2025年8月、GoogleがImagen 4ファミリーを一般公開し、AI画像生成をめぐる議論は大きく変化しました。もはや「AIで魅力的なビジュアルが作れるか?」という問いではなく、「どのモデルが自分の目的に最も合っているか?」が焦点となっています。
GoogleのImagen 4とImagen 4 Ultraは、同じファミリーに属しながらも、異なるアプローチを持つ2つのモデルです。Imagen 4はスピード・コントロール・コストパフォーマンスを重視した実用派、一方でImagen 4 Ultraは表現力豊かで、プロダクションレベルのリアリズムを追求した完成度重視派と言えるでしょう。
※: Imagen 4ファミリーには、同時にリリースされたImagen 4 Fastも含まれ、現在は3モデル体制となっていますが、本記事ではImagen 4とImagen 4 Ultraの2モデルに焦点を当てて比較します。
目次
✅ クリエイター、デザイナー、ストーリーテラーとして活動している方
✅ AI画像生成ツールの使い分けに悩んでいる方
✅ キャンペーン、ポートフォリオ、制作プロジェクトで質の高いビジュアルが必要な方
✅ コストと品質のバランスを最適化したい方
まずは全体像を把握しましょう。以下の表で、Imagen 4とImagen 4 Ultraの主な違いをチェックできます。
| 項目 | Imagen 4 | Imagen 4 Ultra |
|---|---|---|
| リアリズム | 安定した品質 | よりシャープで洗練され、写真に近いクオリティ |
| プロンプトの解釈 | 文字通り、予測可能 | ニュアンス豊か、抽象的な指示も理解 |
| コンセプチュアルなプロンプト | シンプルに対応 | ムードや象徴的な深みまで表現 |
| 生成速度 | 標準速度 | 標準速度 |
| 1枚あたりのコスト | 標準的なコスト | 高めのコスト |
| 最適な用途 | 探索・試作・構造的なプロンプト | 高リアリズム・エディトリアル・コンセプトストーリーテリング |
強み:
Imagen 4は、多くのクリエイターにとってのスタート地点となるモデルです。その最大の強みは、実用的で信頼性が高いこと。プロンプトを文字通りに解釈し、素早く結果を返してくれるため、多くの試行錯誤を効率的に繰り返せます。これはプロジェクトの初期段階、つまり実験やラフスケッチが優先される場面で特に有効です。
特徴:
テストを重ねた結果、Imagen 4はコントロール性に優れていることが明らかになりました。たとえば、「木製デスクの上に銀色のノートパソコン、その横に赤いノート」というプロンプトを入力すれば、そのまま忠実に再現されます。曖昧さや勝手な解釈はほとんどありません。これは、正確性を重視するプロダクトデザイナー、説明図の作成者、構造的なビジュアル素材を必要とするクリエイターにとって非常に価値のある特性です。
ただし、この直球さは強みであると同時に制約でもあります。文字通りの解釈は明快ですが、雰囲気や感情表現は平坦になりがちです。照明は十分、質感も描かれていますが、奥行き感は二次元的に感じられることがあります。シネマティック表現の作り込みには追加調整が有効となります。

<imagen 4で生成した画像>
「木製デスクの上に銀色のノートパソコン、その横に赤いノート」
✅ 効率的なコストで何度もテストできる、反復作業に最適
✅ プロンプトに忠実で予測可能な結果が得られる
✅ プロダクトモックアップ、構造的デザイン、シンプルなキャラクター生成など幅広い用途に対応
⚠️ 抽象的・象徴的な表現は苦手
⚠️ 出力結果をプロレベルに仕上げるには追加の編集作業が必要になることも
⚠️ 雰囲気やムードの表現が控えめ
実際のテストでは、Imagen 4は精密さが求められる場面で安定した結果を提供しました。たとえば、「大理石のカウンターの上に3個のイチゴが乗った白い皿」という詳細なリクエストに対しても、混乱なく正確に再現されます。各要素は明確で、比率も適切です。ECビジュアルや技術図面など、指示への忠実性が重視される業界では、この信頼性は非常に貴重です。
一方で、創造的な深みには欠けることがあります。同じイチゴのプロンプトを「やわらかな夕暮れの光の下での詩的なフルーツの配置」のような抽象的な言葉で書いた場合、Imagen 4は相変わらず皿の上のフルーツを描きますが、黄昏のムード、光の繊細さ、解釈的な魅力は失われがちです。ここでImagen 4の兄弟モデル、Ultraの出番となります。
Imagen 4は探索のためのツールです。複数のドラフトを生成し、構図をテストし、オブジェクトの正確性を固めたい場面に最適です。
✨ こんな方におすすめ:
「文字通りの解釈」って具体的にどういうことですか?雰囲気重視の画像は作れないということでしょうか?
