河内長野市の「脱コンサル」とは?生成AI内製でコンサルに残る3つの役割 - 生成AIビジネス活用研究所

河内長野市の「脱コンサル」とは?生成AI内製でコンサルに残る3つの役割

河内長野市の「脱コンサル」とは?生成AI内製でコンサルに残る3つの役割

  • 河内長野市が、行政計画の調査から素案までを生成AIで職員に戻す「脱コンサル」を表明しました。
  • コンサルの仕事は消えず、買う対象が成果物から助言・検証・繁忙期の応援という役割に変わります。
  • 全国の試算は年約110億円の委託減ですが運用費で目減りし、成否は5つの物差しで測ります。

10月6日、大阪府河内長野市の西野修平市長が、記者会見で方針を表明しました。2027年度以降に作り始める各種の行政計画を、生成AIを使い、職員が主体になって作る。市長はこれを「脱コンサル」と呼んでいます。

では、コンサルの仕事は消えるのでしょうか。答えは、外注をやめる話ではなく、外注の「かたまり」を工程に割って、買う部分を選び直す話です。

市が職員に戻す工程、外部に残る役割、全国で動くお金、成否を分ける条件、そして受託する側の生き残り方の順に見ていきます。

市が職員に戻すのは、調査から素案までの工程

「基礎調査」「データ整理」「骨子」「素案」の4工程を、これまでは外部のコンサルが、これからは職員とAIが進める様子を比べた図

河内長野市は、計画づくりをこれまでほぼ委託して進めてきたと市長は話しています。それを、生成AIを使った職員の仕事に切り替えます。

職員に戻すのは、基礎調査やデータ整理、計画の骨子や素案づくりなどです。いずれも、外部のコンサルタントへの一括委託が多かった工程です。

AIが計画の中身を決めるわけではありません。AIを使って、職員が書く。変わるのは、手を動かす人です。

狙いは2つ挙げられています。職員の政策立案能力を高めること、計画づくりのノウハウを市役所の中にためることです。

費用についても、市長は、AIを使いこなせれば、数百万円から数千万円かかる委託費を払わなくて済む、と話しました。実績ではなく、これからの見込みです。

宣言の前に、ルール・人・道具がそろっていた

2025年度の利用ガイドライン、2026年度の若手推進チーム、2026年8月のPolimill協定という準備が、脱コンサル宣言の前に積み上がっていたことを示す図

発表は、突然ではありませんでした。

2025年度に、市は生成AIの利用ガイドラインを作り、業務での利用を始めています。2026年度には、若手職員を中心にした生成AI利活用の推進プロジェクトチームを置きました。

さらに2026年8月24日、行政向けの生成AI「QommonsAI」を提供するPolimillと連携協定を結んでいます。協定の範囲は、施策立案の支援、条例や規則の文案を整える法制執務、推進チームへの技術支援、職員の能力向上、サービス改善の共同研究まで広がっています。

ルール、人、道具。宣言の前に、3つがそろっていました。「脱コンサル」は思いつきのスローガンではなく、2年かけて積んだ準備の上に立っています。

「脱コンサル」の正体は、外注の工程分割

一括委託、AI支援の内製、協働型の3つを、途中の判断を外部・職員・専門家のだれが持つかで比べた図

「脱コンサル」と聞くと、外部を全部切るように聞こえます。実際の線引きを、家づくりにたとえて整理します。

一括委託は、施工会社に家を丸ごと任せるやり方です。調査も整理も構成も執筆も外部がまとめて進め、市は仕様を示して、できあがったものを確認します。

AI支援の内製は、自分で図面を引くやり方です。職員が資料と論点を選び、AIで整理や初稿づくりを何度もやり直し、自分の手で直します。

その中間が協働型です。図面は自分で引き、構造計算と検査だけをプロに頼みます。市は、高度な助言や客観的な検証が必要な分野では外部専門家を使い続けるとしているので、この協働型に当たります。

