
2025/07/27(日)
2025年9月現在、AI画像生成ツールの選択肢は急速に広がっています。毎月のように新しいツールがリリースされ、「より高解像度」「よりスマートな編集機能」「より高速な処理」を謳っています。しかし、実際の業務フローに組み込んだとき、すべてのツールが期待通りのパフォーマンスを発揮できるわけではありません。
この記事では、ByteDance(バイトダンス)が開発したフラッグシップ画像生成AI「Seedream v4」と、Googleが開発した高性能画像編集モデル「Google Gemini 2.5 Flash Image(通称:Nano Banana)」を徹底比較しました。両者はAI画像生成の最前線で競い合う、それぞれ異なる強みを持つツールです。
本記事では以下の内容をお届けします:
✅ Seedream v4とGemini 2.5 Flash Imageの違い(フォトリアル表現から複数画像編集まで)
✅ 実際に試した5つのプロンプトと結果比較
✅ AIビデオジェネレーターやヘッドショット生成ツールとの連携方法
✅ 業界ベンチマークデータと実用事例
こんな方におすすめの記事です!
それでは、両ツールの違いを詳しく見ていきましょう。
目次
まずは全体像を把握するために、主要な機能を比較表でまとめました。
項目 | Seedream v4 | Google Gemini 2.5 Flash Image (Nano Banana) |
---|---|---|
開発元 | ByteDance | Google DeepMind |
最大解像度 | 4K(4096×4096) | 柔軟なアスペクト比対応 |
編集機能 | 高度なインペインティング&アウトペインティング | 自然言語による精密な編集機能 |
プロンプト精度 | 高精度、テキスト描画も正確 | 高精度、キャラクター一貫性に強み |
参照画像対応 | 複数画像の同時参照が可能(最大6枚) | 複数画像の合成・ブレンドが可能 |
処理速度 | 2K画像を約1.8秒で生成 | 高速処理 |
アクセス方法 | ByteDance Seed、fal.ai、wavespeed.ai経由 | Gemini API、Google AI Studio、Vertex AI |
エコシステム連携 | AIビデオ生成ツールなど多数のプラットフォームと連携可能 | Google製品との統合、OpenRouter対応 |
ベンチマークスコア(ELO) | 1222(Text-to-Image)/ 1205(Image Editing) | 1168-1174(Text-to-Image)/ 1201(Image Editing) |
価格 | $30 per 1,000画像 | $30 per 1,000画像($0.039/画像) |
最適な用途 | 4K出力が必要なプロ案件、EC、代理店 | キャラクター一貫性重視、反復編集ワークフロー |
💡 重要ポイント:
両ツールとも業務レベルで使える本格的なAI画像生成モデルです。Seedream v4は4K出力と高速処理に強み、Gemini 2.5 Flash Imageはキャラクター一貫性と自然言語編集に優れています。
Seedream v4は、単なるバージョンアップではありません。これまでの拡散モデルが抱えていた「顔が溶ける」「手の形が崩れる」「テキストが読めない」といった問題を解決し、最大4096×4096の超高解像度出力を実現しています。
✅ 4Kフォトリアリスティック出力 – 映画レベルのディテール
✅ 複数の参照画像を同時に活用 – 最大6枚の画像を参照してスタイル合成
✅ 正確なテキストレンダリング – パッケージデザイン、ポスター、UIに使用可能
✅ 高度なインペインティング&アウトペインティング – 部分編集と画像拡張が自由自在
✅ API連携 – ByteDance Seed、fal.ai、wavespeed.aiを通じてアクセス可能
💡 なぜこれが重要なのか?
