion Find Database Item」に変更しても、同様の遅延が発生しました。
OpenAI Realtime APIとMCP連携をビジネスで活用する際は、以下の点を考慮する必要があります:
現在の技術レベルでは、リアルタイム性よりも対話の自然さが重要なシーンでの活用が適しています。例えば:
外部データとの連携を前提とする場合、データベース構造の最適化が成功の鍵となります。今回の体験でも、Notionのデータベースに適切な要約情報が入っていないケースで、期待した結果が得られませんでした。
OpenAI Realtime APIとMCP連携による音声エージェントは、確実に新しい時代の扉を開いています。対話の自然さと外部データ連携の可能性は、従来のチャットボットとは一線を画す体験を提供します。
主要なポイントをまとめると:
現時点では完璧ではありませんが、音声AIエージェントの基盤技術として非常に有望です。今後のアップデートにより、遅延問題などの課題が解決されれば、ビジネスでの本格的な活用が現実的になるでしょう。
実際にデータを追加したり設定を調整したりしながら、より実用的なシステムを構築していくことが、次のステップとして重要になります。
OpenAI Realtime APIは、音声を直接処理することで、リアルタイムに近い音声対話を実現するAPIです。従来の音声AIのように、音声をテキストに変換するステップを省くことで、遅延を大幅に削減し、より自然で人間らしい対話が可能になります。
MCP(Model Context Protocol)は、AIモデルが外部のツールや知識を利用できるようにするためのオープンプロトコルです。OpenAI Realtime APIと連携することで、Gmail、Notion、各種SaaSツールなど、様々な外部サービスとの連携を音声で指示できるようになります。
OpenAIのプレイグラウンドでRealtime APIにアクセスし、MCPサーバーとしてZapier MCPを追加します。Zapierで新しいMCPサーバーを作成し、Notionツールを追加して対象データベースを設定、生成されたAPIキーをOpenAI側に設定することで連携できます。
OpenAI Realtime APIは、リアルタイム性よりも対話の自然さが重要なシーンに適しています。例えば、カスタマーサポートの初期対応、社内ヘルプデスクでのFAQ対応、教育・トレーニング用途、会議の議事録作成支援などが考えられます。
OpenAI Realtime APIと外部サービスを連携させる場合、データ取得の遅延が発生する可能性があります。特に、Zapierなどの仲介サービスを経由する場合、多段階の接続によりデータ取得に時間がかかることがあります。直接API連携やキャッシュ機能の活用が改善策として考えられます。
Workstyle Evolution代表。18万人超YouTuber&『ChatGPT最強の仕事術』著者。
株式会社Workstyle Evolution代表取締役。YouTubeチャンネル「いけともch(チャンネル)」では、 AIエージェント時代の必須ノウハウ・スキルや、最新AIツールの活用法を独自のビジネス視点から解説し、 チャンネル登録数は18万人超(2025年7月時点)。