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いけとも:Gemini Sparkが日本でも使えるようになりました。Googleの最近ってどうなってるのか、いろんなサービスを様々な形で出してますけど、いい点もあれば苦戦してる点もあるんじゃないかと。最近はAnthropicやOpenAIの話が中心になっていた気がするので、ちょっとGoogleに目を当てて考えたいなと思ってます。
尾原:ぜひぜひ。Googleちょっと久しぶりですよね。新しいモデルがなかなか来ないっていうのはありますけど、Gemini Sparkは日本でも使えるようになったんですよね。反響はどうですか?

いけとも:7月16日にリリースされて、まだGoogle AI Ultra(5x)以上のBeta版しか使えないので、ほとんどの方はまだ触れていない。我々みたいなちょっと一部のユーザー限定になってるところです。
いわゆるデスクトップアプリで動くClaude Code/CoworkやChatGPT Workと違って、Gemini SparkはGoogleクラウド上の専用VMで24時間動き続けるエージェントなんですよ。だからデバイスを閉じていても勝手にタスクが進む。
いけとも:Google系との連携やMCPでの外部ツール操作もできます。ガッツリ長時間かけてやる依頼よりは、ルーティンや定期的に実行するスケジュールタスクを担当する軽量なエージェントかな、というのが個人的な印象です。
スキルも使えるようになりましたし、エージェントの一角として出してますし、進化してるなって感じがしますね。
尾原:そうですよね。僕の場合はメイン環境がそもそもGmailとGoogleカレンダー、あと何気にでかいのがGoogleフォトとYouTube。Google フォトとYouTubeをオンライン上でがっつり連携させた状態で、クラウド上にエージェントが動き続けるっていうのがめちゃめちゃ便利なんですよね、僕の個人環境で言えば。

いけとも:確かに、Googleフォトとかだと定期的に見て、尾原さんが撮られてるいろんな街や取材結果をまとめることになりますよね。
尾原:そうそう。尾原は「メモ魔」なので、あらゆる街とかカンファレンスに行った時に、展示会だとか、街の中にあるちょっとしたポスターだとか、地方都市に行った時に新聞をちょっと見て、みたいにとにかく場所場所で写真を撮るんですよ。
その写真からOCR的にテキストを抜き出し、そのコンテキストの中からバックグラウンドにあるニュースみたいなことを調べて、ポップアップを入れてもらって、Slack MCPから叩いて、Slackの方にノーティフィケーションを飛ばして、みたいなことができるっていう話ですね。
いけとも:確かにそれいいですね。Googleフォト、正直使うイメージはなかったんですけど、今言われて急に思いつきました。確かにありかも。
尾原:そうなんですよ。Googleフォトって多分他の人があんまり使ってないから分かってないんですけど、フォトストレージってリア充の方は思い出いっぱい・笑顔いっぱいの写真じゃないですか。オバラは基本的には写真データベースなので。
写真から起動していろんな情報を収集するみたいなところには実はめちゃめちゃ便利、というのもありますし。ちょっとステップバックして、そもそもGemini Sparkでいうと、Googleの公式ポジショニングとしては“24/7 personal AI agent”っていう言い方をしてるんですよね。
24時間365日ずっとあなたのそばで常時動いてくれる・常時待機してくれるAI、という形なので、PCを立ち上げてる時に依存しないようなエージェントの使い方のコツが分かってくると非常に便利、というのがありますね。

いけとも:確かに、商品を調査したり特定のトピックを追い続けるとか、そういうところですよね、Googleがやろうとしている方向性って。
尾原:そうですね。これ別にClaude Codeもクラウド対応してきたし、そもそも常時待機するものの原型ってOpen Crewなんで。Open Crewの場合、HeartbeatとSoldにどのぐらいのリズムで何をチェックして、その時に何を発動するのかみたいなことを、何分に1回Slackを見て、Slackに投稿があったら反応するみたいな形で、擬似的に定期的なチェックによってリアルタイムに稼働している感じを出す、と。