4K出力により、印刷物やデジタルサイネージ、広告キャンペーンなど、あらゆる媒体で使用できる品質が確保されます。また、複数参照機能は、ブランドの一貫性を保ちながら大量の画像を生成する際に威力を発揮します。
4K出力って、実際の業務で本当に必要なんでしょうか?スマホやPCで見るだけなら普通の解像度で十分な気がするのですが…
用途によって大きく変わります。SNS投稿やWebサイト表示だけなら通常解像度で問題ありません。ただし、印刷物(パンフレット、ポスター)やデジタルサイネージ、商品パッケージデザインなど、大きく引き伸ばして使う場合は4K出力が必須です。低解像度の画像を拡大すると粗さが目立ってしまいます。また、画像を部分的にトリミングして使う場合も、4Kなら余裕を持って切り出せます。
Google Gemini 2.5 Flash Image(通称:Nano Banana)は、Googleが開発した最新の画像生成・編集モデルです。世界トップレベルの画像編集能力を持ち、特にキャラクターの一貫性維持と自然言語による精密な編集に優れています。
✅ キャラクター一貫性の維持が得意
✅ 自然言語による直感的な編集が可能
✅ 複数画像のブレンド・合成機能
✅ Google AI Studio、Gemini API、Vertex AIで広く利用可能
✅ Googleの世界知識を活用した画像生成
✅ 対話的な編集ワークフロー – 会話形式で段階的に画像を改善
✅ マルチ画像合成 – 複数の画像を組み合わせて新しいシーンを作成
✅ 高品質なテキスト描画 – 画像内のテキストをクリアに表現
✅ 広範なエコシステム – Adobe Firefly、Leonardo.aiなど多数のプラットフォームと連携
💡 結論:
Gemini 2.5 Flash Imageは反復的な編集作業や、同じキャラクターを異なるシーンで使い回す必要がある場合に特に強力です。
ここからは、実際に両ツールに同じプロンプトを入力し、その結果を比較していきます。これにより、どのシーンでどちらが優れているのかが明確になります。
プロンプト:
「赤でマークされたエリアにテレビを、青でマークされたエリアにソファを配置してください。元の木製スタイルを維持してください。」
入力画像:
Seedream v4の結果:
オブジェクトが正確に配置され、木目のテクスチャと自然に調和。ライティングの一貫性も保たれ、リアルなインテリアシーンが完成しました。
Gemini 2.5 Flash Imageの結果:
配置は正確に行われ、全体の統一感も良好。自然言語指示による編集の精度が高い結果となりました。
📌 重要ポイント:
両モデルともインテリアデザインや商品配置のシミュレーションに対応できる実力を持っています。
プロンプト:
「雑然としたオフィスデスク。デスク上には、緑色のコードが表示されたノートパソコンが開いている。その隣に『Developer』と書かれたマグカップがあり、湯気が立ち上っている。近くに開いた本があり、ページにはベン図が描かれている。縦に整理されたマインドマップが書かれた付箋。その横に万年筆があり、キャップは外されている。通知が表示されたスマートフォン。隅に多肉植物の鉢。背景:ぼやけた本棚。右側から差し込む太陽光。」
Seedream v4の結果:
フォトリアリスティックで鮮明。マグカップのテキストは読み取り可能、付箋の構造も再現され、ノートパソコンのコードも正確。光と影も自然です。
Gemini 2.5 Flash Imageの結果:
全体的に高品質で、プロンプトの要素を適切に再現。細部の表現も良好です。
📌 重要ポイント:
複雑で詳細なプロンプトに対しては、両モデルとも高い再現性を示しています。
プロンプト:
「画像1のキャラクターに、画像2の衣装を着せてください。」
入力画像:
Seedream v4の結果:
キャラクターの姿勢と体型を保ちながら、新しい衣装を自然に適用。背景も保持され、衣装のテクスチャが説得力を持って表現されました。
Gemini 2.5 Flash Imageの結果:
キャラクターの顔の特徴を高精度で維持しながら衣装を変更。一貫性の維持において特に優れた結果を示しました。
📌 重要ポイント:
両モデルとも複数参照機能を持ち、EC、ファッション、マーケティングワークフローで活用できます。Gemini 2.5 Flash Imageはキャラクターの一貫性維持に特に強みがあります。
プロンプト:
「月曜日から日曜日までの7枚のスマートフォン壁紙を生成してください。各画像は自然風景をテーマにし、対応する曜日をラベル表示してください。」
Seedream v4の結果:
風景は鮮やか、スタイルが統一され、ほぼすべてに日付ラベルが表示されました。テキストの位置を均一にすることはできませんでしたが、全体として高品質です。
Gemini 2.5 Flash Imageの結果:
バリエーションのあるスタイルで生成されています。テキスト表示は配置にズレがあるものの安定しています。「Saturday」のみ重複し、8枚生成されてしまいました。
複数の画像を参照って、具体的にどんな場面で使うんですか?1枚ずつ作ったほうが早い気もするのですが…
ECサイトの商品画像制作で特に威力を発揮します。例えば、同じモデルに50種類の服を着せた画像を作る場合、従来なら50回撮影が必要でした。複数参照機能なら、モデルの画像1枚と服の画像50枚を用意すれば、全パターンを自動生成できます。また、ブランドの世界観を統一したい場合も、参照画像としてブランドカラーやロゴを指定すれば、一貫性のあるビジュアルを量産できます。
📌 重要ポイント:
大量のビジュアル素材を自動生成する必要がある場合、両ツールとも実用レベルの品質を提供します。
プロンプト:
「黒板に以下の連立方程式と解法手順を描いてください:5x + 2y = 26; 2x – y = 5。」
Seedream v4の結果:
方程式が論理的に解かれ、手順が正確に流れ、テキストも明瞭。1行に小さなギャップがありましたが、理解には影響しませんでした。
Gemini 2.5 Flash Imageの結果:
教育的なコンテンツとして使用できる品質で、方程式と解法手順を適切に表現しています。テキスト全体も読みやすく生成できました。
