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いけとも:今日のテーマは「Agent2Agentはこれからどうなるのか」です。
Googleが決めた、エージェント同士がやりとりするためのプロトコルがあります。Agent2Agent、略してA2Aです。
先日Googleが金融機関向けと法務向けのパッケージを出したときに、A2Aにも対応すると入っていました。日本ではまだ対応しているサービスを聞かないので、少し先駆けて議論できればと思っています。
尾原:ちょうどいいんじゃないですか。そろそろGoogleがアクセルを踏み出した感じがありますし。
いけとも:ニュース自体は8月25日に出たGemini Enterprise for Financial Servicesと、同時に発表された for Legal です。
金融側は50以上の専門スキルと、FactSetやS&P Globalなど13社のデータコネクターを備えています。設計にはCME Groupとドイツ銀行が入っています。
これを見たとき、正直に言うとだいぶ後追いだなと思ったんです。Claudeは金融向けを1年前に、法務向けを今年の5月に出しています。

いけとも:ただ、ニュースを読んでいったら、Googleはそこにもう一つ足していました。
スキルやコネクターを使って自分のエージェントを賢くするだけではなく、そのエージェントを外から呼べるようにA2Aで開いていたんです。
MCPやスキルは、自分のエージェントができることを広げる仕組みです。この場合、結局は自分のエージェントを動かさなくてはいけません。
そうではなく、一つのリサーチや仕事を外に投げる、あるいは請け負う。そこまで仕組みとして出していたので、ここは一歩抜けているなと思いました。
尾原:日本でも、いわゆるチャットAIで壁打ちをするCopilotとして一部を任せる段階から、エージェントがオートパイロットとして動く段階に来ています。
そうすると今度は、一つの仕事をエージェントが完了までできるようになる。そうなれば、エージェントがエージェントを呼び出すA2Aの世界がここからグッと来るはずなので、そろそろ議論してもいいんじゃないかなと思います。
いけとも:確かに。一つのエージェントができる幅が「仕事まるっと」になったからこそ、それら同士が会話して群として働いたり、責任範囲を分けて設計できたりするわけですよね。

尾原:企画そのものは前からありました。
まずMCPです。外部のツールを、まるでUSB-Cでパソコンにつなぐようにメーカーを気にせず接続できるようにしましょう、という標準化をAnthropicが進めて、共通団体に投げました。
その約半年後にA2Aが発表されます。SalesforceやSAP、LangChainなど50社超が乗るという話をしていて、いまはLinux Foundationに移っています。
そのあとにエージェントスキルという形で、AIにある一定の仕事の枠組みをパターン化していきましょう、というのが出てきました。これも同じくAnthropic発で、オープンな標準として公開されています。
いけとも:はい。
尾原:外部ツール連携も、一つの仕事もAIのモデルに関係なくスキルとしてパッケージにできるなら、それをエージェント同士でやりとりできるようになりますよね、という話です。
それがいよいよ、パッケージやマーケットプレイスという形で推し進められ始めている。
いけとも:A2Aは技術としては出ていたんですけど、サービスとして目立ってきたのは今回が初めてだったので、そろそろ本格的に来るのかなと思いました。

尾原:これは僕もウォッチしていなくて、いけともさんのニュースで初めて知ったんですが、Google Cloudはもうエージェントのマーケットプレイスを始めていたんですね。
いけとも:そうなんですよ。審査を通ったエージェントが数千という規模で並んでいて、実際に見てみたらAdobeもありました。
ただ、書いてあるだけで中身は非公開、「問い合わせ」とだけ書いてあるものもあるので、どれくらいワークしているかは謎だなという感じではあるんですけど。
尾原:実態はどこまで動いているか分かりませんが、エージェントがエージェントを呼び出すためのマーケットプレイスは用意されている。
しかも調べたら、決済手数料をGoogleは3%しか取らないんですよ。非常に良心的です。月額のものもあれば、成果報酬のものもあれば、従量課金のものもある。
A2Aで呼ぶものはGoogle Cloud上で動かす必要がありますが、SaaSの形なら他のインフラでも構わない。かなり柔軟に、エージェントがエージェントを呼び出せる環境を作っていますよね。

