2025年7月14日にプレビュー公開され、同年11月17日に一般提供が開始されたAmazon Web Services(AWS)の新しいAI搭載IDE(統合開発環境)「Kiro(キロ)」。開発者の働き方を大きく変える、革新的なツールです。
Kiroは、単なるコード補完ツールではありません。「なんとなくのコーディング」から「本番運用可能なコード」への移行を実現する、仕様駆動型の開発環境です。
目次
✅ AI支援ツールで生成したコードの品質に不安を感じている開発者
✅ プロトタイプから本番環境への移行に苦労しているチーム
✅ 企業利用向けのガバナンスとセキュリティが必要なプロジェクト担当者
✅ AWS環境での開発を効率化したいエンジニア
この記事では、AWS公式ドキュメントと発表資料に基づき、Kiroの機能、仕組み、料金体系、そして実践的な活用方法まで、日本の開発者の皆さんに分かりやすく解説します。


これまでのGitHub CopilotやCursorといったAIコーディングアシスタントは、主にコードの自動補完や部分的な生成を得意としていました。しかし、それらのツールには以下のような課題がありました。
Kiroはこの課題解決を支援します。
Kiroの仕様駆動開発は、以下のような段階的なプロセスで進行します。
ステップ1: 自然言語を正式な要件に変換
開発者が「ユーザーがログインできる機能が欲しい」と入力すると、Kiroは自動的にEARS(Easy Approach to Requirements Syntax)形式のユーザーストーリーに変換します。
ステップ2: 技術設計ドキュメントの自動生成
要件に基づいて、以下のような技術仕様を自動作成
ステップ3: 実装タスクへの分解
プロジェクトを実行可能な小さなタスクに分割し、それぞれにテスト戦略、アクセシビリティ基準、ローディング状態の処理方法まで紐付けます。
ステップ4: エージェントフックによる自動化
ファイル変更時に自動でドキュメント更新、セキュリティスキャン、テスト同期などを実行。技術的負債の蓄積を防ぎます。
💡 ポイント: この多層的なアプローチにより、開発者の生産性向上と、企業利用向けのコード品質・ガバナンスの維持を両立できるのです。
「仕様駆動開発」って聞くと難しそうですが、普通のコーディングと何が違うんですか?
従来は「とりあえずコードを書いてみる」というアプローチでしたが、仕様駆動開発では「まず何を作るかを明確に定義してから実装する」という順序になります。Kiroでは自然言語で「ログイン機能が欲しい」と伝えるだけで、要件定義書や設計書を自動生成してくれるので、開発者は難しいことを意識せずに仕様駆動開発のメリットを享受できます。

KiroはVisual Studio Code(VS Code)のオープンソース版であるCode OSSをベースに構築されています。
これにより、以下のメリットがあります
✅ OpenVSXレジストリの拡張機能が利用可能
✅ 使い慣れたテーマや設定をインポート可能
✅ 学習コストを最小限に抑えられる
注意点: KiroはOpenVSXレジストリを使用しているため、VS Code Marketplace専用の一部拡張機能は利用できない場合があります。
Kiroはデフォルトで「Auto」モードを採用しています。これは複数のフロンティアモデル(Claude Sonnet 4.5など)と特化型モデルを組み合わせ、タスクの性質に応じて最適なモデルを自動的に選択するインテリジェントなシステムです。
Autoモードの特徴:
開発者が明示的に選択すれば、以下のモデルを個別に使用することも可能です。
💡 Autoモードを使用することで、開発者はモデル選択を意識することなく、常に最適なパフォーマンスを得られます。
Kiroの大きな技術的差別化要因の一つが、MCPのサポートです。
MCPとは?
AIアシスタントが外部のデータソースやツールに接続できるようにするオープンプロトコルです。
MCPでできること
これにより、Kiroは単なる汎用的なAIツールではなく、あなたの会社やプロジェクト固有のコンテキストを理解できる開発環境へと進化します。

Amazon Q Developerは、AWSが提供する開発者向けの包括的なAIアシスタントプラットフォームです。
主な機能:
重要なポイントとして、Kiroは独立したスタンドアロンのエージェント型IDEとして位置づけられています。Amazon Q Developer ProユーザーもKiroを利用できますが、Kiroは独自の料金体系を持つ別製品です。
これは、Amazonがシンプルなチャットボットやコード補完機能を超えて、自律的で仕様駆動型のソフトウェア開発エージェントへと戦略をシフトしていることを示しています。
💡 KiroはAWSの開発者向けAI戦略における重要な製品であり、今後さらなる機能強化が期待できるということです。