Gemini Sparkの場合はこの定時のスケジュールにフックするやり方と、朝9時から夕方5時までは1時間に1回このエージェントをチェックしてください、みたいなやり方と、あとClaude CodeやCodexもやれるようになってきた、メールフックですよね。特定のメールが来た時にエージェントをフックさせるみたいなことで動き始めるので、この辺を稼働させると非常に便利です。
いけとも:確かに、定期実行ですね。どういうトリガーで、時間でもいいしメールでもいいんですけど、うまく動かすかっていう設計の練習になりますよね、そういう使い方としては。

尾原:そうですね。その中で特に定期実行と上手く使うと便利なのは、やっぱりカレンダー周りで。本当はカレンダーがアップデートされると自動的にエージェントが実行されるみたいなのが便利なんですけど、それはないので、僕の場合は毎朝……ほら、前日にやっぱり突然カレンダー入れるみたいなことって僕の場合は割とあるので、1日に4回、今日と明日のスケジュールをチェックして、そこにアップデートがあればミーティングの10分前にエージェントを起動する、みたいな「エージェントを起動するためのエージェント」を作ってあるんです。
じゃあ具体的にこのミーティングの10分前に何をやるかっていうと、大概あれなんですよね、直前にスケジュール突っ込むクライアントって、ミーティングの直前のギリギリにミーティングの材料とかをパーッと送ってきたりする。なので、10分前になったらメールを取りに行って、そこからサマライズするだけじゃなくて、メールにある内容を調査して調査レポートを作ったり。
あとGeminiがいいのがYouTubeの字幕を取りに行けるので、URLだけで、そのネタに関して直近YouTubeでどういうふうにそのテーマのことが言われてるかみたいなことをサマライズしたものを、Google Calendarの中にテキストとして入れておくみたいなことをやっておく。そうすると僕は勝手に、20分前にお客様が緊急でやってることとかがカレンダーに全部サマライズして書いてあるから、それを読んでるだけで「尾原さん、さすがに直前までチェックしてくれてるんですね」みたいな感じになれるみたいな。
いけとも:確かにそれいいですね。打ち合わせの前も、正直個人レベルだと自分で決めてるんで、そんなにやってくれなくてもだいたいわかっちゃってて、やる必然性を感じなかったんですけど、確かにYouTube見たりとか、いくつか膨らませるような事前準備をさせておいて、使わなくてもいいし、見れば分かるぐらいの感じでやっとくのは結構いいかもしれないですね。

尾原:そうなんですよね。要は僕らってフリーランスだから基本的に自分のスケジュールって自分でコントロールできるんですけど、どうしてもクライアントワークだとかオバラの場合は「緊急お助けまん」みたいなところがあるので、何か突発的にちょっと相談でみたいな話で入れられた時。
そういうスケジュールが自分でコントロールできないものに対する監視をしていて、監視したイベントが起こったらそれに対しての準備をパパパッとやっておいてくれる、みたいなのが24時間常時待機型のエージェントの便利なところの1つ。
あともう1個は、クラウド型のエージェントのいいところは移動中とかで、ミーティングとか終わったら、僕の場合は特定のサブジェクトを付けて特定のタイトルをつけてメールをすると、そのメールの音声文字起こしをそのまま議事録やToDoにまとめ直して、Google Calendarから参照して直前のミーティングの関係者の方にメールの下書きフォルダーに入って、それをポチッと押せばそのまま送信できます、とか。
そこからエージェントに調査系をお願いして資料の叩き台をまとめてもらうとか、そういう自分のPCじゃなくてスマホでも簡単にエージェントにポイポイ依頼をしておいて、次の何かあった時の準備するみたいなのも、クラウド型の待機型エージェントのいいところですよね。
いけとも:面白い。さっきのGmailのメインのタイトルベースでフィルターして、それがトリガーになって動くと。メインには音声入力でバーッと入れて、ザクでも結構そのままインプットで使ってくれる、と。なるほどね、面白い。確かに。