いけとも:どんなメリットがあるのかというと、依頼する側と受ける側の両方にあると思っています。
依頼する側はシンプルです。これまではMCPやスキルがあっても、自分たちのエージェントに備え付けたうえで、稼働は全部自分たちでやるわけですよね。
スキルが決まっていても、間違っていたら自分の責任です。コネクターを使っても、受け取った後の処理は自分でやる。稼働時間もコストもミスも、全部こちら持ちでした。
それを一定切り離して、外にまるっと発注する。仕事の責任ごと外に出せるわけです。
尾原:おっしゃる通り。
いけとも:一方で、受ける側にもメリットがあります。
これまでMCPで公開してしまうと、データを丸ごと渡して「勝手に使ってね」となるので、付加価値が出にくかったんです。
エージェント同士で受託する形なら、成果物だけを返せばいい。中のデータを見せずに済むわけですよね。
たとえばSalesforceで考えます。うちがSalesforceのMCPを使うとして、自分たちのデータは使いたい。でも「同業界の会社と比べて利益率はどうか」「売上成長率はどうか」は、MCPでは教えてくれません。
そこでSalesforceがエージェントを作って、社内のデータで計算して、詳細は言わずにランキングの結果だけ返す。そういうことができます。
自分たちのデータやノウハウを全部は開示せずに、結果だけ返して受注できる。うまくいけば双方にメリットが出る仕組みだなと思いました。

尾原:僕も実際にやっています。ChatGPTのCodexにもエージェント用のSDKがあって、ほぼ同じことができるんですよ。
オンライン広告系と、お客様のセールスマネジメント系。それぞれをA2Aで置いて、交渉させるという仮想環境をクライアントのところで作っていたりします。
いけとも:なるほどですね。
尾原:やってみて分かるのは、全部のコンテキストを共有しないことの価値です。それぞれのエージェントが独自のメモリを作り、自己改善もしていく。
会社で言えば、営業部とマーケティング部がそれぞれ大きくなったら、それぞれで自己改善しながらやっていきますよね。あのアナロジーが分かりやすいと思います。複雑になるほどワークします。
いけとも:今はサブエージェントというと、自分のチームの中にメインのエージェントがいて、そこから仕事を切り出しています。
その切り出し先が、もっと外にいる専門のエージェントになる。メインのAIが自分では作れないレベルの難しい仕事を、Googleのプラットフォームにいるエージェントに頼んで、結果が返ってきたら後は自分でやる。
相談する先、使う先がどんどん広がっていくということですよね。
尾原:たとえば本を作るとき、イラストはデザイン事務所にお願いしますよね。組版はプロに外注して、結果が返ってくる。あれと同じ形式ができるようになります。
だったら僕らは、本に載せるイラストに特化したエージェントをゴリゴリやっていけば、そこで仕事を受注できるようになる。
エージェントの仕事は、何かを最後までやりきることです。だからツール的なAPI料金ではなく、仕事の完了に対して対価をもらう形に変わっていく。いまアメリカのAIスタートアップは、そういう方向に変わり始めていると感じています。
外注会社同士のやりとりのようなものが、A2Aとして実現されていくと思うんですよね。