Kiroは、以下の料金プランを提供しています
| プラン | 月額料金 | クレジット数/月 | 主な機能 |
|---|---|---|---|
| Free(無料) | $0 | 50 | 基本的なコード補完、セキュリティスキャン |
| Pro(プロ) | $20 | 1,000 | Kiro IDE、高度なコード生成、優先サポート |
| Pro+(プロプラス) | $40 | 2,000 | Kiro IDE、エンタープライズ機能、より多くのクレジット |
| Power(パワー) | $200 | 10,000 | 大規模チーム向け、無制限に近い利用 |
💡 クレジットとは?
仕様の作成、フックの実行、Kiro内でのAIチャット会話の開始などに消費される利用単位です。シンプルなタスクは1クレジット未満、複雑な仕様タスクは複数クレジットを消費します。
Autoモードの利点: デフォルトのAutoモードは、タスクに応じて最適なモデルを選択するため、Sonnet 4を直接指定するよりもクレジット消費が抑えられる場合があります(約1.3倍の差)。
✅ Freeプラン:まずは試してみたい方、趣味でのプロジェクト
✅ Proプラン:個人開発者や小規模チーム、月1,000クレジットで十分な場合
✅ Pro+プラン:より多くのクレジットが必要な開発者
✅ Powerプラン:大規模チームやエンタープライズ、高頻度の利用
⚠️ 注意: Kiro IDEの本格利用には有料プランが推奨されます。また、有料プランではクレジット上限を超えた場合のオーバージ機能(追加$0.04/credit)も利用可能です。
詳細はKiroの公式サイトをご確認ください。
クレジット制って分かりにくいんですが、Proプランの1,000クレジットで実際どれくらい開発できるんですか?
シンプルな編集やプロンプトなら1クレジット未満、複雑な仕様タスクは1クレジット以上を消費しますす。Autoモードを使えば典型的なリクエストで約0.79クレジット程度と効率的です。記事にもある通り、小規模プロジェクト(1-2人)ならProプランで十分対応でき、個人開発者や2-3人の小規模チームであれば、月1,000クレジットで日常的な開発には問題なく活用できるでしょう。使用状況はKiro IDE内のダッシュボードで5分ごとに更新されるので、常に残高を確認しながら使えます。

Kiroは主要なデスクトップ環境で動作します:
| OS | 対応状況 |
|---|---|
| macOS | Intel & Apple Siliconの両方に対応 |
| Windows | x64アーキテクチャに対応 |
| Linux | Debian/Ubuntu 24+ および Universal パッケージに対応 |
Kiro CLIはmacOSとLinux環境で利用可能です。
エンタープライズ開発で必要とされる主要言語を網羅
主要言語:
システム言語・スクリプト:
設定ファイル:
さらに、VS Codeの設定やOpenVSXレジストリの拡張機能をインポート可能なため、既存の開発環境から比較的スムーズに移行できます。

AWSのリーダーシップは、Kiroについて「開発者がソフトウェアを構築する方法を変革する可能性を秘めている」と述べています。
従来のツールとの違いを比較してみましょう。
従来のAIコーディングツール(GitHub Copilotなど):
Kiro(エージェント型IDE):
✅ 自律的なワークフロー管理
人間の指示を待たず、必要なタスクを自動実行
✅ トレーサビリティの確保
要件→設計→実装の流れを完全に追跡可能
✅ 品質保証の自動化
ドキュメント同期、コンプライアンスチェックをフックで自動実行
✅ 継続的な意図の反映
開発者の意図を理解し続け、単なるコード支援を超えた協働を実現
🎯 結論: Kiroは「AIが使えるコードエディタ」ではなく、「AIが開発プロセス全体を理解し、協働するパートナー」なのです。

エンタープライズでの利用を前提とした、強固なセキュリティ体制を提供します。
| セキュリティ項目 | 対応内容 |
|---|---|
| 暗号化 | AWS KMS(Key Management Service)による保存時の暗号化 |
| アクセス制御 | AWS IAM(Identity and Access Management)による厳格な管理 |
| ガバナンス | ロールベースのユーザー管理、監査ログ |
| プライバシー | 有料プラン(IAM Identity Center経由)ではモデルトレーニングにデータを使用しない |
💡 エンタープライズでの安心ポイント:
これらの機能により、Kiroは厳格な規制要件や運用基準を満たす必要がある大規模組織でも安心して導入できます。