尾原:そうです。その辺は別に、ぶっちゃけさっき言ったように、今はメールフックでエージェントが動き出すというやり方はどこのAIもできるようになっているんですけど、Gemini Sparkの場合はその辺が設定しやすいので、一つの連携方法として分かりやすいという。
結局、エージェントを何のトリガーで動かすと自分の仕事が動的にどんどん変化する状況でもめちゃめちゃ楽か、みたいなところですよね。

いけとも:確かに、私が聞くまでは正直あんまりスケジュールフックとかでやってること多くはなく、毎日のレポートを作るとかね、当たり前のことは来るほどで作ってたんですけど。もうちょっと常時監視でやる必要性って、言っても一日一回くらいで、そんなにチェックしてもらって定期的にすることってあるのかな、みたいな感じはあったんですけど。今日の話で写真なんかもね、データが見なせた場合に定期的にテキストを確認するとか、カレンダートリガーであったり、移動中のスマホのアプリでもいいと思うんですけど、音声入力かけるメールとか何かをトリガーにしてタイムフリー・場所フリーでやっていくみたいなことの発想で。自分の業務の中にあるいろんなシーンを楽にしたりとか、エージェントなどでできると確かに一歩変わりそうだなって感じがしたので、そこから試してみたいやつがちょっと増えましたね、この会話だけで。
尾原:そうですね。プライベートでも結構使えて、海外のいろんなカンファレンス参加したりって多いじゃないですか。そういう時に、夜中に前日、翌日の天気予報を見に行ったり、フライトの遅延情報を見に行って、雨の場合は明日のプランを、みたいなことを勝手に提案してもらうとか。
まだできないんですけれども、旅行のプランを変えた時に「どうせだったらここを予約します」って言って、海外の場合はOpen Tableっていうレストラン予約サイトの、今はURLまでおすすめでメールしてもらうようにしてるんです。これがAP2(Agent Payments Protocol)っていう決済のプロトコル——Googleが主導してMastercard、PayPal、Coinbaseなど60超のパートナーと組んで、既にFIDO Allianceに寄贈済み——なんですけど、この金額の範囲、この買い物の種類だったら、買い物を自動でやっておいてとか予約を自動でやっておいて、みたいなことができるようになる。まさにコンシェルジュというか執事というか、そのシチュエーションに合わせて自分の予定の先回りをやってくれるみたいなところまでいける、その手前のエージェントは作って遊んだりしてますけどね。
いけとも:確かにいいですね。僕は最近エージェントの動画とか出してる時には、ClaudeもChatGPTもGeminiも全部一緒で、人間の秘書みたいにちゃんとフィードバックループを回していく、いきなり感激悪いんだからどんどん伝えて、伝えたものが次回に反映しましょうねと、ずっと言ってるんですよね。
そういう考えた時に、今のその毎日のコンシェルジュを早めに回しておいて。最初は多分いまいちなこと言ってくると思うんですよ、このまとめ方じゃないなとか、その提案意味ないとか、さっきの天気調べておいてよとか、いろいろ思うことあると思うんですけど、全部伝えてまとめさせると、何ヶ月か後にはだいぶ気の利いた「そうそう、それやっといて欲しかった」っていうアクションを自動的にやるぐらいには育てることができるかなと思い、その早くやった方がいいですね、そういう風に前提として。
尾原:そうなんですよね。オバラとか人垂らしが仕事なので、主要な友達に関しての料理の好みとか、あと何はNGみたいなことを全部メモってあるので、それをカレンダーから「誰と誰と食べに行くんですか?」というところから、じゃあこの料理がいいんじゃないですかみたいなリコメンドしてもらったりとか。
ぶっちゃけ、まだ性能が良くないので結局レストランに関して自分が選ぶんですけど、将来的にはそういう自分の大事な人の趣味・思考・テイストみたいなものもきちんと残していくと、それに基づいたパーソナルコンシェルジュみたいな風になって。
いけとも:確かに、早くあれですよね。この初期今一だから使わないって発想じゃなくて、どうせそれができるようになるし、価値が出る時にはデータがないと使えないわけだから、今一のことを言語化してためとくスキームにしてバンバン回した方がいいんですよね。めっちゃいいかもそれ。