いけとも:話されてめちゃくちゃ刺激されたので、少し話を広げてもいいですか。
今週、別のニュースがあったんです。Gemini Notebook(旧NotebookLM)に、エキスパートインテリジェンスという機能が来ました。
Google Play ブックスで買った本がそのまま情報源になって、つまりその本と議論できるエージェントが作れるんです。
尾原:あれは早く日本に来てほしいですよね。
いけとも:これをA2Aとつなげると、たとえばコトラーさんの本を買った瞬間に、仮想的なコトラーエージェントができるわけです。
戦略を作ったら、コトラーエージェントに「レビューだけお願いね」と投げる。本を買ったノートブックは、ある種すでに一つのエージェントですから。そういう外部からの使い方はあり得そうですよね。
尾原:スキルというもので「何ができるんだっけ」という実力そのものが共有できるようになりました。
次に、そのスキルを動かすためには、メモリやコンテキストとして、スキルを活かしきるための知識も共有しなくてはいけないよね、となった。だからいまGitHubを使って、メモリやスキルをチームや外部で共有する流れがあるわけです。
さらに言えば、このメモリとスキルに対して、特定の仕事をゴールまでマネジメントしますというものを、エージェントというパッケージとして流通させる。そういう形になってきています。
いけとも:Gemini Notebookの話でいうと、そこで聞かれた質問にすごく価値があると思うんですよね。分からなかったポイントとか、自分の具体的なケースにどう当てはめるかとか。
営業の人が営業の本を買ったら、これまでは自分で読んで覚えて実践するしかなかった。それがノートブックに入れて自分の商談メモを渡すと、その本っぽくフィードバックが返ってくる。実践に近づきます。
その過程のデータは、すごい価値がありますよね。これを誰が持つのか。いまのところGemini Notebookが持つと思いますが、著者も持ちたいだろうし、出版社も持ちたい。この辺りの綱引きが出てくるでしょうね。
尾原:アメリカでは大手出版社6社が10万冊超を開放して、ノートブック上で「その本を持っているならAIと壁打ちしてOK」と認めました。
誰かとコラボするときも、両方がその本を買っていればOKだよという形にした。これは結構でかいです。いまは英語の本だけで、日本ではまだ使えませんけれど。
これがメモリ単位ではなくスキル単位、さらにゴールマネジメントまでやるエージェント単位になり、ちゃんと作ってくれた人にお金が還元される形でコラボが行われる。いよいよエコシステムになってきた感じですよね。

尾原:この半年の傾向で言うと、AdobeもGoogleも、エージェントが何をどう判断したかを追える仕組みを前面に出してきました。
知性そのものは誰もが使えるようになった。ではそのインテリジェンスの上で、あなたはどう判断するのか。このジャッジメントこそが固有性を表します。
成功したときの再現性よりも、例外的なときにどうするのか、失敗から何を学ぶのか。そこに新しさとか、その人らしさが生まれてくる。
だから判断の履歴そのものが、GoogleにとってもAdobeにとってもプラットフォームとして非常に重要で、自分のところに置いていく傾向があります。
いけとも:確かに。
尾原:しかも判断の履歴は、どうしてもハブのところに力が宿るんですよね。
複数のエージェントを使いこなして、結局AとBのどっちにするのかという判断は、いろいろやった集約点で起きます。だからそういうプレイヤーがそこを取りに来ていて、単なるインテリジェンスやナレッジだけを提供する人たちとは、差が起きやすくなってしまいます。

いけとも:判断の履歴の話で、勝手に話を変えてもいいですか。
いま横で走らせている実験があって、面白かった話なんですけど。自分でやったことを軒並みデータ化していて、本を書いているデータもめちゃくちゃ細かく取るツールを作ってやっているんです。
一冊書いたら、3,000個くらいの意思決定や修正、AI提案の採択のデータが溜まりました。
尾原:はい。
いけとも:フィードバックにはいろんなレイヤーがあります。ファクトチェックなら事実を知らなくてはいけないし、推敲なら尾原さんに教えてもらったテクニックで盛り上げる。
その中に、一つの文章が分かりやすいかどうかという細かいレイヤーもあるんですよ。一文が長くて見づらいとか、冗長だとか。「〜と思います」を「〜です」でいいじゃん、みたいな細かい調整です。
そっちのデータも溜まったので、これをファインチューニングしてそこだけ別のモデルを作ったら、ローカルでいけるんじゃないかと思ったんです。
いまは全文をClaudeかCodexに回して、全レイヤーを何百個と指摘させています。
でも分解すると、太字にするだけ、一文を簡単にするだけ、冗長な文を消すだけ。細かく分ければ4Bくらいのファインチューニングでいけるんじゃないかと思って、今朝やってみたんですよ。
尾原:おお、やってみたんですか。
いけとも:Claude Codeにお願いして、Mac miniで動かしました。Gemma 3n のE4Bで、こういうトレーニングデータを作って、LoRAで差分だけを学習させて。
学習データはたくさんあるので、一回やってみたら、もう学習が終わりまして。精度はこれから見るんですけど、めちゃくちゃ早くできました。
Mac miniはメモリ64ギガのやつです。200文を投げても1分ほどで返ってくる。一章まるごと入れても同じくらいです。この速度でローカルでいけて精度も良かったら、普通に実用レベルだなと。
尾原:それでどれくらいの時間でできました。
いけとも:学習自体は1時間くらいですかね。予想以上に、本当に10回くらいのやりとりで終わりました。
判断の履歴のデータから学習データを作ってもらって、インプットは文章、アウトプットは直すかどうかと、直した文章と理由。それを評価して学習させています。
いまは一文ごとの分かりやすさだけをチェックするモデルを作っていますが、これがうまくいったら、章の中の不要な文を削るモデルとか、三文だけ見て統合するか判断するモデルとか。
分ければ独自のモデルチューニングに行けるなと思っています。短期的にはプロンプトチューニングに行くと思うんですけど、長期的には専門特化の小さなLLMに分かれていく。仕事を分ける仕組みさえあれば、10個くらいのモデルで同時に一つの文章を点検して統合すれば、ほとんどローカルでいけるんじゃないかと。

