ERNIE-4.5-VL:GPT-5級の画像推論を28Bパラメータで実現するBaiduの革新的オープンソースモデル - 生成AIビジネス活用研究所

ERNIE-4.5-VL:GPT-5級の画像推論を28Bパラメータで実現するBaiduの革新的オープンソースモデル

ERNIE-4.5-VL:GPT-5級の画像推論を28Bパラメータで実現するBaiduの革新的オープンソースモデル

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AI業界において、画像理解と推論能力の向上は常に大きな課題でした。特に、GPT-5やGemini 2.5 Proのような最先端モデルに匹敵する性能を、より軽量で実用的なサイズで実現することは、多くの企業や開発者にとって切実な願いでした。

そんな中、中国の検索大手Baiduが発表したERNIE-4.5-VL-28B-A3B-Thinkingは、この課題に対する画期的な解決策を提示しています。このモデルは、総パラメータ数28Bでありながら、実際の推論時には3Bパラメータのみを活用するMixture of Experts(MoE)アーキテクチャを採用し、GPT-5やGemini 2.5 Proに匹敵する画像推論能力を実現しています。

本記事では、このERNIE-4.5-VLの技術的特徴から実際の性能、そして日本語対応状況まで、詳しく解説していきます。

ERNIE-4.5-VLとは?革新的なMoEアーキテクチャの全貌

ERNIE-4.5-VLとは?革新的なMoEアーキテクチャの全貌

ERNIE-4.5-VL-28B-A3B-Thinkingは、Baiduが開発した最新世代のマルチモーダルAIモデルです。このモデルの最大の特徴は、効率性と性能の絶妙なバランスにあります。

従来の大規模モデルが数百億パラメータをフル活用するのに対し、ERNIE-4.5-VLは独自のMoE(Mixture of Experts)アーキテクチャにより、推論時にはわずか3Bパラメータのみを活性化します。これにより、推論速度は従来の同等性能モデルと比較して2-3倍高速化され、メモリ使用量も大幅に削減されています。

具体的な技術革新として、以下の要素が挙げられます:

  • 大規模視覚言語訓練:中間訓練段階で膨大な高品質視覚言語推論データを吸収
  • 深層セマンティック整合:視覚とテキストモダリティ間の意味的整合性を大幅に強化
  • 高度な強化学習:GSPOとIcePopストラテジーを組み合わせた動的難易度サンプリング
  • 強化された指示追従:視覚グラウンディング性能と指示実行能力を劇的に改善

GPT-5やGemini 2.5 Proとの性能比較:驚異的なベンチマーク結果

GPT-5やGemini 2.5 Proとの性能比較:驚異的なベンチマーク結果

ERNIE-4.5-VLの真価は、実際のベンチマーク結果に表れています。主要な評価指標において、業界トップクラスのモデルと肩を並べる、あるいはそれを上回る性能を示しています。

ベンチマークERNIE-4.5-VLGemini 2.5 ProGPT-5
MathVista(数学的視覚推論)82.582.781.3
ChartQA(チャート分析)87.176.378.2
VLMs Are Blind(視覚理解)77.376.569.6

特に注目すべきはChartQAでの圧倒的な優位性です。87.1というスコアは、Gemini 2.5 Proの76.3、GPT-5の78.2を大きく上回っており、複雑なチャートやグラフの分析において、ERNIE-4.5-VLが卓越した能力を持つことを示しています。

これらの結果が示すのは、単なる数値の優位性ではありません。実際のビジネスシーンにおいて、資料の読み取り、データ分析、視覚的推論といった実用的なタスクで、ERNIE-4.5-VLが極めて高い実用性を持つということです。

6つの核心機能:ERNIE-4.5-VLが実現する革新的能力

6つの核心機能:ERNIE-4.5-VLが実現する革新的能力

ERNIE-4.5-VLは、以下の6つの主要機能により、従来のマルチモーダルモデルを大きく凌駕しています。

1. 視覚推論(Visual Reasoning)