3つを分けるのは、計画の途中の判断を誰が持つかです。一括委託では途中の判断が外部のもので、内製では職員が途中案を何度も見て、直し続けます。

つまり「脱コンサル」は、外部の排除ではなく、外注という1つのかたまりを工程に割る動きと読めます。

外部に残る3つの役割

職員が設計を持ち、専門助言、第三者の検証、繁忙期の応援の3つを外部に頼む役割として示した図

家づくりのたとえを続けます。職員が図面を引くようになっても、外部に頼む仕事は3つ残ります。

1つ目は、専門助言です。構造計算にあたる仕事で、庁内に知見がない法制度、技術、安全性にかかわる計画では、専門家の助言が欠かせません。

2つ目は、第三者の検証です。完成前の検査にあたる仕事です。自分の案は、自分で見ると甘くなります。文章づくりを内製しても、その案を独立した立場で見る役割は、同じ担当者では代わりにくい仕事です。

3つ目は、繁忙期の処理能力です。職人の応援にあたる仕事で、複数の計画が重なる年は、職員の人数が決まっている以上、手が足りなくなります。

市が外部に残すと明言したのは、助言と検証の2つです。3つ目は、職員が増えない限り必ず出てくる役割です。

買う対象は、成果物全体から、助言・検証・ピーク対応という役割に変わります。コンサルの仕事は消えず、買われ方が変わる。ここが、この宣言の核心です。

▶︎ あわせて読みたい:コンサルや受託の”真ん中”は、AIでどう崩れるのか

全国に広げると、動くお金は年約110億円

年約270億円の行政計画の策定支援が4割減で年約110億円減り、運用費2割を引くと約90億円になる試算の流れを示した図

では、この変化で動くお金はどれくらいでしょうか。まず河内長野市の実例です。

都市計画マスタープランと立地適正化計画の改定業務では、委託の上限額が2025年度1,550万円、2026年度1,230万円で、2年度の合計は2,780万円でした。計画1本の発注が、数千万円の規模になり得ます。

これを全国に広げて試算します。全国の市区町村は1,741。人口規模ごとに、年間に出す計画策定の委託件数と平均単価を仮に置きます。人口1万人未満の町村は年0.5件で1件300万円、50万人以上の大都市は年10件で1件1,500万円、間は段階的に置きます。

積み上げると、行政計画の策定支援は年約270億円の市場になります。この仮置きを半分から2倍に振れば、総額も同じ幅で動きます。

全自治体に広がり、委託費が4割減る場合、委託支出の減少は年約110億円です。

ただし、110億円がそのまま自治体の財政改善額になるわけではありません。AIの利用料、研修、資料の整備、出力の確認が新しくかかります。減少額の2割が運用費で消えるなら、手元に残るのは約90億円です。

コンサル側も同じです。110億円は、従来型の委託から消える売上のシナリオで、業界全体の純減収とは限りません。検証、導入支援、研修の発注に移る分があるからです。縮むのは「代筆・整理」、伸びるのは「専門性・独立検証・力の移転」。収益機会が、そちらへ移ります。

内製の成否は、5つの物差しで決まる

費用、時間、品質、職員の力、知識の再利用の5つを総合点にせず別々に測ることを示した図

外注費が減っただけでは、成功とは言えません。職員が夜に残業して埋めた分は、削減効果に化けてしまうからです。

測るのは5つです。費用、時間、品質、職員の力、知識の再利用。

費用は、委託費に加えて、AIの利用料、研修、資料の整備、出力の確認までを足して見ます。品質は、根拠の漏れ、誤記、修正の回数で見ます。職員の力と再利用は、別の担当者が過去の指示と修正の理由を使い回して、次の計画を自力で進められるかで見ます。一つの総合点にまとめず、別々に見ることが大事です。

責任の分け方も決めておく必要があります。計画の中身の判断は担当課、利用ルールと監視は庁内の統括部門、システムの品質は事業者です。

デジタル庁が国の府省庁向けにまとめた生成AIのガイドラインも、行政判断の根拠が追えなくなるリスクと、特定のベンダーに縛られるリスクを挙げ、運用中の出力や利用ログの確認を求めています。AIが出した案でも、説明する責任は人にあります。