尾原:まさにそれを、LinkedInも今年、どのポストを誰に表示するかという仕組みで切り替えました。Metaも広告のランキング基盤で同じことをやっています。
いけとも:用途を特化しているということですよね。小さなモデルでも、用途がめちゃくちゃ特化されているから使えると。
尾原:すごく簡略化して言うと、ユーザー一人ひとりに、どのポストを表示するのがいいのか。広告主にとってどのユーザーに広告を出すといいのか。
その判定を、巨大な基盤モデルを蒸留した軽いモデルにやらせる。それを何百個も並べて走らせるので、一瞬でその人にフィットするポストが表示されるわけです。
広告の場合は本当にコンマ何秒で表示しなくてはいけないので、LLMレベルではなく行列計算レベルのもので作るケースもあります。
最近の特徴としては、現場に合わせたAIをLoRAやファインチューニングで作り直して、その小型モデルを端末側にロードする。オフラインでも、その環境に適応したものが素早く動く。中国ではそのやり方が増えていると聞きます。
いけとも:意外だったのが、Claude Codeに丸投げしたんですけど、めちゃくちゃ簡単でした。
尾原:本当ですか。それ、俺もやってみよう。
いけとも:今朝思いついて、もうできているんですよ。横で見たら「あれ、終わってるじゃん」みたいな。
尾原:LoRAはもともとLLM向けに出てきた手法なんですけど、一気に広まったのは画像の生成AIです。好みの顔の画像を20枚くらい入れて、そのアウトプットに近づくよう寄せていく。あれで有名になって、またLLMに戻ってきました。
Hugging Faceにも、小さいサイズをLoRAで直しただけで全然ワークするものがあります。
LoRAやファインチューニングをやるプログラムの行数自体は、めっちゃ短いんですよ。元のモデルは触らず、差分だけを小さく学習するので、パソコンをぶん回せばできるはずなんです。
いけとも:そうですね。
尾原:文章として読みやすいか、ワクワクするか。いくつかの評価関数で定量化できるものについては、ルールの優先順位を「これはこれに優先する」といちいち書くよりも、ごちゃっと学習させた方が早い。ローカルAIの時代になると、それをバンバン実行できるようになるということですよね。
いけとも:細かいデータがあればあるほど、難しいことはできなくても済むんです。
一文一文の修正データがあればこそ、文章の修正程度のことなら4Bでもなんとかなる。解像度をめちゃくちゃ上げた判断の履歴で、一個一個は小さな役割のモデルを作っていく。その分だけメインモデルから切り離して、統合だけしていけば、ローカルでできるシェアが広がっていく。今日やってみて、そのイメージがつきました。

