医療分野に特化したAIチャットボット「OpenEvidence」が、わずか3ヶ月で企業評価額を35億ドルから60億ドルへと約2倍に押し上げ、2億ドルの資金調達を完了しました。
「医療版ChatGPT」と呼ばれるこのプラットフォームは、医師だけでなく一般ユーザーも無料で利用でき、日本語にも対応しています。医学論文に基づく信頼性の高い回答が得られることから、医療現場で急速に普及しており、その成長スピードは「初期のGoogleに匹敵する」と評価されています。
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OpenEvidenceは2022年に設立された医療AI企業で、医師や医療従事者、そして一般ユーザーが医療に関する質問を投げかけると、査読済みの医学文献に基づいた信頼性の高い回答を提供するプラットフォームです。
このプラットフォームの最大の特徴は、NEJM(New England Journal of Medicine)やJAMA(Journal of the American Medical Association)などの権威ある医学雑誌で訓練されている点にあります。一般的なAIチャットボットとは異なり、公共のインターネットから完全に切り離されたシステムを構築し、学習データを「査読済みの医学文献」と「FDA(米国食品医薬品局)やCDC(米国疾病予防管理センター)などの公的機関の情報」に厳格に限定しています。

創業者のNadler氏は「医療では信頼が重要である。NEJMで訓練され、医師のためにゼロから構築されたという事実が、精度において白黒はっきりした違いを生む」と述べており、医療現場で致命的となるAIの「ハルシネーション(誤情報の生成)」リスクを劇的に低減することに成功しています。
OpenEvidenceの成長スピードは業界でも類を見ないものです。2025年7月に35億ドルの評価額で2億ドルを調達した後、わずか3ヶ月後の2025年10月には評価額60億ドル(約9,000億円)で2億ドルの追加資金調達を完了しました。これは71%の評価額増加を意味します。
評価額の推移を見ると、その成長の勢いがよく分かります:
今回のシリーズCラウンドはGoogle Venturesが主導し、Sequoia Capitalなどの著名投資家も参加しています。シリコンバレーの大手ファンドからは「医師が実際に使いたがるプラットフォームという、ヘルスケア技術における最も稀な現象を私たちは目にしている」との評価を得ています。
OpenEvidenceの利用実績も驚異的な数字を示しています。2022年の設立以来急速に成長し、1ヶ月の臨床件数が7月以来ほぼ倍増し、1,500万件に達したと報告されています。
具体的な利用状況を見ると:
この成長率は前年比2000%という驚異的な数字を記録しており、医療現場でのAI活用が急速に進んでいることを示しています。
OpenEvidenceの大きな特徴の一つは、一般ユーザーも利用できる点です。医師や看護師などの医療従事者だけでなく、ゲストとして医療に関する相談ができます。ただし会員登録をする際には、医療従事者である証明書が必要でした。

実際に利用してみると、例えば「肩こりが運動しているが、がっつりある」といった日常的な健康の悩みに対しても、医学的な根拠に基づいた詳細な回答が得られます。回答には必ずリファレンス(参考文献)が付いており、すべて医学系の権威ある雑誌による情報であることが確認できます。

また、「ICL(眼内コンタクトレンズ)をして1ヶ月ぐらい経ったら、まだライトを見ると目の周りに違和感がある」といった具体的な医療処置後の症状についても、「3ヶ月から6ヶ月まで持続することがあります」といった専門的で信頼感のある回答を得ることができます。
ゲスト利用の場合、利用回数は週数回に制限されているので、注意が必要です。

