Metaが、AI生成動画だけで構成されたまったく新しいフィード「Vibes」の展開を開始しました。2025年9月に米国で開始され、その後欧州にも拡大しています。このフィードでは、ユーザーがAI動画を視聴するだけでなく、リミックス(編集・再利用)したり、Meta全体のプラットフォームでシェアしたりできます。
これは単なる「AIプロンプトを試す場所」から、参加型のビジュアルストーリーテリング・プラットフォームへの大きな転換を意味します。
✅ Vibesが注目される理由
目次

Metaは、誰でも簡単にAI動画を作れるよう、以下の3つの方法を用意しています。
テキストで指示を入力するだけで、Meta独自のAIモデルやパートナー企業(MidjourneyやBlack Forest Labsなど)のモデルを使って、オリジナルの動画を生成できます。
例:
「雨の降るサイバーパンク風の東京。ネオンが水たまりに反射している様子をスローモーションで」
→ 10〜15秒の映像が生成されます。
自分が持っている写真や動画をアップロードし、Vibesのツールでスタイルを変更したり、動きをつけたりできます。
他のユーザーが作成したAI動画をもとに、映像やBGM、アニメーションスタイルを調整して、自分だけのバージョンを再投稿できます。
💡 作成した動画は、Vibesフィード内でシェアしたり、InstagramやFacebookのリールやストーリーズとしてクロス投稿することも可能です。
他のユーザーのAI動画をリミックスするって、著作権的に問題ないんですか?
Vibesでは他のユーザーが作成した動画をリミックスできる仕組みになっていますが、AI生成動画のリミックスに関する著作権や所有権については、Metaはまだ明確な方針を示していません。現時点では、プラットフォーム内での利用規約に基づいた運用となっているため、ビジネス利用を考える場合は権利関係について慎重に確認する必要があります。
Vibesは、Meta AIアプリの機能を進化させた形で登場しました。以前のAI機能では、画像生成やテキスト対話が中心でしたが、今回のVibesは、これを完全に動画に特化させた新しい展開です。
📌 Vibesの特徴
つまり、Vibesは単なる独立したプロダクトではなく、Meta全体のエコシステムをつなぐクリエイティブな橋として機能しています。
Metaは、サービスの展開を加速するために、外部のAIモデル提供企業(MidjourneyやBlack Forest Labsなど)と提携しながら、同時に自社モデルの開発も進めています。
このハイブリッド戦略により、スピード感のあるローンチと、将来的な動画品質・スタイルの自社コントロールの両立を目指しています。
カメラ、俳優、撮影機材が不要。プロンプトを入力するだけで、誰でもショート動画を作成できます。
他のユーザーのコンテンツをフォーク(派生版を作成)して、微調整し、再投稿できます。これにより、協力的な創作やバイラルなリミックスチェーンが生まれやすくなります。
InstagramやFacebookと直結しているため、手動でエクスポートすることなく、数億人規模のオーディエンスに簡単にリーチできます。
動画と一緒に生成プロンプトが表示されることで、AIアートの作られ方が分かりやすくなり、学習コミュニティが育ちます。
利用を続けることで、あなたの好みや視覚スタイルに合わせてフィードが最適化され、視聴行動とクリエイティブなインスピレーションの好循環が生まれます。
初期ユーザーからは「AIスロップ(低品質なAI生成物)」の報告があります。不自然な遷移、奇妙なアニメーション、物理法則を無視した動きなどが見られ、プロフェッショナルな用途には現時点では不向きです。
「AIスロップ」って、そんなに品質が低いんですか?ビジネスでは使えないレベル?
初期ユーザーから「AIスロップ(低品質なAI生成物)」という批判が出ており、不自然な動きや奇妙なアニメーションが見られます。キャラクターが手足を失ったり、奇妙に浮かんだりする不具合も報告されています。現時点では、アイデア出しやプロトタイプ作成には使えますが、本格的なブランディングや広告素材としてそのまま使うのは難しいでしょう。後編集が必要になる場合が多いです。
多くのAI実験がそうであるように、最初の興奮が冷めた後、持続的にオーディエンスを構築できるユースケースが見つからなければ、利用者が離れるリスクがあります。
誰もが同じベース動画を編集していると、フィード全体が単調で飽きられる可能性があります。多様性を維持するには、アルゴリズムによる工夫が必要です。
リミックスされたAI動画の所有権は誰にあるのか、派生作品のライセンスや帰属ルールについて、Metaはまだ明確な方針を示していません。
AIモデルは時に幻覚(ハルシネーション)を起こしたり、歪んだ映像を生成することがあります。これらの欠陥は、ブランド利用や本格的なクリエイティブ採用を妨げる要因となります。
すべてのアルゴリズム・プラットフォームと同様に、「何が表示されるか」「リミックスした人がどう評価されるか」といった公平性の課題が残ります。
完全なアクセスはまだ限定的ですが、初期テスターやジャーナリストは以下のような有望なワークフローを報告しています。
あるユーザーが「深い雪の中を飛び跳ねる山羊」という動画を見つけ、BGMやアニメーション速度を変更して再投稿。インターフェースは直感的で、スムーズに反復作業ができます。
「雨の降るサイバーパンク風の東京、ネオンの反射、スローモーション」と入力すると、10〜15秒のクリップが生成されます。品質はプロンプトの精度によって変わりますが、視覚的に印象的な結果が得られます。
ユーザーがリミックス動画をInstagramにシェアすると、視聴者はそこからMeta AIアプリにアクセスして自分でもリミックスを作れます。このフィードバックループがエンゲージメントを高めます。
SF系のクリップに頻繁に反応していると、次第にその美学のコンテンツが多く表示されるようになり、アルゴリズムの適応が進んでいることが分かります。
総評:
Vibesは実験的ながらも期待できるツールです。クリエイティブな探求には最適ですが、映画レベルの制作にはまだ対応していません。
| ツール/プラットフォーム | 強み・差別化要素 | 課題・弱点 | 最適な用途 |
|---|---|---|---|
| OpenAI Sora | 高精細で映画的なビジュアル、ユーザー自身を動画に登場させる「Cameo」機能 | 招待制で限定的、リミックス機能が限定的 | ストーリーテリングやマーケティング素材 |
| Google Veo | 高速なテキスト→動画生成、Google製品との統合 | ソーシャル機能が弱い、リミックスフローが不十分 | 開発者向けの自動広告・動画生成 |
| Runway / Pika / Synthesia | フルコントロール可能、編集ツールが充実 | コストが高い、単独ツール | プロのエージェンシーやブランドコンテンツ |
| TikTok / Reels / Shorts | 人間らしさ、リーチ力 | 手動制作が必要、生成AI機能が少ない | 従来型の動画クリエイター |
OpenAIの「Sora」やGoogleの「Veo」と比べて、Vibesの強みって何ですか?
