
2025/10/17(金)
「ChatGPTが何がそんなにすごいか分からない」「持ち上げられすぎじゃないか」と感じている方もいるかもしれません。しかし、生成AIの真の力を引き出すためには、単にツールを使うだけでは不十分です。MITの最新研究により、AIモデルのパフォーマンス向上の半分はモデル自体の性能、残りの半分はユーザーのプロンプト作成能力によるものであることが明らかになりました。
この記事では、なぜプロンプトエンジニアリングが今でも必要不可欠なスキルなのか、MITの実験結果を詳しく解説し、実際にどのようにプロンプト力を向上させればよいのかを具体的にお伝えします。読み終える頃には、あなたもAIとの対話において劇的な成果の違いを実感できるようになるでしょう。
目次
プロンプトエンジニアリングとは、AIに対して明確にコミュニケーションする方法です。単なる命令を与える行為以上に、AIに適切な文脈を与えることが重要な要素となります。
最近では「プロンプトエンジニアリング」ではなく「コンテクストエンジニアリング」という表現を使う専門家も増えています。これは、AIに対して単純な指示を出すのではなく、タスクを実行するために必要な背景情報や文脈を適切に提供することの重要性が認識されているためです。
このスキルは、エンジニアに限らず、リーダー、クリエイター、そしてオートメーション時代により賢く働きたい全ての人にとって急速に重要になっています。なぜなら、どれほど高度なAIモデルが登場しようとも、出力は入力に依存するという基本原則は変わらないからです。
コンピュータサイエンスの世界には「ガベッジイン、ガベッジアウト」という有名な格言があります。これは「ゴミのような入力からは、ゴミのような出力しか得られない」という意味です。
この法則は、最新のAI技術においても例外ではありません。どれほど高度なモデルが開発されようとも、プロンプトの質が低ければ、期待する結果は得られないのです。逆に言えば、適切なプロンプトを作成できれば、AIの真の力を引き出すことができるということです。
2024年8月4日に発表されたMITの研究では、約2000人の参加者を対象とした大規模な実験が行われました。この実験の内容を詳しく見てみましょう。
実験の結果、以下のような興味深い発見がありました:
MITの研究により、出来の悪いプロンプトは2つの類型に分かれることが明らかになりました。
一つ目は、曖昧で具体性に欠けるプロンプトです。例えば「良い画像を作って」「きれいなデザインにして」といった抽象的な指示では、AIは何を基準に「良い」「きれい」と判断すればよいか分からず、期待する結果を得ることができません。
二つ目は、過剰な詳細を整理せずに詰め込んだプロンプトです。情報が多ければ良いというわけではなく、関連性の低い詳細情報を大量に含めると、AIは重要な要素を見失い、かえって品質の低い出力を生成してしまいます。
例えるなら、これは「料理の材料を全部鍋に放り込む」ようなものです。味のバランスを考えずに調味料や具材を詰め込みすぎると、かえって味がぼやけてしまいます。
重要な発見の一つは、プロンプト作成は技術的スキルではないということです。エンジニアでなくても、適切な練習により誰でも上達することができます。
プロンプティングは練習で上達します。以下のステップを意識して取り組むことで、効果的なプロンプト作成能力を身につけることができます:
今回の実験は画像生成という比較的特殊なケースを対象としていましたが、その結果から得られる示唆はビジネス全般に適用可能だと私は考えています。
なぜなら、自分がやりたいことを理解して言葉にできないと、AIがどんなに賢くなってもその能力を十分に発揮できないからです。これは画像生成に限らず、文書作成、データ分析、戦略立案など、あらゆる業務において共通する原則です。
言うなれば、「優秀なシェフに『おいしい料理を作って』とだけ言う」ようなものです。味の方向性や好みがわからなければ、最高の材料を使っても満足のいく料理はできません。
ビジネスの現場では、以下のような場面でプロンプトエンジニアリングの重要性が顕著に現れます:
これらが明確でなければ、AIが生成した結果をチェックすることも、実際の業務に活用することもできません。
効果的なプロンプトエンジニアリングを実践するためには、AIが何ができて、どこまでお願いしたいかということを明確に理解することが不可欠です。
曖昧すぎるプロンプトも、過剰に詳細を詰め込んだプロンプトも、いずれも背景には「AIの能力と限界を正しく理解していない」という共通の問題があります。AIとの効果的な協働を実現するためには、この理解を深めることが重要です。
MITの研究結果は、プロンプトエンジニアリングが今でも必要不可欠なスキルであることを科学的に証明しました。主要なポイントを整理すると以下の通りです:
オートメーション時代において、AIとの効果的なコミュニケーション能力は、すべてのビジネスパーソンにとって必須のスキルとなっています。今回ご紹介したMITの研究結果を参考に、ぜひあなたもプロンプトエンジニアリングのスキル向上に取り組んでみてください。
本記事の内容は、以下の資料も参考にしています:
プロンプトエンジニアリングとは、AIに対して明確に指示を出すためのコミュニケーション術です。AIにタスクを実行させるために、必要な背景情報や文脈を適切に提供することが重要になります。AIの性能を最大限に引き出すために不可欠なスキルです。
MITの研究によると、AIモデルのパフォーマンス向上の半分はモデル自体の性能、残りの半分はユーザーのプロンプト作成能力によるものとされています。どれほど高度なAIでも、質の低いプロンプトでは期待する結果は得られません。AIを効果的に活用するためには、プロンプトエンジニアリングが不可欠です。
効果的なプロンプトを作成するには、まず自分が何を達成したいのかを明確にすることが重要です。目標、想定ユーザー、達成したい成果の3つの要素を具体的に定義しましょう。また、AIを賢い子供のように考え、役割、トーン、構成を指定することも有効です。
プロンプトがうまくいかない場合、曖昧すぎるか、過剰な詳細を詰め込みすぎている可能性があります。曖昧な指示ではAIが判断基準を持てず、詳細が多すぎるとAIが重要な要素を見失います。プロンプトは具体的に、かつ簡潔に記述することが重要です。
はい、プロンプト作成は技術的なスキルではないため、エンジニアでなくても練習によって上達できます。文脈について批判的に考えたり、AIを賢い子供のように接したり、役割やトーンを指定したりするなどのアプローチを意識することで、誰でも効果的なプロンプトを作成できるようになります。
Workstyle Evolution代表。18万人超YouTuber&『ChatGPT最強の仕事術』著者。
株式会社Workstyle Evolution代表取締役。YouTubeチャンネル「いけともch(チャンネル)」では、 AIエージェント時代の必須ノウハウ・スキルや、最新AIツールの活用法を独自のビジネス視点から解説し、 チャンネル登録数は18万人超(2025年7月時点)。