OpenEvidenceは日本語でも利用可能です。これにより、日本のユーザーも言語の壁を感じることなく、世界最高水準の医療AI技術を活用できます。
日本語での質問に対しても、英語と同様に医学論文に基づいた信頼性の高い回答が得られ、参考文献も適切に提示されます。これは、医療情報の国際化と民主化において重要な意味を持っています。
OpenEvidenceが他の医療AIと一線を画すのは、その技術的な信頼性の高さにあります。
一般的な大規模言語モデル(LLM)とは異なり、OpenEvidenceは医療分野に特化した小型モデルを採用しています。学習データには「ランダムなウェブコンテンツ、ソーシャルメディア、健康ブログ」は一切使用せず、査読済み医学文献のみを使用しています。
特に注目すべきは、NEJM(New England Journal of Medicine)の全文データへの独占的アクセス権を有している点です。これは「グーグルを含む大手テック企業ですら取得できなかった特権」であり、NEJMのシニアエディターたちが自発的にOpenEvidenceを愛用していたことから、逆に提携を申し入れられた経緯があります。
医療AIチャットボット市場は急速に拡大しており、2024年の市場規模は3.525億ドル~16億ドルと評価されています。今後の成長見通しとしては、2033年までに14億380万ドル(CAGR 16.6%)から118億ドル(CAGR 24.9%)まで成長すると予測されています。
この成長市場において、OpenEvidenceは医療従事者の実際のニーズに応える形で急速にシェアを拡大しており、「医師が実際に使いたがるプラットフォーム」として他社との差別化を図っています。
OpenEvidenceは非常に信頼性の高いプラットフォームですが、利用時にはいくつかの注意点があります:
OpenEvidenceは現在、米国を中心に展開していますが、日本語対応を含む多言語展開により、グローバルな医療AI市場でのリーダーシップを目指しています。60億ドルという高い評価額は、投資家がこのプラットフォームの将来性を高く評価していることを示しています。
医療分野でのAI活用は今後さらに加速すると予想され、OpenEvidenceのような信頼性の高いプラットフォームの需要はますます高まるでしょう。一般ユーザーにとっても、医療情報へのアクセスが民主化される重要な転換点となる可能性があります。
OpenEvidenceは以下の特徴により、医療AI分野で急速な成長を遂げています:
医療情報の民主化と信頼性の両立を実現したOpenEvidenceは、今後の医療AI市場において重要な役割を果たすことが期待されます。一般ユーザーにとっても、日常的な健康相談から専門的な医療情報まで、信頼できる情報源として活用できる貴重なツールとなるでしょう。
本記事の内容は、以下の資料も参考にしています:
OpenEvidenceは、医療に特化したAIチャットボットです。医師や医療従事者だけでなく、一般ユーザーも無料で利用でき、医学論文に基づいた信頼性の高い回答を提供します。NEJMなどの権威ある医学雑誌で訓練されており、医療現場での誤情報リスクを低減しています。
はい、OpenEvidenceは一般ユーザーも無料で利用できます。無料登録を行うことで、医療に関する相談が可能です。医学的な根拠に基づいた詳細な回答が得られ、参考文献も確認できます。
はい、OpenEvidenceは日本語に対応しています。日本語で質問することで、英語と同様に医学論文に基づいた信頼性の高い回答を得られます。参考文献も日本語で適切に提示されます。
OpenEvidenceは、査読済みの医学文献とFDAやCDCなどの公的機関の情報のみを学習データとして使用しています。NEJM(New England Journal of Medicine)の全文データへの独占的アクセス権も有しており、信頼性の高い情報源に限定されています。
OpenEvidenceは情報提供ツールであり、医師の診断の代替にはなりません。緊急時の利用は避け、直ちに医療機関を受診してください。相談内容は記録されるため、個人を特定できる情報の入力は避けることをお勧めします。
Workstyle Evolution代表。18万人超YouTuber&『ChatGPT最強の仕事術』著者。
株式会社Workstyle Evolution代表取締役。YouTubeチャンネル「いけともch(チャンネル)」では、 AIエージェント時代の必須ノウハウ・スキルや、最新AIツールの活用法を独自のビジネス視点から解説し、 チャンネル登録数は18万人超(2025年7月時点)。