尾原:そうですね。特に僕がずっと言ってるのは、もう5年前から言ってるんですけどAIが進化することを信じてGoogleフォトにいろんなデータを写真でバンバン上げていくってことを言っていて、特に写真の中のテキスト認識だけじゃなくて形とかで認識してくれますから。例えばある郵便ポストみたいなものを各国でどういうふうに今なくなってきてるか変わってるか、みたいな画像の種類ですよね、そういうものも見てくれるので。「オバラの写真で郵便ポスト」ってやると勝手に画像認識で各国の郵便ポストがバーって出たり。
あとでAIが進化してくれるから、究極でいうとタグを振ってくれることも後で振り直してくれるから、ローデータをいかに貯めておくか。ローデータって別に音声入力でテキストデータだけ貯めておけばいい話なので、そういう意味ではやっぱりカレンダーって最強のリレーショナルデータベースなのかな、って個人的には思いますよね。
いけとも:面白い。話しながら先設定したんですけど、食事行った時にワインとかラベルを撮ったんですけど、全く参照もしてなかったんです。
これをね、貯めていきながらGemini Sparkで自動的にデータベース化していき、たまに先週やったやつとか、あと過去に貯めたデータベースから類似っぽいのがあったら「あの時のこれに近いよ」とか言わせると、ダメな俺でも一定程度の学習が可能と気づきまして、今セットしました。ちょっとこれを回してから言いますか。これめっちゃいいなと思い。
尾原:確かに、僕も今あんまりワインのラベル写真撮る方じゃないんですけど、Googleフォトに「ワインラベル」っていう風に入れたら2018年からいくつかポポっと出てくるので、画像の形態認識ですね、精度が上がってるから確かにそれめっちゃありですね。

いけとも:面白い、面白い。ここまでそんな形でGeminiも進化しており、特にGemini Sparkは、あるいはブラウザに特化したことによってちょっといろんなユースケースを拡大しそうな感じもするんですけど。他方ね、例えばGemini 3.5 Proは5月19日に3.5 Flashが先行公開されたのに対して、Proは全面再設計で7月17日目標に延期、といった状況であったり、結構重要な人材がバンバン流出してるよねみたいな形で、結構苦戦をしているという状況もあったりするわけなんです。Google I/Oの時には全方位的に攻めてて「やっぱGoogleいいよね」ということからの、ちょっと今難しいところもケースバイケースであるよね、みたいなことかなと思うんですけど、この辺って尾原さん的にはどんな風に見られてますか?
尾原:マクロの環境でいうと、Anthropicが6月1日にS-1をSECに秘密提出して、10月上場観測に入っていますよね。ARR約470億ドル、評価965億ドル。てことは、一番最後の高額オプションの引き抜きのタイミングなんですよね。株が上場すると一気に株の価値が上がりやすい。
いけとも:ストックオプションとか使う形ですかね。
尾原:少なくとも、上場したタイミングで買った人というよりかは、上場に付くプライシングに対して、今の株価のバリューでいうと、上がるケースが多いので、そこを魅力に感じてやるみたいな話だったり。実際、Anthropicは50〜60億ドル規模のtender offer(3500億ドル評価)で従業員に株を現金化させながら、ノーベル賞のJumper、OpenAI共同創業者、MSのAI社長、xAI共同創業者、DeepMind研究者6名超を引き抜いている。どうしても上場してしまうといろんなバランスが出てしまうので、重要なポジションを本気で任せるよ、なくどきどきだったりするので、そこで人間が動くっていうのはパターンなんで、それはそれだなっていう話もあります。
ただどっちかっていうと、あんまりGoogle出身の僕が言うのはあれなんですけれども、あくまで噂ベースですけど、ちょっと組織的になんかガタついてんのかなみたいな話もいくつか聞こえてくるので、ちょっと心配ですよね、新しいモデルに関して。
いけとも:ガタつきっていうのはあれですか、その重要な人物が抜けるとかってニュースベースであるかなと思うんですけど、それ以外も含めてって感じなんですかね?