ここからは、Kiroを使った実際の開発の流れを見ていきましょう。
プロジェクトを開始する方法は3つ
kiro .と入力✅ VS Code設定のインポートにも対応しています。ただし、OpenVSXレジストリで利用可能な拡張機能に限られます。
従来の方法: 「ログイン機能を作りたい」→ いきなりコードを書き始める
Kiroでの方法: 「ユーザーがメールアドレスとパスワードでログインできる機能が必要」と自然言語で入力
↓
Kiroが以下を自動生成:
💡 メリット: 後から「あれ、どういう仕様だったっけ?」と悩むことがなくなります!
エージェントフックとは?
イベント駆動型の自動化機能です。特定のイベント(ファイル保存、コミットなど)をトリガーに、自動的にタスクを実行します。
具体的にできること
✅ コード変更時にドキュメントを自動更新
✅ テストコードの自動同期
✅ セキュリティスキャンの自動実行
✅ コーディング規約の自動チェック
🎯 効果: 技術的負債の蓄積を防ぎ、常に整合性の取れたプロジェクト状態を維持できます。
Kiroは.kiro/steering/ディレクトリにMarkdown形式のファイルを保存します。
ステアリングファイルに含まれる情報:
💡 なぜ重要?
このファイルにより、AIは常にプロジェクトの背景を理解し、一貫性のあるコードを生成し続けることができます。
Kiroは生成するコードとセットで、以下も自動作成:
⚠️ 従来のAIツールとの違い: 多くのツールは「コードだけ」を生成しますが、Kiroは仕様→設計→タスクを残しやすく、本番移行を支援します。
エージェントフックって、具体的にどんな場面で役立つんですか?イメージが湧きにくくて…
身近な例で言うと、「コードを変更したらドキュメントの更新を忘れた」という経験はありませんか?エージェントフックはこれを自動化してくれます。例えば、ログイン機能のコードを修正すると、自動的に設計書も更新され、関連するテストも同期されます。人間が「あとでやろう」と思って忘れがちなタスクを、Kiroが自動で実行してくれる仕組みです。特にチーム開発では、この自動化によってドキュメントとコードの不整合を防げるため、プロジェクトの保守性が大きく向上します。

状況:
限られたリソースで、素早く市場検証可能なプロダクトを作りたい。
Kiroの活用:
💡 メリット: 「プロトタイプだからとりあえず動けばいい」から脱却し、最初から保守可能なコードベースを構築できます。
状況:
複数チームで開発しているが、コード品質やドキュメントの一貫性が保てない。
Kiroの活用:
💡 メリット: 人による品質のばらつきを最小化し、企業利用向けのガバナンスを実現できます。
状況:
古いコードベースを新しい技術スタックに移行したい。
Kiroの活用:
💡 メリット: 仕様を正式化することで、暗黙知を明文化し、安全な移行が可能になります。

A: 基本的にスムーズに移行できます! Kiroは以下をサポートしています。
⚠️ 注意: VS Code Marketplace専用の拡張機能は利用できない場合があります。OpenVSXレジストリで利用可能な拡張機能をご確認ください。
A: 使い方によります。
💡 Tip: デフォルトのAutoモードを活用することで、クレジット消費を最適化できます。まずはProプランで始めて、使用状況を見てアップグレードを検討するのがおすすめです。
A: 技術的には可能ですが、Kiroの真価を発揮するには、Kiroを中心とした開発フローに移行することをおすすめします。
⚠️ 理由: Kiroは部分的なコード補完ではなく、プロジェクト全体の統合管理を前提とした設計のため。
A: Claude AIは多言語対応していますが、技術的な精度を求める場合は英語での入力がより確実です。
💡 Tip: 日本語で大まかな要件を伝え、生成された英語の仕様をレビューする、というハイブリッドアプローチも有効です。
AWS Kiroは、単なる「AIが使えるコードエディタ」ではありません。仕様駆動型の自律的なエージェントとして、ソフトウェア開発の在り方そのものを変革しようとしています。
✅ 開発者の生産性向上: 要件定義から実装までを一気通貫でサポート
✅ コード品質の向上: 最初から保守可能で、テストされたコードを生成
✅ エンタープライズ対応: セキュリティとガバナンスを標準装備
✅ AWSエコシステムとの統合: Amazon Q Developerとも連携可能
ステップ1: 無料プランで試してみる
まずはFreeプランで基本機能を体験してみましょう。
ステップ2: 小さなプロジェクトで実践
個人プロジェクトやPoCで、Kiroの仕様駆動開発を体感してください。
ステップ3: チームに展開
効果を実感したら、有料プランにアップグレードしてチーム全体で活用しましょう。
SEOとデータ主導のストーリーテリングに強みを持つ、Futran Solutionsのテクニカルコンテンツスペシャリスト。
Vivek Kumar Upadhyayは、SEO、データドリブンなストーリーテリング、コンテンツ戦略に強みを持つテクニカルコンテンツスペシャリスト兼AI/MLリサーチャー。現在はFutran Solutionsに所属し、テクノロジー、教育、金融、ヘルスケアなど多様な業界向けに、インパクトのあるコンテンツの制作・管理を手がけている。
この記事は著者の許可を得て公開しています。
元記事:AWS Kiro: The Specification-Driven Agentic IDE and Its Strategic Role within Amazon Q Developer
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