
2025/07/22(火)
Googleが2025年7月にリリースしたGemini Deep Thinkは、「最高レベルの高度な推論」を謳う新しいAIモデルです。従来のGemini 2.5 Proとは異なり、複数のアイデアを並列で検証し、段階的に思考を深めていく推論技術を採用しています。
私自身、このDeep Thinkモードを実際に試してみましたが、正直なところ、簡単なタスクでは劇的な効果を実感することはできませんでした。しかし、その過程で見えてきた特徴や、今後の活用可能性について詳しく解説していきます。
目次
Geminiのディープシンク機能は、様々なベンチマークにおいて、他の最高性能のモデルを大きく上回る結果を出しています。以下のように、数学やコーディングといった難しい問題においては、この機能は非常に有用なことは明らかです。
しかしながら、多くのビジネスパーソンは、このような高度な問題を解くことは稀で、より日常的なビジネスタスクへの活用を考えています。実際にそういったケースでは、どのような結果が出るのか試してみました。
まず、YouTubeの文字起こしから資料ドラフトを作成するという比較的シンプルなタスクで、Gemini Deep Think、ChatGPT O3、Claude Opusの3つのモデルを比較してみました。
結果として、Deep Thinkは処理時間が約3分と他のモデルより長時間を要しましたが、アウトプットの品質に関しては、他のモデルと比べて明確な優位性を感じることはできませんでした。「シンプルにまとまっている」という程度の印象で、処理時間の長さに見合うほどの品質向上は確認できませんでした。
この結果から、簡単すぎるタスクではDeep Thinkの真価は発揮されないと思います。
簡単なタスクでは差が見えなかったため、より複雑な経済分析タスクで再度比較を行いました。「1人当たり複数のAIエージェント利用が当たり前になった場合の日本経済への影響」という難しい論点について、各モデルに分析を依頼しました。
Claude Opusは以下のような構造的な分析を提供しました:
o3はより多角的で踏み込んだ分析を展開しました:
o3の考察は視覚的に整理されており、より深い情報を踏まえた分析を提供してくれた印象があります。
Deep Thinkは以下のような包括的な分析を行いました:
内容としては「いいことを言っている」という印象でしたが、やはりDeep Thinkの進化が明確に発揮されているかは判断が困難でした。
最後に、より技術的なタスクとして「HTML/JSの1ファイルでマインクラフトのような3D空間をキーボードで操作できるアプリケーション」の作成を各モデルに依頼しました。見た目や演出をできるだけ派手にし、ユーザー体験が非常に高いものを作成するという条件で比較しました。
この結果から、簡単なアプリ生成においてはまだClaudeに優位性があることが確認できました。ただし、Deep Thinkは端末対応していないため、コピーして使用する必要があるという制約もありました。
今回の検証では明確な効果を確認できませんでしたが、Deep Thinkが真価を発揮する可能性のあるタスクについて考察してみます。
2025年USAMO(アメリカ数学オリンピック)の難問で優れたスコアを達成しているという報告があります。複雑な数学的仮説の形成や探索において、並列思考技術により多角的な解決策を検討できる能力が期待されます。
LiveCodeBench(競技プログラミングベンチマーク)でトップクラスのパフォーマンスを示すとされています。アルゴリズム開発や複雑なコード生成タスクで、従来モデルより高度な推論能力を発揮する可能性があります。
複雑な学術論文の分析やデータ解釈において強みを示すとされており、特にマルチモーダル推論をテストするMMU(Multi-Modal Multi-Task Understanding)での高いスコアが報告されています。
Deep Thinkは確実に進化していると感じますが、現時点ではその効果を実感できるタスクが限定的です。しかし、以下の点で今後の可能性を感じています:
Deep Thinkは処理時間が長い分、より深い思考プロセスを経ています。時間をかけてでも高品質なアウトプットが必要な場面では、その価値を発揮する可能性があります。
今回は比較的簡単なタスクでの検証でしたが、数学問題や複雑なアルゴリズム設計など、より難易度の高いタスクでは明確な差が出る可能性があります。
Googleは継続的にモデルの改善を行っており、今後のアップデートでより幅広いタスクでの効果が期待できます。
Gemini Deep Thinkを実際に試した結果、以下のことが明らかになりました:
現時点では劇的な効果を実感することはできませんでしたが、Deep Thinkは確実に進化しており、今後難しい問題に直面した際の選択肢の一つとして活用していく価値があると考えています。特に、従来のAIモデルでは解決が困難な高度な推論問題において、その真価を発揮することを期待しています。
本記事の内容は、以下の資料も参考にしています:
Gemini Deep Thinkは、Googleが提供する「最高レベルの高度な推論」を謳うAIモデルです。従来のモデルとは異なり、複数のアイデアを並列で検証し、段階的に思考を深める推論技術を採用しています。複雑な問題解決や高度な分析に適しているとされています。
Gemini Deep Thinkは、複雑な数学問題、競技プログラミング、科学文献の解釈など、高度な推論能力が求められるタスクで真価を発揮する可能性があります。特に、従来のAIモデルでは解決が困難な、難易度の高い問題に適しています。
Gemini Deep Thinkは、他のモデルと比較して処理時間が長い傾向があります。簡単なタスクでは明確な優位性が見られない場合がありますが、複雑な推論が必要なタスクでは、その多角的な思考プロセスが役立つ可能性があります。一方、Claude Opusは簡単なコード生成で優位性があり、ChatGPT O3はバランスの取れたアウトプットを提供します。
Gemini Deep Thinkは、処理に時間がかかるため、本当に高度な推論が必要な場面でのみ使用することを推奨します。簡単なタスクでは、従来のGemini 2.5 Proや他のモデルを使用する方が効率的な場合があります。また、現時点では、その効果を実感できるタスクが限定的である点に注意が必要です。
記事内の検証では、簡単なアプリ生成においてはClaude Opusの方が優位性を示しました。Gemini Deep Thinkで生成されたコードは動作しない場合もありました。そのため、コーディングタスクの種類によっては、他のAIモデルの利用を検討する方が良いでしょう。
Workstyle Evolution代表。18万人超YouTuber&『ChatGPT最強の仕事術』著者。
株式会社Workstyle Evolution代表取締役。YouTubeチャンネル「いけともch(チャンネル)」では、
AIエージェント時代の必須ノウハウ・スキルや、最新AIツールの活用法を独自のビジネス視点から解説し、
チャンネル登録数は18万人超(2025年7月時点)。