Imagen 4は、プロンプトに書かれた内容をそのまま正確に再現するのが得意なモデルです。たとえば「赤いリンゴ3個と青い皿」と指示すれば、その通りに描いてくれます。この特性は、商品モックアップや説明図など、正確性が求められる場面で非常に役立ちます。ただし、抽象的な表現は、やや控えめな仕上がりになることがあるため、雰囲気やムードを重視したい場合は、Imagen 4 Ultraの方が向いています。
強み:
Imagen 4 Ultraは、Imagen 4のフレームワークをベースに、より高度なリアリズム、多層的な解釈、表現の繊細さを加えたモデルです。編集作業をほとんど必要とせず、広告キャンペーン、エディトリアル、ポートフォリオなどのプロフェッショナルな用途に直接使える出力を生成するよう設計されています。
特徴:
その違いは、雰囲気を重視したプロンプトで作業する際に即座に現れます。たとえば「夕暮れ時、ガラスの橋の下でネオンの川が輝く夢のような街」という描写は、単に文字通りに解釈されるだけではありません。Ultraは深みを加えます。水面に反射する輝き、空に広がるシネマティックなグラデーション、そしてプロンプトの言葉を超えたリアリズムを感じさせる建築ディテールが描かれます。ただ指示を翻訳するだけでなく、トーンと感情を出力に織り込んでいくのです。
ポートレートにおいて、Ultraの洗練は最も顕著です。肌のトーンはより自然で、布の質感は光をリアルに捉え、被写体と環境の相互作用には意図が感じられます。Imagen 4がポートレートの構成要素を提供するのに対し、Ultraはポートレートの体験を提供します。

<Imagen 4 Ultraで生成した画像>
「夕暮れ時、ガラスの橋の下でネオンの川が輝く夢のような街」
✅ 詳細な質感と自然な照明によるリアルな出力
✅ 抽象的・象徴的・詩的なプロンプトにも一貫して対応
✅ 重い後処理を必要とせず、そのまま使える洗練された結果
✅ 正確な描写と表現豊かなストーリーテリングの両方に効果的
⚠️ 生成コストが高く、大量反復には不向き
⚠️ ムードやスタイルを優先するため、厳密な指示からわずかにズレることもある
⚠️ トーンとニュアンスを重視するあまり、オブジェクトレベルの精度が若干低下する場合も
「金色の花びらの嵐の中でバイオリンを演奏する音楽家」のようなコンセプチュアルなプロンプトでImagen 4 Ultraをテストすると、その解釈力の高さが明らかになります。出力は単にバイオリニストと花びらを並べるのではなく、多層的な構図を生成します。動きのある花びら、黄金の色調が生む繊細な反射、そしてドラマティックな照明で演奏者の姿勢をフレーミングします。
この繊細さは、控えめなプロンプトでも発揮されます。「夜明けの静かな通り」と指示すると、Ultraは朝の光のグラデーション、繊細な影の遊び、早朝の静寂を感じさせる質感を生み出します。結果は単なる描写ではなく、画像として表現されたムードです。
Imagen 4 Ultraは完成品を求めるクリエイターに最適です。特に、画像クオリティに妥協できないプロフェッショナルな場面で力を発揮します。
✨ こんな方におすすめ:
生成コストは高めですが、編集や後処理にかかる時間を考慮すれば、Ultraのコストは十分に正当化されます。
プロンプトの解釈力こそが、Imagen 4とImagen 4 Ultraを分ける最も明確なポイントです。
正確性が重要な場面で信頼できるモデルです。テキストに書かれた内容をそのまま反映した出力を生成します。これは技術図面、建築モックアップ、製品イラストなど、説明への忠実性が最優先される場面で不可欠です。
プロンプトを繊細に読み取り、抽象的な言葉、象徴的な表現、多層的なストーリーテリングを理解する能力があります。これにより、アート、写真、エディトリアル作品など、画像の成功がオブジェクトの正確性だけでなく、どう感じるかにかかっている分野で真価を発揮します。
「夕暮れ時の温かい雰囲気」のような抽象的なプロンプトでも、ちゃんと伝わるんですか?