外注のほうが有利になる条件もあります。根拠を確認できない古い資料が混ざる、担当者がすぐ交代する、専門性が極めて高い。こうした計画では、初稿の速さより手戻りのほうが重くなります。

逆に、資料が標準化され、同じ種類の計画を繰り返し、修正の履歴を次回に使い回せるなら、内製の優位は続きます。

事業者の役割も変わります。計画書の代筆から、安全な基盤、専門支援、品質の検証、職員への力の移転へ。Polimillとの協定が職員の能力向上と共同改善を含むのは、この方向と重なります。

この物差しは、自治体だけのものではありません。外注している仕事がある会社なら、同じように使えます。

調べる、整理する、骨子を作る、素案を書く。外注をこの4つに割って、戻す工程と、買い続ける役割(助言・検証・ピーク対応)を決めます。まずは1案件だけ、工程ごとに時間と修正の量と根拠の漏れを比べ、合格した工程だけ広げます。

宣言の価値は、外注をやめることではありません。何を自分の手に残すかを決めたことです。

受託する側は、代替される前提で次の価値を探す

代筆・整理の仕事がAIエージェントに代わったあと、伴走、専門と検証、力の移転という3つの道標を探す受託側の進路を示した図

ここまでは、発注する側の話でした。受け取る側、つまりコンサルや受託会社から見ると、この動きはどう映るでしょうか。

内製化の流れは、行政だけでは止まりません。河内長野市のような動きが広がれば、他の自治体も、企業も、調査や整理や初稿を自分たちでAIを使って作るようになります。

そうなれば、コンサルや受託会社がこれまで担ってきた仕事の多くは、AIエージェントに代替されます。代筆と整理で値がついてきた仕事は、特にそうです。この流れは止められません。

だから問うべきは、代替されるかどうかではありません。代替されたあとに、どんな価値が残るのか。それを誰よりも早く探すことです。

探す場所の候補は、3つあります。

1つ目は、仕組みづくりの伴走です。どの工程をAIに任せ、どこを人が見るのか。利用ルールや研修も含めて、お客さんと一緒に設計します。

2つ目は、お客さんだけではできない部分です。高度な専門知識と、第三者としての検証。内製化が進むほど、ここの価値ははっきりします。

3つ目は、力の移転です。成果物を納めて終わりにせず、指示の書き方、確認の仕方、修正の履歴をお客さんの手に残します。仕事を減らす方向に見えて、長く頼られる関係につながります。

肝心なのは、動く速さです。代替が当たり前になってからでは、遅いからです。代筆の値段が下がる前に、助言・検証・力の移転へ軸足を移す。

消えるのは「代わりに書く」仕事で、残るのは、お客さんの手の届かないところを担う仕事です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 河内長野市の「脱コンサル」とは何ですか?

2027年度以降に作り始める行政計画を、生成AIを使って職員が主体で作る方針です。職員に戻すのは、基礎調査、データ整理、計画の骨子や素案づくりなどの工程です。外部を全部切る話ではなく、外注を工程に割る動きと読めます。

Q2. 脱コンサルで、コンサルの仕事はなくなりますか?

代筆や整理にあたる仕事は縮みますが、仕事そのものは消えません。専門助言、第三者の検証、繁忙期の応援という3つの役割は外部に残ります。買う対象が成果物から役割に変わる、というのが記事の見立てです。

Q3. 自治体が生成AIで計画を内製したとき、成功はどう測りますか?

外注費の減少だけでは測れません。費用、時間、品質、職員の力、知識の再利用の5つを、総合点にまとめず別々に見ます。費用にはAIの利用料、研修、資料の整備、出力の確認も含めます。


外注と内製の線引きを、実務を持ち寄りながら探っています。AIを徹底的に使いこなすためだけのコミュニティ「フロンティア・リーダーズ」:https://frontier-leaders.vercel.app/

2時間で、AI活用術を実践のハンズオンで学べます(過去回のアーカイブ):https://handson.workstyle-evolution.co.jp/

YouTube『いけともch』(毎週日曜15時にAIニュース):https://www.youtube.com/@iketomo-ch

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