・AIを使ってもアウトプットが速くならない原因は「1個ずつ順番に作らせている」こと。遅い・レビューがしんどい・つなげると噛み合わない、の3つは同じ原因から生まれる
・生成AIは自己回帰型(前を確定してから次へ進む)で書き直せない。そして人間の作り方も、まったく同じ構造になっている
・解決策が「いけとも流 拡散ドラフト法」。いきなり全体を作り、フィードバックの粒度を構成→要素→表現へ段階的に降ろす。前提3つ・運用4つの計7ポイントで実務に乗る
AIを使っているのに、アウトプットの速度がそれほど変わらない。チェックも大変だし、精度がいまいち…。
そういう感覚はないでしょうか。
賢いAIが出てきて、できることは確かに広がりました。それなのに、資料も文章も企画書も、なぜか思ったほど早く終わらない。
細かいところが気になって直しているうちに時間が溶ける。つなげてみたら全体がチグハグで、結局やり直しになる。
僕もこの問題をずっと考えてきました。そして、作り方そのものを変えたら、進み方が別次元になりました。
実は5月の連休の5日間で、『Claude 最強のAI自動化術』を書き上げました。
そこから今日までの間に、4冊分の原稿がほぼ終わっています。今年は10冊ペースで出していく見込みです。
その間もYouTubeは毎週更新していますし、登壇は週に3〜4回あります。X記事とnote記事は毎日書いています。子どもと遊びますし、友達とも飲みに行きます。
「なんでそんなに仕事が早いんですか」と聞かれることが増えたのですが、答えのひとつがこれでした。
いけとも流 拡散ドラフト法、と名付けました。
この記事では、その考え方と、使いこなすための7つのポイントをまとめます。実際にAIを動かしている画面は動画でお見せしているので、あわせてご覧ください。
YouTube動画版はこちら:https://www.youtube.com/watch?v=0z9GxHBFeYQ
目次

まず、多くの人が感じている課題を3つに整理します。
・遅い。せっかくAIを使っているのに、1個ずつ順番に出力させている
・レビューがしんどい。出てきたドラフトを最初から丁寧に直す必要があり、修正に時間と労力がかかる
・つなげると噛み合わない。部分ごとに作らせると、つないだときに全体がチグハグになる
心当たりのある方は多いと思います。
そして、この3つは別々の問題に見えて、原因はひとつです。
「1個ずつ、順番に作らせている」からです。
部分だけを渡されたAIは、全体の文脈を持てません。だから質が落ちます。
部分だけを見る人間は、全体の判断ができません。だから直しが終わりません。
順番に作っている限り、この3つは同時に発生し続けます。逆に言えば、作る順番を変えれば、3つ同時に消えます。

ここで少しだけ、AIの仕組みの話をさせてください。作り方の話に直結します。
ChatGPTもClaudeもGeminiも、いま我々が使っている文章生成AIは、ほぼすべてが自己回帰型と呼ばれる方式で動いています。
やっていることはシンプルです。
・次の1文字(正確にはトークン)を予測して置く
・それを繰り返して文章を作る
・前を確定してから、次へ進む
画面で文字が左から右へ流れていくのを見たことがあると思います。あれは演出ではなく、本当にそう作っています。
この方式には、決定的な弱点があります。
一度出力したものを、途中から書き直せません。
前の部分が確定しているので、後から「ここを変えたい」と思っても構造上できないのです。
だから最近の推論モード(シンキング)は、あの挙動をしています。我々に見えないところでいったん考えを書き出して、それを材料に本番の回答を書く。書き直せないから、答える前に一度書いてみているわけです。