Imagen 4 Ultraは、詩的で抽象的な表現も理解し、ムードや象徴的な意味まで捉えて画像を生成します。「夕暮れの温かい雰囲気」と書けば、単に夕方の風景を描くだけでなく、光のグラデーション、柔らかな影、静寂感といった感情的な要素まで表現してくれます。一方、Imagen 4は具体的な指示の方が得意で、抽象的な表現はやや平坦になりがちです。用途に応じて使い分けるのがポイントです。
Imagen 4とUltraの両方が優れているのが、画像内の読みやすいテキストの生成です。多くのAIモデルが苦戦するこの領域で、両者は店舗の看板、本の表紙、ブランドパッケージなど、一貫性のある読めるテキストを生成します。
テキストが単に存在するだけでなく、画像全体の一部として感じられる必要がある場合は、Ultraがベターな選択です。
コストは「1枚あたりの価格」だけでなく、量と仕上がりのトレードオフとして考えるべきです。
高頻度のテスト向けに最適です。効率的なコストで何十回も反復でき、アイデアを洗練させ、後の段階のためにリソースを温存できます。
最終出力に最適です。1枚あたりの消費は多いものの、編集や後処理にかかる時間を節約できるため、結果的にコスト効率が良いこともあります。
💡 最も効率的なワークフロー:
両方を組み合わせることです。初期ドラフトはImagen 4で効率的に探索し、ビジョンが固まったらImagen 4 Ultraで直接使用可能な最終画像を仕上げる、というのが理想的です。
両方使うとなると、コストが2倍かかってしまいますよね?どうやって使い分ければいいでしょうか?
Imagen 4は1枚あたり約$0.04、Ultraは約$0.06で、Ultraの方が高めの設定ですが、賢い使い方があります。まずImagen 4で複数のアイデアを素早く試し、方向性が固まったらUltraで最終仕上げをするのが効率的です。たとえば、10パターン試すときは安価なImagen 4を使い、その中から1〜2点をUltraで仕上げる。こうすることで、トータルのコストを抑えながら高品質な成果物が得られます。Ultraは編集の手間も減らせるので、時間コストも含めて考えると合理的な選択肢です。
Imagen 4とUltraの登場は、2025年のAI業界の広範なトレンドを反映しています。クリエイターは、ワークフローにシームレスに統合できるツールを求めており、コスト効率とプロフェッショナルなクオリティのバランスを重視しています。Imagen 4は迅速な反復のニーズに応え、Ultraは重要なプロジェクトでの洗練された出力への需要に応えます。
今後、文字通りのモデルと表現的なモデルの境界線はさらに曖昧になるでしょう。しかし現時点では、両方の選択肢があることでクリエイターに柔軟性が生まれています。実用的なドラフトツールと、プレミアムな仕上げツール、その両方を手に入れたのです。
Imagen 4とImagen 4 Ultraは競合ではなく、クリエイターのワークフロー内で補い合うツールです。
Imagen 4で探索と反復を行い、次にUltraに切り替えて最終的な洗練された成果物を作る。こうすることで、効率と芸術性の両方を最大化でき、ツールが単なるプロンプトではなく、その背後にあるクリエイティブビジョンそのものに奉仕するようになります。
Gemini API や Google AI Studio で Imagen 4、Imagen 4 Ultraの画像を作成してみましょう。
Magic Hour共同創業者兼CEO。Y Combinator採択歴を持つ起業家。
AI動画生成プラットフォーム「Magic Hour」の共同創業者兼CEO。Y CombinatorのWinter 2024バッチに採択された実績を持つ起業家である。Meta(旧Facebook)ではデータサイエンティストとして、新規プロダクト開発部門「New Product Experimentation(NPE)」にて0→1のコンシューマー向けソーシャルプロダクトの開発に従事した経験を有する。
この記事は著者の許可を得て公開しています。
元記事:Imagen 4 vs Imagen 4 Ultra: Which AI Model Fits Your Creative Workflow in 2025?
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株式会社Workstyle Evolution代表取締役。YouTubeチャンネル「いけともch(チャンネル)」では、 AIエージェント時代の必須ノウハウ・スキルや、最新AIツールの活用法を独自のビジネス視点から解説し、 チャンネル登録数は18万人超(2025年7月時点)。