尾原:要は単純に言ってしまうと、ここまで来ると要はFableとか5.6とか、少なくともKimiのK3を超える性能でサプライズがないと、新しいモデル出しにくいんじゃないですかっていう状況の中で、そういうサプライズを含めた性能まで上がっているのかっていう話ですよね。
いけとも:確かに、上がってないから出さないんですね、残念ながら。
尾原:あとこれは半年ぐらい前に予言してた話なんですけれども、Geminiが先行的に機能が上がったっていうのは、やっぱり自分たちでTPUを持っていてハードウェア環境として安定したプレトレーニング学習環境があったから、っていうのが大きかったのに対して。そう単純ではない部分もあって、実はAnthropicはTPUを100万個、5GW契約で拡大していて、TPUのMFU(実効利用率)はBlackwellより高く、実効PFLOP単価で約40%安いという現状もある。
他方でOpenAIは、2026年6月24日にBroadcomと共同で「Jalapeño」という独自の推論チップを発表——9ヶ月でテープアウトという史上最速級のスピードで、2026年末デプロイ予定。そういう意味では、組織的な話・人的な話以外に、単純にハードウェア性能から見た時にライバルが追いつきやすいフェーズに入っているという話です。
だからGoogleも、競合に追いつくのは時間の問題で、前みたいに「レッドシグナルで俺らだけは超えられない」っていう話ではないと思いますけどね。

いけとも:なるほどね。後ろ調べて気になったのが、直近の6月に、「Transformer論文の中心人物 Noam ShazeerがGoogleからOpenAIに移籍」——Googleは2年前に2.7億ドル(約400億円)で呼び戻したばかりだったのに——というニュースがあり、その翌日6月19日には「ノーベル賞(2024年化学賞)を受賞したAlphaFoldのリード John JumperがDeepMindからAnthropicへ移籍」と、同じ週に二大移籍が重なって「2026年最大級のAI人材移動」として報道された。
Googleとしては「いや、その研究基盤が熱いんで、何人か抜けてるけど大丈夫だよ」みたいなことを言ってはいるんだが、一方そのトップ研究者の価値っていうのがモデル開発においてどのぐらい重要度が高いのか、と。一人二人抜けることっていうのは別にそんなに影響ないのか、かなり厳しい状況なのかみたいなことをAIに問うたところ、これAIに問うたら分かんないですよ、知らない領域なんで、その方向性さえ決まればまたオペレーションなんで、こっちは何百人にするやといえばそんなに影響ないでしょうと。
大きな設計とかやっぱりこのトップが決めてて世界に何十人しかいないと思う、この何十人の何人かが抜けている可能性があり、今回のやつで。そうすると実際レベルが高い本当の最新モデル作ろうと思った時に、何人か抜けている人材体制ところがすごく大きく影響している可能性もないこともないようで、みたいな。
形でハードウェアの性能とかもあると思いますし、例えばそのエースが抜けることの、レベルが高いモデル作ることへのインパクトっていうのはかなり高かったりすることもあったりするのかしらと思いながらですね、この人材リソースの部分というのは結構重要事件なのかもしれないなと思って見てたんですけど、このインパクト度合い、尾原さん的にはどうですか?
尾原:やっぱりでかいですよ。もちろん、そもそもさっき言ったトランスフォーマーっていうものが、LLM(言語型大規模モデル)の今でも根本の中心の機構になっていて、そもそもGPT、ChatGPTのGPTってGenerative Pre-trained Transformerの略なので、そのトランスフォーマーを使ってめちゃくちゃ大規模に事前学習をした生成モデルですっていう意味っていうぐらいの根幹な思想で。
もちろん今、データを大規模に学習するっていういわゆるスケール則って呼ばれるものだったり、その後にむしろリーズニングとしてポストトレーニング、後でその推論の部分を強化していくっていうところが強いというもの。例えばコーディングのレベルだけで言えば、Kimi K3が「Frontend Code Arena」でClaude Fable 5を抜いてダントツで1位を獲得——ただし全体の Artificial Analysis leaderboard ではGPT-5、Fable 5に次ぐ3位——といった論文レベルで見た基礎のモデルのところでいくつかの飛躍があるんですよね。
トランスフォーマーの根本の部分のアテンションの計算のところがどんどん大規模になっていくと、計算がより複雑になって重たくなるんですよ。そういうものをどうやって省略していくかっていうアテンションの取り方だったりKVキャッシュの取り方だったりっていうところで、キミのK3っていくつかやっぱり「なるほどね、そのやり方確かに今のGPUの速度とかメモリバスの使い方したら、確かにそっちで基礎計算しなくした方は全体のコンテキストを保存させててよ」みたいなことがやっぱり今のあるんですよ。
いけとも:Kimi Delta Attentionとかそこら辺の進化ですかね?いくつか書いてあったやつ。