尾原:Mac miniやMac Studioが出て、ローカルLLMは誰でもできるという雰囲気になりましたし、NVIDIAがHugging Faceを1兆円を超える規模で買収するという報道もありました。
今週アメリカの人たちと議論していると、ネットが定額制になったときの感覚の話をみんなしているんですよ。
これまではAPIを使えば使うだけ課金されたから「もったいない」だった。それがいまは、ローカルでけっこう動くから、7Bとか場合によっては20Bくらいの規模をローカルで回せる。
だったら、いかにGPUの稼働率を50%以下に落とさず、限りなく100%回し続けて何ができるかを議論した方がおもしろいよね、と。
いけとも:へえ、面白い。
尾原:その中で、ある程度の自己改善が見えるならファインチューニングして個別のモデルを作ればいい、という話も出てきます。
あと今週衝撃的だったのが、リーガルAIエージェントの雄であるHarveyが、自前のモデルを持ったことです。土台をOpenAIのGPTから、中国のMoonshotが出しているオープンウェイトのKimi K3に変えて、自分たちで学習させた。
いけとも:知らなかった。
尾原:しかもリーガルじゃないですか。自分たちで重みを持てば、クライアントごとの環境で動かして、どう学習しているかも外に出さずに済む。
データの守秘だけでなく、会社の重み付けごと守ります。だから安心して任せられますよね、という発想です。
いけとも:しかも、弁護士業務だけでは相当な量がない限り、その枠を全部は使い切らないと思うんです。
ということは、空いた枠に弁護士以外のLoRAを足していく。用途をどんどん足していくビジネスを、入った後に展開しますよね。
尾原:そもそもエージェントは仕事を任せきれるから、これまでは「弁護士の仕事を効率化するので、弁護士の人件費の10%くらいですかね」という費用感でした。
それが「3年目の弁護士の仕事、全部できますね」となったら、3年目の弁護士の年収くらいはAIに払ってもいいという話になります。

いけとも:金融として、サーバーやGPUを買うところの会社を組成して一部保証する動きもありましたけど、行き着く先は二次流通だと思うんです。
一番最初は高いものをメガテックが買う。でも5年後には、場所や電力の問題でモデルチェンジしたとき、そのGPUはまだ使えるわけですよね。社内向けならこれでいい、という話になる。
尾原:そうです。本当のフロンティアモデルを学習させるには最先端でやらないと時間が間に合いません。
でも推論として実行する分には、1世代前の方がむしろ安くて、ずっと回し続けられるからいいじゃないか、という話もあります。
究極には、減価償却が終わった後の電気代とのバランスになります。最新の省エネなものの方が、ずっと回し続けたら電力消費が全然違うよね、という競争には行き着きます。
ただ短期的に、我々の事業レベルで考えたときには、エージェント同士のやりとりが当たり前になったときに、自社の優位性であるメモリやスキル、オントロジーをちゃんと囲い込んで、自社の優位性を尖らせた方がいいよね、という方向性になっているという話です。
いけとも:なるほど。いま巻かれている最新のGPU群はメガテックが持っているけれど、それが型落ちして各社に配られていく。
そこに一個一個ローカルのAIやエージェントが入っていって、各社独自のローカルネットワークができていく。まだ各社ともデータの整備はできていないと思いますが、それが組み合わさっていく。広がる絵が見えますね。

尾原:ただ、論点になっているのは、サーバーでAIを使うのも安くなっているということです。
だから「GPUの稼働率が50%以上で回り続けるものは、ローカルで持った方が得じゃないか」という話と、もう一つの話が並びます。
Palantirが7月末にブログで出していたんですけど、判断の履歴からできてくる重みのマップや、オントロジーと呼ばれる「どういうアクションの連鎖で成果に至るか」というもの自体が、あなたの会社の固有の成長性を支えている。これを外に渡すのはバカか、という話です。
いけとも:Microsoftと似た発想ですよね、発信としては。
尾原:そうですね。ナデラも今年のダボスで、自社が管理するモデルの重みに自分たちの暗黙知を埋め込めないなら、定義上あなたに主権はない、と言っています。
アレックス・カープはもっと過激で、重みを持つ者がアルファを持つと。オントロジーこそがAIソブリン、AIとしての主権性であり、あなたの会社が他社よりも成長するというアルファなんだから、そこを手放すなんてありえないだろう、という言い方です。
この辺りが、オープンウェイトと、ローカルでAIをぶん回すと定額制に変わるから50%以上回し続けた方が得だというメンタルチェンジと、AIソブリンとして企業の固有性がエージェント化していくからOpenAIにすら触れさせない、という三つ巴になっています。
この2、3週間くらい「ひゃー」というゲームチェンジが起きているんです。
いけとも:面白い。
尾原:逆に言うと、NVIDIAが「オープン系のエコシステムに張って、サーバー系ではなくローカルに端末を置くAI市場も、がっちり覇権を持たなくてはいけない」と言っている。だからHugging Faceの買収も報じられるし、Poolsideには巨額のライセンス料と出資を入れて、100人以上を自社に迎えてオープンウェイトを加速させる。そういう局面の転換が来ている感じです。