ちなみに、まったく別の作り方もあります。画像生成AIが使っている拡散型です。
ノイズだらけの全体からスタートして、部分ではなく全体を少しずつ鮮明にしていく。途中の絵はぼやけていますが、欠けてはいません。「拡散ドラフト法」という名前は、ここから借りました。
この方法に特化したInception Labsというベンチャー企業もあります。拡散型の言語モデル「Mercury」を出していて、コード生成などで使われはじめています。
GoogleもGemini Diffusionという拡散型のモデルを公開しています。
画像以外にこの方法を適用することで、爆速で、かつ全体整合性を保ったアウトプットが作れることが期待されています。
ただ、この記事でしたいのはモデルの話ではありません。
注目してほしいのは、我々人間の作り方のほうです。
考えてみると、人間の作り方は、驚くほどきれいに自己回帰型です。
・本なら、第1章を仕上げてから第2章へ進む
・資料なら、1枚目から順に作り込む
・企画書なら、上から書き下ろす
思い当たりませんか。僕もずっとこうでした。
頭の中でも同じことが起きています。最初の論点を固めて、それを前提に次の論点を考える。前を確定させてから次へ進む、という思考の組み立て方です。
だから、全体像が見えるのはいつも最後になります。
そして最後に見えたときには、もう直せません。第4章まで来て「やっぱり第1章が違うな」と気づいても、第1章はもう相当作り込んでしまっている。だから、見なかったことにする。
人が方針転換を避けるのは、意志が弱いからではありません。手戻りが痛すぎるからです。
これが、順番に作ることの本当のコストです。
ここでAIの特性が効いてきます。
いまのAIは、短時間で、そのまま使えるレベルのアウトプットを一気に出せます。
・本文1万文字を、丸ごと数分で
・資料一式を、丸ごと数分で
・本の構成(目次)全体を、丸ごと数分で
人間なら数時間、場合によっては1日2日かかるものが、いきなり最終形の姿で出てきます。
しかも、全体を渡したほうがAIの精度も上がります。部分だけ切り出して渡すより、文脈が揃うぶん質が高くなる。
企画書でも、提案書でも、研修プログラムでも同じです。全体構造があるものなら、何にでも効きます。
▶︎ あわせて読みたい:AI仕事術と自動化術は、自動運転のレベル3とレベル5くらい違う

ここまでを踏まえて、定義します。
拡散ドラフト法とは、次の4ステップです。
重要なのは、ただ一気に作るだけではないという点です。
一気に作るところだけを真似すると、出てきた大量のアウトプットに埋もれて終わります。肝は、そのあとの直し方のほうにあります。
見る粒度を、大きいところから小さいところへ、段階的に降ろしていく。
最初は構成だけを見ます。次に要素を見ます。その次に中身を見ます。表現を見るのは、いちばん最後です。

この違いは、部屋の片付けにたとえるといちばんわかりやすいと思います。
これまでのやり方は、引き出しを1段ずつ完璧にしていく方法です。
1段目はピカピカになります。気分もいい。
ところが2段目を開けたときに気づくのです。「あ、これ1段目に入れたほうがよかったな」と。
でも1段目はもう完成させてしまった。だから入れ替えるのが億劫になる。1個1個は完璧なのに、家全体では最適になっていない。
拡散ドラフト法は、まず全部を床に出す方法です。
全部出してから、大きく分ける。それからだんだん細かく分ける。最後に棚へしまう。
どの瞬間も、全部が同じくらい片付いています。
片付けの定石が「まず全部出す」であるように、制作の定石も本来は同じなのだと思います。これまでは、全部出すコストが高すぎたから誰もやらなかっただけです。
そのコストを、AIが消しました。

もう少し正確に言うと、変わるのは完成度の上がり方です。
従来のやり方は、パズルのピースを縦に積み上げていくイメージです。
・パーツは完成している。全体は未完成
・積み上げていく(縦に伸びる)
拡散ドラフト法は、線画に色を重ねていくイメージです。
・パーツは未完成。全体はいつも揃っている
・解像度が上がっていく(面が濃くなる)
縦に積むのではなく、面で濃くする。
この違いを掴めると、途中の状態が粗くても不安にならなくなります。粗いのは失敗ではなく、まだ薄いだけだからです。
ここからが実践です。
ただ、正直なところ、この手法は文章だけではいちばん大事なところが伝わりません。「どの粒度で、どんな言葉でフィードバックするか」が肝なのですが、そこは実際に手を動かしている画面を見ていただくのが圧倒的に早いです。
動画では、本を1冊作る過程を2段階に分けて、実際にAIを動かしながらお見せしています。
実践①目次編。章立てを節レベルまで一気に出させ、構成パターンを2〜3案並べ、全体を通しで読んで章の順序だけを組み替えます。細かい節の中身は、この段階ではまだ見ません。
実践②内容編。目次が固まったら、1章分1万文字を丸ごと生成させます。骨組みではなく、そのまま読める状態で出させるのがコツです。そこから構成の作り直し、要素の入れ替え、最終チェックへと粒度を降ろしていきます。
動画では、僕が初見の原稿を読みながら音声入力でフィードバックしている様子を、そのまま入れています。かなり雑に喋っているので、「このレベルでいいのか」と安心してもらえると思います。
38分あるので、実践パートだけ見ていただくのでも構いません。
YouTube動画版はこちら:https://www.youtube.com/watch?v=0z9GxHBFeYQ
理屈を整理しておきます。
いきなり全部作らせるのが効くのは、次の4つが同時に起きるからです。
箇条書きの構成案だけを見せられても、人はうまく判断できません。抽象的だと、違和感が立ち上がってこないからです。
人は、具体的なものにしか正確に反応できません。
だから、判断するために作らせる。使うために作らせるのではない。ここが発想の転換だと思っています。
実際、先週ちょうど1冊終わったのですが、その本は最初に対談形式で書いていました。読んでみて「これは違うな」となり、対談形式そのものをやめて、完全に一人称の形式に100パーセント作り変えました。
順番に丁寧に積み上げていたら、絶対にやらない判断です。「ここまで頑張ったのに、また最初から?」となるからです。
人間がやったら大変な作り替えが、一瞬で終わる。ここがAIを使ういちばんおいしいところです。

