
2025/07/30(水)
オープンソースLLM(大規模言語モデル)の代表格として君臨してきたMeta社のLlamaシリーズが、現在厳しい状況に直面しています。2025年4月にリリースされたLlama 4は期待を下回る評価を受け、年内にはLlama 4.Xのリリースが予定されているものの、オープンソースLLM市場における存在感は低下している印象があります。
一方で、中国系オープンソース(QwenやDeepSeekなど)や、GoogleのGemmaやMicrosoftのMAI-1といった新興勢力が台頭し、オープンソースLLM市場の勢力図は大きく変化しています。本記事では、Llama 4の現状分析から、オープンソースLLM市場全体の動向まで、最新の状況を詳しく解説します。
目次
2025年4月にリリースされたLlama 4は、残念ながら市場からの評価が芳しくないという評価があります。最も顕著に表れているのが、ダウンロード数の低迷です。
オープンソースモデルの配布プラットフォームであるOllamaでの統計を見ると、この状況は明確に数字として現れています:
さらに深刻なのは、LM Arena(大規模言語モデルの性能を競うプラットフォーム)での存在感の薄さです。LM Arenaのランキングを確認すると、Llama 4の単体モデルはほとんど見当たりません。代わりに目立つのは、他の開発者がLlama 4をベースに調整した「Llama 4 Maverick」のような派生モデルのみです。
Llama 4の苦戦は、競合モデルとの比較でより鮮明になります。LM Arenaのランキングでは、以下のような状況が見られます:
特に注目すべきは、オープンソースモデル同士の競争においても、Llama 4が苦戦していることです:
これらのモデルと比較しても、Llama 4は「だいぶ差を感じる」状況となっており、オープンソースLLM市場におけるLlamaの優位性が揺らいでいることが明らかです。
Llamaの存在感低下と対照的に、新しいプレイヤーが急速に台頭しています。
Gemmaは、Googleが2024年2月にリリースしたオープンソースLLMです。2Bと7Bパラメータという軽量性を武器とし、「アメリカ勢」のオープンソースモデルとして注目を集めています。
Gemmaの特徴:
最も驚くべき発見は、MicrosoftのMAI-1(Microsoft AIの略)がLM Arenaで予想以上に高い位置にランクインしていることです。MAI-1は「まさかここに入っていると思わなかった」というほど、予想外の高評価を獲得しています。
MAI-1の特徴:
現在の厳しい状況を受けて、Metaは年内にLlama 4.Xのリリースを予定しています。Meta Superintelligence Labs(MSL)内の「TBD」チームが開発を主導し、巻き返しを図っています。
Metaは以下の体制でLlama 4.Xの開発を進めています:
Llama 4で指摘された課題を踏まえ、Llama 4.Xでは以下の改善が期待されています:
現在のオープンソースLLM市場は、従来の「Llama一強」から「群雄割拠」の時代へと移行しています。この変化は、以下のような影響をもたらすと考えられます。
複数のプレイヤーが競争することで、技術革新のスピードが加速しています:
オープンソースLLM市場は現在、大きな転換点を迎えています。主要なポイントを整理すると以下の通りです:
Llamaが再び市場をリードできるかは、Llama 4.Xの性能次第です。しかし、すでに多様なプレイヤーが高い性能を示している現状を考えると、「オープンソースLLMといえばLlama」という時代は終わりを告げ、より競争的で選択肢豊富な市場へと変化していくことは間違いないでしょう。
企業や開発者にとっては、この変化は歓迎すべきものです。用途や要件に応じて最適なモデルを選択できる環境が整いつつあり、AIの民主化がさらに進展することが期待されます。
本記事の内容は、以下の資料も参考にしています:
Llama 4は、前世代のLlama 3.1と比較して、市場からの評価が低く、ダウンロード数も大幅に減少しています。Ollamaでのダウンロード数は、Llama 3.1が1億回を超えているのに対し、Llama 4は約63万回と、約160分の1という大きな差があります。この低迷は、リリース時期、知名度、用途、提供説明など、複合的な要因が影響していると考えられます。
LM Arenaのランキングでは、Llama 4単体モデルの存在感は薄く、他の開発者がLlama 4をベースに調整した派生モデル(例:Llama 4 Maverick)がわずかに見られる程度です。GPT-4やClaude Opusといったクローズドソースモデルや、DeepSeek、Qwen、GLMといった他のオープンソースモデルと比較して、性能面で劣るため、ランキングが低くなっています。
GoogleのGemmaは、2Bと7Bパラメータという軽量性が特徴のオープンソースLLMです。リソース制約のある環境でも動作し、小さなパラメータ数ながら高い性能を発揮します。企業での導入がしやすい点も特徴で、特に軽量アプリケーションでの利用に適しています。
MicrosoftのMAI-1は、Microsoft AI部門が開発したLLMであり、LM Arenaで予想以上に高い評価を得ています。Microsoftのエコシステムとの親和性が高く、企業向けに最適化されている点が評価されていると考えられます。同社のAI戦略の中核を担うモデルとして、今後の動向が注目されます。
Llama 4.Xでは、Llama 4で指摘された課題を踏まえ、コーディング性能、推論能力、指示実行の精度向上が期待されています。Metaは、トレーニング、研究、プロダクト、インフラストラクチャの各部門を強化し、Llama 4.Xの開発を進めています。
Workstyle Evolution代表。18万人超YouTuber&『ChatGPT最強の仕事術』著者。
株式会社Workstyle Evolution代表取締役。YouTubeチャンネル「いけともch(チャンネル)」では、 AIエージェント時代の必須ノウハウ・スキルや、最新AIツールの活用法を独自のビジネス視点から解説し、 チャンネル登録数は18万人超(2025年7月時点)。