尾原:そうですね、正確に言うとKimi Delta Attention(KDA)+ Attention Residuals(AttnRes)+ Stable LatentMoE の3本柱で、コンテキストを回すときに全文のコンテキストをやるのではなくて、そこもアテンションというトランスフォーマーの根源の計算方法を使って、重要なコンテキストだけがきちんと次の言語ワード予測に回るようにするみたいなことをやってたり。

尾原:その辺は高度な数学的な知識と、かつハードウェアの進化がそれにフィットしているかという見立て。あと3番目にモデルサイズそのものが大きくなって、特に最近で言うとMixture of Expert(MoE)と言って、キミだと2.8兆パラメーター、世界初の3兆パラ級オープンウェイトモデルまで来ちゃってるんですけど。
いわゆるGPTがその上がった時に「1兆パラメーターすげー」って言ってたのが、もうキミだと2.8兆ってもう3倍になってるわけなんですけれども、まぁ言うたって2.8兆パラメーター全部使ってるわけじゃなくて。約900個(実際は896個)の細かい小型モデルに、16個を活性化する設計。
尾原:かなりでかい専門特化したエキスパートとしての小さいモデルを切り分けてきたプロンプトに従って、「896個あるうちの、このエキスパートとこのエキスパートとこのエキスパート、16人チームで答えを出しましょう」みたいなことをセレクトする、という設計。K2比で約2.5倍のスケーリング効率、というレベルの飛躍がある。
そういう根幹的なモデル設計というところでのまだまだやっぱり飛躍があるし。あとこれは論点なんですけど、そもそもトランスフォーマーで本当にいいんだっけっていう話、特にワールドモデル、物理AIとかになってくると一次元のベクトルじゃなくてステートを扱っていきましょうみたいな話だったりっていう、やっぱり根源的な飛躍がまだまだあるので。
そういう意味でその辺の高度な人材、かつこういった技術発展の形符を全部実際ハードで動かしてみた時にどうなのかという実感含めて持っている人ですよね。そこの価値はベラボーに高いですね、すいませんちょっと。
いけとも:何人かの研究者が出るだけでも何十億とかついてますよね。何十億ドルとかついてますよね、そういう世界観ですよね。
尾原:いやーもう。まだまだ非連続の進化はあるですよ。

いけとも:なるほどね。そんな中でちょっとそういう上級人材が外に出てしまっているGoogleなんだけれども、まだまだ残ってるとは思うんですけどね。何人中何人かと書いてなかったんで、もうすごい人がたくさん残ってると思うんですけど、ちょっとそういうのもあって、苦戦したりちょっと上手くいかない方向性づけられないみたいなこともあんのかなってちょっと見ながら思ってましたね。
尾原:そうですね。だからさっき言ったように、ハードウェアレベルで考えた時にライバル、一旦Googleが先行したものがライバルが追いついて追い越したっていうフェーズであって、これが3ヶ月単位で見た時に考えれば必ず追いついてくるレベルだとは思うんですけれども、ちょっと人の流れとかこの後の非連続進化みたいなところで見た時に、ずっとフロンティアモデルが進化するとGoogleがめちゃくちゃリードするわけじゃないってことですね。
ただ大事なことは、Gemini SparkでいうとほとんどがもうGemini 3.5 Flash + Antigravity 2.0で動いてるわけじゃないですか。だから日常の作業をエージェントとしてやる分に関しては、そんな最先端のフロンティアモデルでやる必要性なくて。最先端のフロンティアモデルって日々の経営レベルの思考だったり開発を除けば、そこまでフロンティアモデルって本当にいるんですか?って話がある。
どっちかっていうと、これからのフロンティアモデルが本当に重要になってくるのは科学の研究だったり、本当にものすごい大規模なコードの開発だったりっていうエキセントリックなところに行くので、どっちかっていうとキミだったり日常でやるレベルの仕事がどのぐらいトークンコストが安くリーズナブルに使えるのかっていうところの二極化の方が大事だと思いますけどね。
いけとも:確かに、確かに関連でOpenRouterっていうそのいろんなモデルを切り替えることができるサービスがあるんですけど、あれがなんかずっとシェア出してて「どのモデル使われてますか?」みたいな。この1年で、米系モデルのシェアが70%→30%へ半減し、中国系が46〜60%まで伸びたんですよ。一番使われてるのはDeepSeek V4-Flashで、単独週17.6%シェア(Google 12.5%+OpenAI 8.4%の合計を超える)、上位10モデルに中国系3モデルが入っている。
尾原:普通にやっぱコストバランスで言うといいですよ。
いけとも:DeepSeek V4-FlashはGPT-5.5と比べたら50倍安く、結構性能が高いっていうことで、DeepSeekが1位でClaudeがちょっと低めになってて、そっちが今あれなんだなっていうのは意外でしたね。