📌 重要ポイント:
両モデルとも教育コンテンツや構造化されたビジュアルに対応できます。
独立した評価テストでも、両モデルの高い性能が裏付けられています。Artificial Analysisのベンチマークでは、Seedream v4がText-to-ImageでELOスコア1222、Image EditingでELO 1205を記録し、わずかな差でトップに位置しています。一方、Gemini 2.5 Flash ImageはText-to-ImageでELO 1168-1174、Image EditingでELO 1201と、ほぼ互角の高性能を示しています。
主な評価項目:
項目 | Seedream v4 | Gemini 2.5 Flash Image |
---|---|---|
プロンプト精度 | 優秀 | 優秀 |
テキストレンダリング | 優秀 | 優秀 |
編集の整合性 | 優秀 | 優秀(キャラクター一貫性に特に強み) |
総合評価 | トップクラス | トップクラス |
結局、Seedream v4とGemini 2.5 Flash Image、どっちを選べばいいんでしょうか?両方とも優秀すぎて決められません…
プロジェクトの目的で判断しましょう。印刷物や大型ディスプレイ用の素材が必要なら、4K出力に対応したSeedream v4が適しています。一方、キャラクターやマスコットを使ったシリーズコンテンツを作る場合は、キャラクターの一貫性維持に優れたGemini 2.5 Flash Imageが向いています。両ツールとも価格は同じ($30/1000画像)なので、まずは小規模なテストで両方試してみることをおすすめします。
✅ クリエイター
Seedream v4の出力を「スタジオジブリ風AI」トレンドと組み合わせて、スタイライズされたコンテンツキャンペーンを展開。
✅ 代理店
ヘッドショット生成ツールと連携し、ブランド統一感を保ったまま顧客向けのプロフィール画像を量産。
✅ ECチーム
Seedream v4の4K出力から直接、商品動画の素材を作成。
✅ 開発者
APIを使用して、Seedreamを自動化プラットフォームやAIビデオジェネレーターと連携。
✅ Google製品との連携
Google AI Studio、Gemini API、Vertex AIを通じたシームレスな統合。
✅ Adobe製品との連携
Adobe Firefly、Photoshop(ベータ版)、Adobe Expressで利用可能。
✅ サードパーティプラットフォーム
Leonardo.ai、OpenRouter.aiなど、多数のクリエイティブツールと連携。
生成AIクリエイティブ経済の統計によると、クリエイター市場は急速に拡大しており、ブランドはビジュアル素材の一部を生成AIツールに依存し始めています。
「スタジオジブリ風AI」のトレンドは、視聴者が独自の美学に惹かれることを示しています。両モデルの複数参照機能はこの需要をサポートします。
InstagramのトップAIインフルエンサーは、ブランドキャンペーンで高品質なAI生成ビジュアルを使用しています。
あるファッション小売業者は、AI画像生成ツールを使用してカタログ画像をレンダリングしました。複数参照編集機能により、同じモデルに50種類以上の衣装を着せることができ、制作コストを大幅に削減しました。
あるコンテンツクリエイターは、AI画像生成ツールを使用してスタイル統一されたプロフィール画像を生成しました。ヘッドショット生成ツールと組み合わせることで、一貫性のあるオンラインアイデンティティを確立しました。
ある教育テクノロジースタートアップは、AI画像生成ツールに黒板の数式レンダリングを依頼しました。結果はクリーンで正確な教育用素材として活用されています。
A. 現時点では未対応です。ただし、AIビデオジェネレーターと組み合わせることでアニメーション化が可能です。
A. はい。高品質な出力で、プロフェッショナルなキャンペーンに対応できます。
A. いいえ。Seed、fal.ai、wavespeed.ai経由のAPI形式で提供されています。
A. 4K出力が必要ならSeedream v4、キャラクターの一貫性を重視するならGemini 2.5 Flash Imageが適しています。
Seedream v4とGemini 2.5 Flash Imageは、それぞれ異なる強みを持つ、世界トップクラスのAI画像生成ツールです。
✅ 4K出力が必要なプロジェクトへ
Seedream v4の高解像度レンダリングが、印刷物やデジタルサイネージに最適です。
✅ キャラクター一貫性を重視するプロジェクトへ
Gemini 2.5 Flash Imageの一貫性維持能力が、シリーズコンテンツやブランドキャンペーンで威力を発揮します。
✅ 開発者へ
両ツールともAPIを提供しており、自動化ツールやAIビデオジェネレーターとシームレスに連携できます。
💡 次のアクション:
あなたのクリエイティブな挑戦を、心から応援しています! 🚀
Magic Hour共同創業者兼CEO。Y Combinator採択歴を持つ起業家。
AI動画生成プラットフォーム「Magic Hour」の共同創業者兼CEO。Y CombinatorのWinter 2024バッチに採択された実績を持つ起業家である。Meta(旧Facebook)ではデータサイエンティストとして、新規プロダクト開発部門「New Product Experimentation(NPE)」にて0→1のコンシューマー向けソーシャルプロダクトの開発に従事した経験を有する。
この記事は著者の許可を得て公開しています。
元記事:https://magichour.ai/blog/why-seedream-v4-outpaces-nano-banana
Workstyle Evolution代表。18万人超YouTuber&著書『ChatGPT最強の仕事術』は4万部突破。
株式会社Workstyle Evolution代表取締役。YouTubeチャンネル「いけともch(チャンネル)」では、 AIエージェント時代の必須ノウハウ・スキルや、最新AIツールの活用法を独自のビジネス視点から解説し、 チャンネル登録数は18万人超(2025年7月時点)。