ここからが実務的な話です。
拡散ドラフト法は、正直なところ、使う側にコツが要ります。何も考えずに「全部作って」とやると、たいてい破綻します。
意識しているポイントが7つあります。前提が3つ、運用が4つです。
まず前提、つまり「いつ使えるか」の3つから。
自分がある程度わかっている領域にだけ使ってください。
まったく知らない領域でいきなり全体を出させると、情報量が多すぎてキャパオーバーになります。専門用語が多く、何が重要かもわからず、判断ができません。
いちばん危ないのは、わからないまま作り終えてしまうことです。
知らない領域では、まず段階的にインプットして、自分が理解するステップを先に挟んだほうが確実です。
これも重要です。
拡散ドラフト法の良さは、大きく速く回転できることです。ところが出てくる量が自分のキャパを超えると、確認するだけで処理しきれず、回転が止まります。
僕の場合、サッと目を通して気軽に把握できるのは、いまのところ1万文字くらいです。
10万文字(本1冊分)になると、通読するだけで時間がかかり、確認の負荷が高くてやる気がなくなります。一方で1章分や構成全体なら、気分よく全体を見て、面白いかどうかを判断できます。
この量は人によって違うと思います。1,000文字かもしれないし、5,000文字かもしれない。
一度全部作らせてみて、ストレスなく通読できる量を自分で把握しておくのがおすすめです。上限を先に決めておくと迷いません。
丸投げはしないでください。
「ワークスタイルエボリューションというタイトルで本を作って」だけだと、あまりにフリースタイルすぎて、出てくるものがしっちゃかめっちゃかになります。言いたいことと違うものが出てきて、確認する価値すらなくなる。
何かを作ろうとしている以上、方向性や伝えたいことは、必ず何かしらあるはずです。
・仮説(ゴールの仮説)
・決定事項(すでに確定していること)
・制約(予算・納期・ルールなど)
これらは事前に全部渡します。最初から精度が上がりますし、見る側の負荷も下がります。
あえて伝えない理由は、ひとつもありません。
「先に言うと考えすぎるかも」「後から説明すればいいか」は、不要な遠慮です。
もちろん、アイデアが本当に何もないなら「企画書を作りたいけど何も浮かんでいないので、案を10個ちょうだい」でも構いません。ただし、決まっていることがあるなら先に渡す。そのほうが確実に早いです。
続いて、作らせたあとの回し方4つです。ここがいちばんのコツだと思っています。
AIに伝えるレベル感を、大きいところから順に降ろしていきます。
・第1段階 構成レベル(章立て、全体の流れ)
・第2段階 骨子・要件レベル(節や要素の過不足)
・第3段階 要素の中身レベル(エピソード、具体例、データ)
・第4段階 細かい表現レベル(言い回し、語尾)
いきなり各論に入ってしまうと、細かすぎて意味がありません。どうせ後で全部変わるからです。
これはビジネスの意思決定と同じだと思います。まず大枠を捉えてから各論に降りたほうが、妥当な判断がしやすい。
一度確定させた層には、戻らない。そう決めておくと、回転が驚くほど速くなります。
どこまでAIに任せて、どこから自分でやるのか。
これは作業の種類ではなく、粒度で線を引きます。
粗い粒度、つまり全体構成をゼロから作る、大きく組み替える、要素を入れ替えるといった作業は、圧倒的にAIのほうが速い。
細かい粒度、つまり一文を削る、語尾を整える、言い回しを変えるといった作業は、自分でテキストやパワポを開いて直したほうが圧倒的に速いし、精度も上がります。
ここで多いのが、AIに投げ直せる大きな修正を、自分で受けてしまっているケースです。
「AIに作らせているんだけど、チェックと修正にすごい時間がかかる」という声をよく聞きます。それは、構成レベルの直しを手作業でやってしまっているからです。
大きいところはAIに投げ直す。細かいところだけ自分でやる。この線引きだけで、体感が変わります。