Vibesの最大の強みは、InstagramやFacebookと直接統合されており、数億人規模のオーディエンスに簡単にリーチできる点です。SoraやVeoは動画の品質が高い一方で、単独のツールとして提供されています。Vibesは他のユーザーの動画をリミックスできる機能が標準装備されており、ソーシャルな創作体験を重視している点が差別化要素となっています。

Metaがモデルを洗練させるにつれて、視覚的なアーティファクト(不自然な箇所)が減り、アニメーションがより滑らかになるでしょう。生成動画は従来の制作方法との差を縮めつつあります。
クリエイターは、AI映像と実写映像や3Dアセットを組み合わせて、より豊かなストーリーテリングを行うようになるでしょう。
リミックス元のクレジット表記や、派生コンテンツの追跡を行う新しいフレームワークが登場するでしょう。
MetaのAR戦略を考えると、VibesはARディスプレイやスマートグラスに拡張され、生成動画と空間ストーリーテリングが融合する可能性があります。
将来的には、より長い動画、高度なモデル、ブランド提供のプロンプトパックなどの有料機能が登場するかもしれません。これは新たなクリエイター収益の道を開くでしょう。
Metaは、Vibesがリアルコンテンツを圧倒するのではなく、補完する存在であり続けることを保証しなければなりません。バランスの取れたフィードが、長期的な信頼とエンゲージメントの鍵となります。
✅ クリエイターなら
Vibesは完璧ではありませんが、新しい発見に満ちたクリエイティブな遊び場です。
✅ マーケターなら
アイデアをテストするための低コストな実験ハブとして活用できます。
✅ プラットフォーム構築者なら
生成メディアのソーシャルな未来を垣間見ることができます。
| 目的 | Vibesを使うべき? | 備考 |
|---|---|---|
| 迅速なアイデア出し | ✅ | 短いビジュアルドラフトに最適 |
| オーディエンスエンゲージメント | ✅ | リミックスキャンペーンに最適 |
| 高品質なブランディング | ⚠️ | 後編集が必要な場合あり |
| 広告のローテーション | ✅ | クリエイティブフックのテストに有効 |
| 長編ストーリーテリング | ❌ | まだ対応していない |
💡 最後に
少なくともVibesでの1つの実験は、あなたを驚かせるはずです。それがバイラルなリミックスになるにせよ、次の大きなアイデアを生むビジュアルの火花になるにせよ。
Q: Vibesは世界中で利用できますか?
A: Metaは2025年9月に米国で展開を開始し、11月には欧州にも拡大しました。段階的にロールアウトを進めていますが、すべてのユーザーがまだアクセスできるわけではありません。
Q: クリエイターは動画をマネタイズできますか?
A: 現時点ではできません。Metaはまだ派生AI動画のマネタイズや権利について明確な方針を示していません。
Q: AIコンテンツはリアルなクリエイターを置き換えますか?
A: 近い将来にそうなる可能性は低いです。本物のストーリーテリングには、依然として人間の感情と意図が不可欠です。
Q: MetaはAIコンテンツをどのようにモデレートしますか?
A: Metaは透かし(ウォーターマーク)、報告ツール、プロンプトフィルターを導入し、誤用を減らす取り組みを進めています。
Q: Vibesはどのくらいの頻度で進化しますか?
A: Metaは今後もモデル、品質、リミックスツールの継続的なアップデートを計画しています。
Magic Hour共同創業者兼CEO。Y Combinator採択歴を持つ起業家。
AI動画生成プラットフォーム「Magic Hour」の共同創業者兼CEO。Y CombinatorのWinter 2024バッチに採択された実績を持つ起業家である。Meta(旧Facebook)ではデータサイエンティストとして、新規プロダクト開発部門「New Product Experimentation(NPE)」にて0→1のコンシューマー向けソーシャルプロダクトの開発に従事した経験を有する。
この記事は著者の許可を得て公開しています。
元記事:https://magichour.ai/blog/meta-ais-vibes-feed
Workstyle Evolution代表。18万人超YouTuber&著書『ChatGPT最強の仕事術』は4万部突破。
株式会社Workstyle Evolution代表取締役。YouTubeチャンネル「いけともch(チャンネル)」では、 AIエージェント時代の必須ノウハウ・スキルや、最新AIツールの活用法を独自のビジネス視点から解説し、 チャンネル登録数は18万人超(2025年7月時点)。