
2025/09/12(金)
AI技術の急速な発展に伴い、これまでにない規模のインフラ投資が進行しています。2025年9月23日、OpenAI、Oracle、ソフトバンクグループが主導するStargateプロジェクトが、アメリカ国内に5つの新しいAIデータセンター拠点の建設を発表しました。この発表により、総投資額5000億ドル(約75兆円)、電力容量10ギガワットという史上最大級のAIインフラ計画が現実味を帯びてきました。
このプロジェクトは、AI業界における歴史的な転換点となる可能性があります。巨大なデータセンターの建設により、AIの計算コストが大幅に削減され、より多くの企業や個人がAI技術を活用できる環境が整うと期待されています。
目次
Stargateプロジェクトは、アメリカのAIインフラ構築を目的とした史上最大級の投資プロジェクトです。2025年1月にトランプ元大統領によってホワイトハウスで発表されたこの計画は、当初4年間で実施予定でしたが、予定を前倒しし、2025年末までに達成される見通しとなっています。
プロジェクトの主要パートナーは以下の通りです:
AI技術の進歩により、従来のデータセンターでは対応できない規模の計算処理が必要になっています。特に大規模言語モデル(LLM)の学習や推論には、膨大な計算リソースが必要です。
現在のAI市場の成長は驚異的で、世界のAIインフラ市場は2024年の472.3億ドルから2025年には602.3億ドルに拡大し、2034年までに約4,993.3億ドルに達すると予測されています。年平均成長率(CAGR)は26.60%という高い成長率を示しています。
Gartnerの予測では、世界のAI支出は2025年に約1.5兆ドル(約51兆円相当)に達するとされており、これは前年の9,879億ドルから大幅な増加を示しています。このような急激な需要増加に対応するため、大規模なインフラ投資が不可欠となっているのです。
Stargateプロジェクトの総投資額は5,000億ドル(約75兆円)という前例のない規模で、米国史上最大級のAIインフラ計画です。電力容量は最終的に10ギガワット(GW)に達する予定で、これは数百万世帯分の電力に相当する巨大な規模となります。
2025年9月23日の発表では、新たに5つのAIデータセンター拠点の設立が発表され、既存のテキサス州アビリーン拠点やCoreWeaveとの進行中のプロジェクトと合わせると、総計画容量は7GW近く、今後3年間で4,000億ドルを超える投資規模に達します。
10ギガワットという電力容量がどれほど巨大かを理解するために、具体的な比較をしてみましょう:
比較対象 | 電力容量 |
原子力発電所1基 | 約1ギガワット |
Stargateプロジェクト全体 | 10ギガワット(原発10基分) |
一般家庭の年間電力使用量 | 約800万世帯分 |
デロイトの予測によると、米国のAIデータセンターの電力需要は2024年の4ギガワットから2035年までに123ギガワットまで、30倍以上の成長が見込まれています。個別のAIトレーニング施設の電力需要は1ギガワットを超える場合があり、これは約80万世帯の年間電力使用量に相当します。
ギガワット規模のAIデータセンターにおける電力供給は、2025年現在、業界にとって最も重要な課題の一つとなっています。最大手のハイパースケーラーが建設・計画中の最大級データセンターは、現在稼働中の施設の2~4倍の容量を持ち、最大2ギガワット(2,000メガワット)の電力を必要とする予定です。
巨大AIデータセンターの冷却技術は前例のない課題に直面しており、従来の冷却手法では対応できない規模とエネルギー効率の問題が顕在化しています。最新のAIハードウェアは極めて高密度な実装となっており、1ラックあたり120キロワットもの電力消費を記録しています。
この膨大な電力消費により、データセンター関連の電気代の30%が機器を冷やすためのファンに使われている状況です。このような課題に対応するため、革新的な冷却技術の導入が進んでいます。
例えば、Microsoftの最新AIデータセンター「Fairwater」では、施設全体に閉ループの液体冷却システムを組み込んでいます。このシステムでは、冷却液を循環させるパイプをサーバーに直接接続し、熱を効率的に除去します。
Stargateプロジェクトのような大規模なAIインフラ投資は、AIの利用コストに大きな影響を与える可能性があります。大規模なデータセンターの建設により、以下のような効果が期待されます:
巨大なデータセンターでは、設備投資や運営コストを多数のユーザーで分散できるため、単位あたりの計算コストが大幅に削減される可能性があります。これにより、現在は高額なAI処理が、より多くの企業や個人にとって利用しやすい価格帯になると考えられます。
大規模なインフラにより、需要の変動に応じて柔軟にリソースを配分できるようになります。これにより、無駄な計算リソースを削減し、全体的な効率性を向上させることができます。
大規模な投資により、より効率的なハードウェアやソフトウェアの開発が促進され、長期的にはAI技術全体のコスト削減につながると期待されます。
Stargateプロジェクトは、AI業界における歴史的な転換点となる可能性を秘めた巨大なインフラ投資計画です。以下の要点を改めて整理します:
このプロジェクトの成功により、AI技術がより身近で利用しやすいものとなり、私たちの生活や仕事に大きな変化をもたらす可能性があります。今後の進展に注目していく必要があるでしょう。
本記事の内容は、以下の資料も参考にしています:
Stargateプロジェクトは、OpenAI、ソフトバンクグループ、Oracleが主導する、アメリカ国内のAIインフラ構築を目的とした大規模な投資プロジェクトです。総投資額は5,000億ドル、電力容量は10ギガワットに達する見込みで、AIデータセンターの建設を通じてAI計算コストの削減を目指しています。
Stargateプロジェクトは、OpenAIが運営責任、ソフトバンクグループが財務責任を担当しています。Oracleはデータセンター開発で重要な役割を担い、UAE投資会社のMGXも初期資金提供に参加しています。OpenAIとOracleは5年間で3000億ドルを超えるパートナーシップを締結しています。
Stargateプロジェクトの総投資額は5,000億ドル(約75兆円)です。これは米国史上最大級のAIインフラ計画であり、AIデータセンターの建設と関連技術の開発に充てられます。
はい、StargateプロジェクトによってAIの利用コストが安くなる可能性があります。大規模なデータセンター建設によるスケールメリット、効率的なリソース配分、技術革新の促進を通じて、AI処理の単位あたりのコスト削減が期待されています。
Stargateプロジェクトは当初の計画から遅延しており、2025年末までに少なくとも1つのデータセンターを完成させることを目標としています。2025年9月23日の発表では、プロジェクトは大幅に前倒しされ、2025年末までに総額5000億ドル・10ギガワットのコミットメントを達成する見通しです。
Workstyle Evolution代表。18万人超YouTuber&『ChatGPT最強の仕事術』著者。
株式会社Workstyle Evolution代表取締役。YouTubeチャンネル「いけともch(チャンネル)」では、 AIエージェント時代の必須ノウハウ・スキルや、最新AIツールの活用法を独自のビジネス視点から解説し、 チャンネル登録数は18万人超(2025年7月時点)。