尾原:NVIDIAは8月に、AIインフラの資金の枠組みを発表しました。ブラックロックやアポロ、ブラックストーンなど6社と組んで、5,000億ドル超の外部資本を動かすという話です。
いかにもエコシステムを作っていく話ですよね。関西人なので例えが分かりにくいかもしれないんですけど、阪急電車というローカル電車を作るとき、小林一三という創業者は最初から考えていました。
鉄道と沿線の住宅をセットで売る。そのあとに宝塚の劇場を作って、週末に人が動く理由を用意する。沿線が住みやすいから土地の値段も上がるし、後には梅田に百貨店もできる。
その後ろにエージェント・ソサエティのような産業インフラができていくための、ある種の先行投資としてAIインフラがある。同じ匂いがしますね。
いけとも:なるほどね。
尾原:鉄道が生まれたときに一番儲けたのは、線路を敷いた会社ではありません。潰れかけた鉄道会社を買い集めて、束ねて再編した金融の側です。
いけとも:いや、面白い。新しい時代がなんとなく見えると、その先に浮かんでくる需要も出ますよね。
GPUがマシンやハードウェアとしてあり、ソフトとしてはファインチューニングや独自化されたモデルが多数ある。それをやるには各現場のデータをちゃんと整備しなくてはならず、データを集めるのも使わせるのも人がやる。付随する外部需要は、いろんなところにたくさん出そうな感じがします。
尾原:一番わかりやすいのは、コンテンツとマーケティングです。デジタルで完結しやすいから、一旦はそこに目が行きやすい。
ただ本質的には、AIは人間が認知できないものを認知としてつなげて予測するし、予測するだけではなく予防的な処置もできる。ビル・ゲイツも8月末の長いエッセイで、そういう話をしていました。そうなると、一番お金になるのは異常気象ですよ。
異常気象は農業につながるし、産業エコシステムのレベルで、AIが予測インフラ、介入インフラに変わっていく。どういう先物取引市場ができるんだっけ、というところまで行くんじゃないですか。
それが分かっているから、ブラックストーンのクラスがそこに来ている。もちろんインフレで他の金融テクニックが儲からなくなっているから、そういうマーケットを作らないと彼ら自体もしんどい、というのもあります。でも明らかに新しいエコシステムだと思いますよ。
いけとも:この議論で、次の時代の絵が浮かんだ気がします。
尾原:金融のバックグラウンドがないと何を言っているんだという話かもしれませんが、ちゃんと知りたい人は「モルガナイゼーション」という言葉を調べてください。鉄道の時代に起こった話です。
いけとも:モルガナイゼーション。これから研究します。非常に勉強になりました。
Googleが策定した、AIエージェント同士が仕事をやり取りするための標準プロトコルです。2025年4月に発表され、いまはLinux Foundationに管理が移り、Salesforce・SAP・LangChainなど50社超が参加しています。外部ツールをエージェントに接続する規格であるMCP(2024年11月発表)とは違い、A2Aは「一つの仕事をまるごと外部のエージェントに任せる」ための規格である点が特徴です。
Google Cloudが運営するマーケットプレイスには、審査を通過したエージェントが数千規模で並んでおり、Adobeなども出品しています。決済手数料はGoogleが3%と設定されており、月額・成果報酬・従量課金など複数の課金形態に対応します。ただしA2Aで呼び出すエージェントは、Google Cloud上での稼働が前提になります。
判断の履歴やオントロジー(業務ノウハウの構造)は企業固有の競争力の源泉であり、外部のホスト型AIに渡すとその優位性ごと明け渡すことになる、という考え方が背景にあります。実際、リーガルAI大手のHarveyはOpenAIのGPTから、中国発のオープンウェイトモデルKimi K3に土台を切り替え、自社データで学習させています。
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