尾原:そうですね。さっき言ったように、別にそこまで複雑なものをしないのであれば、トークンコストが安い方がいいし。あとは中国系のAIといっても、中国にサーバーを置かず、オープンウェイトとして出してくれたものが他のサーバーで動かすというものであれば、それで割り切ってやりましょうっていう。
もちろんそのオープンウェイトの中に実はトラップが入ってる懸念はあるものの、まあそういったものもコードで生成されたものとかのちゃんとレビューをしておけばいいみたいな話だったり、そのオープンウェイトで動かしているものがなんか変なパケットを変なところに飛ばしてるのかみたいなことをちゃんと監視してればいいっていうレベルの話なので、実用性重視で言うとやっぱり中国の方がすごいです。

尾原:今回7月17〜20日に上海でWAIC 2026が開催されたんですけど、Kimi K3もその開幕直前の7月16日に発表された。大きい話が、習近平主席が「WAICO(世界AI協力機構、29カ国が創設協定署名)」を発表して、Global Southへのデジタルインフラ・コンピューティング支援、5年で5,000名のAI研修プログラムを打ち出した。
だから中国としてはそのAIのインフラを、これから伸びる国にもう使わせてあげるよ、安く使わせてあげるよという国際演示をしていきますよ、みたいなことを強調してたりするんですね。
AIというものは最先端のモデル開発というよりは、もう今ホルムズ海峡が物流で大変だって言ってるのと同じような、海外メディアや研究者からしてみると「AI版一帯一路(Digital Silk Road)」——中国政府自身が命名したわけではないけれど——という位置づけですよね。
情報の流れを国際的に中国が支援していくことによって、ここでみんながアメリカではないAIで依存していく世界みたいなことを、明らかに国家として方向性を示していってるので。
いけとも:なるほどね。

尾原:あんまり最先端モデルを追うというよりかも、マクロとしてどういうふうに国の駆け引きがされているのかみたいなことを見にいったほうがいいと思いますし。今日は時間が長いからあんまり話さないんですけど、アメリカはアメリカで、バーニー・サンダース上院議員が2026年6月に「American AI Sovereign Wealth Fund Act」を提出——AI企業株式に一度限りの50%課税をかけて政府ファンドに株を集約、7兆ドル規模のファンドから年5%配当で全米民に約1,045ドル配布するという、まさにベーシックインカム的提案。
そこを察知してサム・アルトマンが2026年7月2日にトランプ政権に「OpenAIの5%株式(約426億ドル相当、852億ドル評価ベース)を米国政府ソブリンウェルスファンドに提供する」と提案、Anthropic・Google・Meta・xAIにも同様の5%拠出を呼びかけている。
その辺の大きな力学の知性学みたいなところに、この上場手前でもうAIが明らかに他国をサイバーハックしたり将来的にはバイオ兵器を作ってしまうリスクみたいな中で、もう明らかに国の産業とか人を置き換えるっていう意味で、AIのインフラを輸出する=人を輸出、労働力を輸出することに他ならなくなってくるので、そういう観点の地政学を見ていった方がいいのかなというのがオバラの観点ではありますけどね。
Gemini SparkはGoogleクラウド上の専用VMで24時間動き続けるエージェントで、デバイスを閉じてもタスクが継続します。Claude Code/CoworkやChatGPT Workはデスクトップアプリで動くため、PC起動が前提です。Sparkは軽量な定期タスク(スケジュール実行、メールフック)が得意で、Google Photos/YouTube/CalendarとのネイティブB連携が最大の強みです。
3つの理由があります。1つ目は、Gemini 3.5 Proの延期(5月19日にFlashが先行、Proは7月17日目標に延期)。2つ目は、Transformer論文中心人物Noam Shazeer(OpenAIへ)、ノーベル賞受賞のJohn Jumper(Anthropicへ)といった数十人規模のトップ研究者流出。3つ目は、TPUの独自ハードウェア優位が消えつつあること(AnthropicがTPU 100万個・5GW契約で拡大、OpenAIが独自ASIC「Jalapeño」を発表)。
Mixture of Experts(MoE)アーキテクチャの一種で、Kimi K3は2.8兆パラメータのモデル全体ではなく、896個の専門特化エキスパートから16個を選択して答えを出す設計です。プロンプトの内容に応じて最適な16人チームがセレクトされるため、フルモデルを毎回動かすより計算効率が約2.5倍高い(K2比)。Frontend Code ArenaでClaude Fable 5を抜いて1位を獲得しています。
Podcast『いけとも尾原DeepなAIニュース』:https://open.spotify.com/episode/6G7lZ9RuSqzwoM3qPwF5kO
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