
2025/07/23(水)
AIワークフローツールのDifyが、ついにMCP(Model Context Protocol)をネイティブサポートしました。これまでも外部ツールとの連携は可能でしたが、今回のアップデートにより、外部データやAPI、カレンダー、コードベースなどへのアクセスが格段に容易になりました。
私自身、この機能を実際に試してみて、その可能性の大きさを実感しています。従来であれば複雑なカスタム連携コードを書く必要があった作業が、MCPの標準化により大幅に軽減されるのです。
MCPとは、大型言語モデル(LLM)が外部データソースやツールと標準化された方法で連携するためのプロトコルです。Anthropicが2024年11月に提唱し、現在「AIアプリケーションのUSB-C」と呼ばれるほどの汎用性を持っています。
DifyのMCP対応には、主に3つの活用方法があります:
さらに注目すべきは、DifyのエージェントやワークフローをMCP標準のサーバーとして公開し、外部のMCPクライアントから呼び出せるようになったことです。これにより、Difyで構築したAIワークフローを、他のAIツールやアプリケーションから活用できるようになります。
目次
実際にMCPツールをDifyに追加する手順を、Zapier MCPを例に詳しく解説します。
まず、Difyの管理画面で「ツール」セクションに移動します。ここで「MCPで追加」というオプションが新たに利用可能になっています。
Zapier MCPの場合、専用のコネクトページからサーバーURLを取得できます。ただし、Zapierのページ構造上、検索から入らないと該当ページが見つけにくいという点は注意が必要です。
MCPサーバーを追加すると、そのサーバーが提供する個別のツールが自動的に認識されます。Zapier MCPの場合、以下のようなツールが利用可能になります:
これらのツールは、Difyの標準ツールと同様に、エージェントやワークフローで活用できます。
MCPツールをエージェントで使用する手順は、従来のツール追加と基本的に同じです。しかし、MCPツールならではの特徴もあります。
実際に作成したエージェントの設定例をご紹介します:
プロンプト設定:
「あなたはユーザーからの要望に対して、Zapier MCPを利用してSlackにメッセージを送信してください。次にNotionにページを作成してください。」
ツール構成:
このエージェントに「今日の横浜市の天気を調べて」と指示すると、以下の処理が自動実行されます:
実際にテストしたところ、Slackへの通知は正常に動作し、期待通りの結果が得られました。Notionについては、データ取得は可能ですが、ページ作成機能の動作には若干の不安定さが見られました。
エージェント以外にも、ワークフローでMCPツールを活用する方法があります。これにより、より細かい制御と複雑な処理の組み合わせが可能になります。
ワークフロー内では、MCPツールを個別のノードとして配置できます。例えば:
この方法では、各MCPツールの詳細な設定が可能で、パラメータの細かい調整や条件分岐の設定ができます。
より柔軟な活用方法として、ワークフロー内にエージェントノードを配置し、そのエージェントにMCPツールを追加する方法があります。
ただし、現在のところ、エージェントストラテジープラグインのバージョンによってはMCP対応していない場合があります。「エージェントストラテジープラグインバージョンダウンサポートMCPツール」というエラーが表示される場合は、プラグインのアップデートが必要です。
エクスプローラーマーケットで最新のエージェントストラテジープラグインを確認すると、新しいバージョンではMCP対応が明記されています。MCPのネイティブ対応が開始されたのが最近のため、まだ一部のプラグインでは対応が追いついていない状況です。
DifyのMCP対応で最も革新的な機能の一つが、自分で作成したワークフローをMCPサーバーとして外部に公開できることです。これにより、Difyで構築したAI機能を、他のAIツールから呼び出せるようになります。
ワークフローをMCPサーバーとして公開するには、以下の設定が必要です:
1. ワークフロー名は英語に
現状、ワークフローは英語で64文字以内にする必要があります。ワークフロー名が日本語になっているとエラーがでます。
2. サービスの説明とパラメータの説明
外部のLLMがワークフローを呼び出すタイミングを理解できるよう、ワークフローが何を行うかを簡潔に記述します。ここも日本語で書くとエラーになり、日本語にする必要があります。
公開されたMCPサーバーは、Claude等の対応クライアントから利用できます。Claudeの場合、以下の手順で接続します:
ただし、実際の運用ではいくつかの注意点があります:
DifyのMCP対応は非常に期待できる機能ですが、リリース直後ということもあり、いくつかの制限事項や不安定な部分があります。
1. 接続の不安定性
MCPサーバーとして公開したワークフローが、外部クライアントから正常に呼び出せない場合があります。接続は確立されるものの、実際のツール実行でエラーが発生することがあります。
2. 日本語サポートの不完全性
前述の通り、日本語での説明文が正常に処理されない問題があります。
3. プラグインバージョンの互換性
一部のプラグインでMCP対応が追いついておらず、機能制限が発生する場合があります。
DifyのMCP対応は、単なる新機能の追加以上の意味を持っています。これは、AIワークフローツール間の相互運用性を実現する重要な一歩と言えるでしょう。
現在でも、以下のような実用的な活用が可能です:
営業支援の自動化
Zapier MCPを活用して、CRMデータの更新、メール送信、Slack通知を組み合わせた営業プロセスの自動化が実現できます。
コンテンツ制作の効率化
外部データソースから情報を取得し、AIが内容を生成して、複数のプラットフォームに自動投稿するワークフローが構築できます。
カスタマーサポートの強化
顧客からの問い合わせを自動分析し、適切な回答を生成して、チケットシステムに登録するまでの一連の流れを自動化できます。
MCPの標準化が進むことで、AIエージェント同士の協調作業や、複数のAIサービスを組み合わせた高度なワークフローの構築が可能になるでしょう。
特に、DifyのワークフローをMCPサーバーとして公開できる機能は、AIワークフローのマーケットプレイスのような概念を実現する可能性を秘めています。優秀なワークフローを作成した開発者が、それを他の開発者と共有・販売できるエコシステムの構築も期待できます。
DifyのMCPネイティブサポートは、AIワークフローの可能性を大きく広げる画期的なアップデートです。現在確認できる主要な機能と特徴をまとめると:
現在は一部の不安定さや制限事項がありますが、これらは新機能特有の課題であり、今後のアップデートで改善されることが期待できます。特に、基本的なMCPツールの追加と活用については、すでに実用レベルで利用可能です。
MCPという標準プロトコルの採用により、DifyはAIワークフローツールとしての地位をさらに強固なものにしました。今後、より多くのサービスがMCP対応を進めることで、AIツール間の相互運用性が飛躍的に向上し、これまで不可能だった高度な自動化ワークフローの構築が現実のものとなるでしょう。
AIワークフローの未来を切り開くDifyのMCP対応。ぜひ実際に試して、その可能性を体感してみてください。
DifyがMCPをネイティブサポートしたことで、外部データやAPI、カレンダー、コードベースなどへのアクセスが容易になりました。特に、Zapier MCPを活用することで、Zapierが対応する7,000以上のアクションをDifyから直接利用できるようになり、AIワークフローの可能性が飛躍的に拡大します。
Difyの管理画面から「ツール」セクションに移動し、「MCPで追加」を選択します。サーバーURL、Dify内での表示名、設定内での識別子を入力してMCPサーバーを追加します。Zapier MCPの場合、専用のコネクトページからサーバーURLを取得できます。
DifyのワークフローをMCPサーバーとして外部公開する設定を行います。ワークフローの公開設定画面で、サービスの説明とパラメータの説明を記述します。公開されたMCPサーバーは、Claudeなどの対応クライアントからMCPサーバーURLを入力することで利用可能です。
現在のDifyのMCP実装では、サービス説明やパラメータ説明が日本語の場合、正常に認識されないことがあります。この問題を解決するには、説明文を英語に変更する必要があります。例えば、「AIに関する質問やキーワード」を「AI-related questions or keywords」のように英語で記述します。
DifyのMCP対応はまだ新しい機能のため、接続の不安定性、日本語サポートの不完全性、一部プラグインバージョンの非互換性などの課題が確認されています。今後のアップデートで改善されることが期待されますが、基本的なMCPツールの追加と活用については、すでに実用レベルで利用可能です。
Workstyle Evolution代表。18万人超YouTuber&『ChatGPT最強の仕事術』著者。
株式会社Workstyle Evolution代表取締役。YouTubeチャンネル「いけともch(チャンネル)」では、 AIエージェント時代の必須ノウハウ・スキルや、最新AIツールの活用法を独自のビジネス視点から解説し、 チャンネル登録数は18万人超(2025年7月時点)。