▶︎ あわせて読みたい:作る脳と、選ぶ脳は別物——発散モードと評価モードの使い分け
読みながら、思ったことをそのまま喋る。これが一番ラクです。
僕は最近、折りたたみのAndroidで本文を読みながら、iPhoneでClaude Codeを開いて、ソファに座って喋っています。これが執筆スタイルになりました。音声入力はTypelessを使っています。
見ながら話すので、覚えておく必要がありません。「この表現ダサいな」と思ったら、そのまま言うだけです。
最近の音声入力は、喋った内容をそのまま文字にするのではなく、要約して整えてくれます。だから、つらつらと雑に喋っても通じます。
粗い粒度の指摘にこそ、音声入力は向いています。手で打つより速く、大きな方向性をサクッと渡せるからです。
最後がいちばん重要です。
拡散ドラフト法では、最終的な細かい調整は自分でやります。そのとき、AIが作ったバージョンと、自分が直したバージョンを別ファイルで残してください。
僕は「修正版」というファイル名で、AIのアウトプットをコピーしてから直しています。
直し終わったら、その両方をAIに渡してこう言います。「あなたが作ったものに対して差分を作ったので、この差分を分析して、次回以降は同じような感じで出るようにしてほしい」と。
これを何度も繰り返しています。本を作るときも、資料を作るときも同じです。
すると、2回目以降は細かい部分の精度が明らかに上がります。
僕の場合、文章スタイルをかなり作り込んであるので、最初のドラフトの時点でもう自分っぽい文章が出てきます。「あれ、これはまあまあいいかも」となって構成をあまり変えないケースもあるくらいです。
同じ指摘を、二度しない。
このサイクルを回していくことが、結局いちばん効きます。
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整理します。
・いまのAIは自己回帰型で、前から順に確定させていく。そして人間の作り方も、まったく同じ構造だった
・その結果、遅く、直しにくく、全体が噛み合わないという3つの課題が生まれていた
・AIの登場で、一気に全部作ってから、大きなところから何度も直すという作り方が可能になった
・ただし、一気に作るだけでは足りない。フィードバックの粒度を段階的に降ろすことが肝
・前提3つと運用4つのポイントを押さえると、実務で回るようになる
僕自身、この方法に切り替えてから、アウトプットのスピードも精度も上がりました。
そして意外な副産物として、何度も全体を読み返すことになるので、自分のインプットにもなっています。
文章でも、企画でも、資料でも、全体構造があるものなら何にでも使えます。
実際にAIを動かしている画面と、僕が音声でフィードバックしている様子は、動画で全部お見せしています。手を動かして再現したい方は、こちらをどうぞ。
ぜひ試してみて、どんな感じだったかコメントで教えていただけると嬉しいです。
YouTube動画版はこちら:https://www.youtube.com/watch?v=0z9GxHBFeYQ
全体構造があるアウトプットなら何にでも使えます。本の原稿、プレゼン資料、企画書、提案書、研修プログラムなどが典型です。逆に、全体像が最初から存在しない単発の返信やメモには向きません。
むしろ上がります。部分だけを切り出して渡すより、全体を渡したほうがAIは文脈を持てるからです。ただし出てくる量が自分の確認できるキャパを超えると回転が止まるので、一度に作らせる量の上限を先に決めておくことが重要です。
作業の種類ではなく、粒度で線を引きます。全体構成をゼロから作る、大きく組み替えるといった粗い粒度はAIのほうが圧倒的に速い。一文を削る、語尾を整えるといった細かい粒度は、自分でファイルを開いて直したほうが速く、精度も上がります。
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