「AIで作業時間が30%減ったなら、料金も30%安くできますよね?」
もし顧客からそう言われたら、あなたの会社は何と答えるでしょうか。これはすでに、海外のITサービス市場で現実の交渉になっています。
AIが変えているのは、仕事の進め方だけではありません。仕事の値段そのものが、人の数や作業時間ではなく、顧客に生まれた成果で決まる方向へ動き始めています。
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Reutersの報道によると、インドのITサービス企業Persistent Systemsでは、顧客から「同じ仕事を25〜30%安くしてほしい」と求められています。しかも、価格を下げるだけでなく、納期の短縮と生産性の向上も同時に要求されています。
ここで注意したいのは、この数字がインドIT業界全体の平均値ではないことです。Persistent SystemsのCEOが、自社の顧客から受けている要求として説明したものです。
ただし、契約の基準が変わりつつあることは、ほかの事例からも見えます。
TCSでは、金融・人事などを含むビジネスサービス領域の契約の約80%が、作業時間ではなく成果指標(outcome performance measures)に基づく方式になったとCEOが説明しています。これはTCS全社の80%ではありません。
Reutersはさらに、HCLTechとドイツの電力会社E.ONが結んだ複数年のクラウド管理契約について、初年度はHCLTechへの支払いがなく、2年目以降は効率化や事業成果に応じて報酬が決まる設計だと報じました。ただし、支払条件は契約を知る関係者2人への取材に基づくもので、両社が公式に確認したものではありません。
それでも、大きな方向は明確です。「何人を何時間出したか」ではなく、「何を改善したか」へ。仕事の値段を決める物差しが変わり始めています。

人月契約とは、1人が1カ月働く量を基準に料金を決める方式です。10人で1カ月かかる仕事なら10人月、5人で2カ月かかっても10人月です。
この仕組みでは、投入する人数や期間が増えるほど、受託会社の売上も増えます。
ところが、AIによって10人月の仕事が7人月で終わるようになると、同じ人月単価では売上が30%減ります。つまり、効率化した会社ほど売上が減るという逆転現象が起きます。
だからといって、AIを使わなければよいわけでもありません。競合がAIを使って同じ仕事を安く、速く提供すれば、案件そのものを失います。
これは受託会社にとって厳しい二重苦です。
AI活用は、利益を増やすための特別な武器から、市場に残るための参加条件へ変わっていきます。
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では、人月の代わりに何へ課金するのでしょうか。現実的には、次の3つが考えられます。
1つ目は、成果達成型です。「問い合わせ対応時間を半分にする」「一定の品質で月1万件を処理する」など、決めた結果に対して定額を払います。
2つ目は、削減額分配型です。年間1億円かかっていた業務を7,000万円に減らせた場合、削減した3,000万円の一部を受託会社が受け取ります。CognizantとDaimler TruckのAI・自動化契約も、Reutersが取材した関係者によれば、AIによる削減額を両社で分ける設計でした。ただし、この分配条件は両社が公式に確認したものではありません。
3つ目は、固定報酬と成果報酬を組み合わせる方式です。調査・設計・研修・システム構築にかかる最低限の費用は固定で受け取り、成果が出た場合に追加報酬を受け取ります。
多くの会社にとって、最も現実的なのは3つ目でしょう。完全成果報酬では受託側の負担が大きすぎます。一方、完全固定報酬では、AIで生まれた価値を受託側が取り込めません。
基本料+成功報酬にすれば、両社でリスクと成果を分けられます。

成果報酬には、大きく稼げる可能性があります。想定より少ない人数で大きな改善を出せれば、人月契約より利益率を高められるからです。
ただし、成果が出なければ受託側が赤字を負います。
Tech MahindraのCEOは、競合の過度な価格設定について2つの例を挙げています。1つは、5〜7年の契約に70〜80%もの生産性向上を織り込むこと。もう1つは、メモリーや半導体の価格が上昇するなかで、3〜5年間の価格を固定することです。
同社は、どちらのリスクからも距離を置いたと説明しています。
Infosysも決算説明会で、採算が合わない案件は一定段階から追わないと説明しています。なお、そこで挙げられた欧州製造業の案件については、AIとは無関係だと明言されています。直接のAI事例ではありませんが、受託会社が無理な条件を引き受けない重要性を示しています。
成果報酬を成立させるには、少なくとも4つを契約前に決める必要があります。
特に危険なのは、「削減時間=削減金額」と単純に考えることです。月200時間を削減できても、空いた時間が別の価値ある仕事に使われなければ、会社の現金支出は減っていません。
成果を測るなら、作業時間だけでなく、処理件数、ミス率、残業代、外注費、売上や粗利益まで追う必要があります。効果測定そのものがサービスになります。
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だからといって、明日からすべてを完全成果報酬に変える必要はありません。いきなり報酬の全額を成果に連動させるのは危険です。
最初にやるべきことは、既存の固定報酬契約に成果指標を加えることです。
例えば、プロジェクト開始前に「現在の作業時間」「AI利用率」「処理件数」「ミス率」を測ります。そして3カ月後に同じ指標を測り、どこまで変化したかを記録します。
このデータが蓄積されると、「この種類の業務なら、どの程度の改善が期待できるか」を予測しやすくなります。将来、成果報酬を設計するための基礎データにもなります。
人月契約を一気に捨てるのではなく、まずは工数と成果の両方を測る。その上で、成果を予測しやすい業務から、固定報酬と成功報酬を組み合わせていくのが現実的です。

調査や経営相談、新しい事業の設計など、成果を簡単に数値化できない仕事は残ります。そのため、人月や固定報酬が完全になくなるわけではありません。
ただし、AIによって短縮しやすい定型業務では、「何時間働いたか」だけで価格を正当化することは難しくなります。
これから受託会社が売るのは、人の時間ではありません。顧客が今いる場所から、どこまで前進したかです。
人を貸す会社から、改善を共同運営する会社へ。AIによる効率化は、単なる値下げ圧力であると同時に、新しい収益モデルを作る機会でもあります。
すべてがなくなるわけではありません。調査・経営相談・新規事業の設計など、成果を数値化しにくい仕事では人月や固定報酬が残ります。
ただし、AIで短縮しやすい定型業務では、「何時間働いたか」だけで価格を説明することが難しくなります。まずはこの領域から、成果を基準にした料金へ移っていきます。
契約前に4点を決めておくことです。何を成果と定義するか、導入前の基準値をどう測るか、顧客側が提供するデータや協力は何か、市況や組織変更などの外部要因をどう扱うか。
Tech MahindraのCEOは、5〜7年契約に70〜80%の生産性向上を織り込む価格設定や、3〜5年間の価格固定を過度なリスクとして挙げています。無理な条件は引き受けないという判断も、契約設計の一部です。
できません。月200時間を削減できても、空いた時間が別の価値ある仕事に使われなければ、会社の現金支出は減っていないからです。
成果を測るなら、作業時間に加えて、処理件数、ミス率、残業代、外注費、売上や粗利益まで追う必要があります。効果測定そのものがサービスの一部になります。
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