大規模強化学習により強化された視覚推論能力は、複雑な視覚タスクにおいて多段階の推論を可能にします。統計チャートの分析から因果関係の理解まで、人間レベルの分析結果を提供します。

2. STEM推論(STEM Reasoning)

写真から数学問題を解く、物理公式の認識と計算、幾何図形の分析など、理系分野での飛躍的な性能向上を実現。教育支援ツールや宿題採点システムなど、実用的な価値を提供します。

3. 視覚グラウンディング(Visual Grounding)

より精密な物体位置特定と柔軟な指示実行により、複雑な産業シナリオに対応。品質検査、自動運転の環境理解、ロボットの視覚ナビゲーションなど、幅広い応用が可能です。

4. 画像思考(Thinking with Images)

人間のように思考する革新的機能で、画像の詳細を自由にズームし、段階的に情報を抽出します。高解像度画像や詳細豊富な画像の処理において、認識精度を大幅に向上させます。

5. ツール活用(Tool Utilization)

画像検索、画像ズーム、外部知識ベースクエリなど、強力なツール呼び出し機能により、ロングテール知識の処理と包括的な情報検索を実現します。

6. 動画理解(Video Understanding)

優れた時間認識と事象位置特定能力により、動画の異なる時間セグメント間のコンテンツ変化を正確に識別。動画コンテンツの審査や監視動画分析に威力を発揮します。

日本語対応状況:実際の検証結果と活用可能性

日本語対応状況:実際の検証結果と活用可能性

私が実際にERNIE-4.5-VLの日本語対応状況を検証したところ、非常に高い日本語処理能力を確認できました。

日本語のExcelデータがアップロードされ、「これはどんなデータ?」と質問されているチャットボット画面
日本語Excelデータをアップロードして質問するERNIE 45 VLチャットボット

具体的な検証では、日本語のh表データを含む画像をアップロードし、その内容の読み取りと分析を依頼しました。結果として、年齢50以上の条件に該当するデータを正確に識別し、表の構造も完璧に理解していました。一部の数値に軽微な誤差はあったものの、全体的な精度は実用レベルに達しています。

さらに、日本語の組織図をマーメイド記法で出力するよう指示したところ、以下のような高精度な結果を得られました:

  • 株主総会、監査役、取締役会、経営企画、内部監査の階層構造を正確に認識
  • 人事部門とその下位組織(人事システム、情報システムの構築保守)の関係性を適切に把握
  • 日本語の専門用語や組織名を正確に読み取り

これらの結果から、ERNIE-4.5-VLは日本語環境での実用性も高いと判断できます。特に、資料の読み取りやデータ分析において、日本企業での活用可能性は非常に大きいと考えられます。

実装とデプロイメント:Apache 2.0ライセンスの商用利用メリット

実装とデプロイメント:Apache 2.0ライセンスの商用利用メリット

ERNIE-4.5-VLの大きな魅力の一つは、Apache 2.0ライセンスでの提供です。これにより、商用利用に関する法的障壁が大幅に軽減され、企業での導入がより現実的になっています。

デプロイメント要件

ただし、実際の運用には相応のハードウェア要件があります:

  • GPU メモリ:シングルカードデプロイメントで最低80GB必要
  • 推論フレームワーク:Transformers、vLLM、FastDeployに対応
  • 量子化オプション:8bit整数量子化(wint8)でメモリ使用量削減可能

実用的な活用シナリオ

ローカル環境でこの精度を実現できれば、以下のような革新的な活用が可能になります:

  • 資料の一括デジタル化:紙の資料を画像化し、構造化データに自動変換
  • 業務プロセスの自動化:視覚的な品質検査や文書処理の完全自動化
  • 知識管理の効率化:動画コンテンツからの自動字幕抽出と検索可能化

企業活用における具体的なユースケース

企業活用における具体的なユースケース

ERNIE-4.5-VLの能力を活かした具体的な企業活用例を見てみましょう。

製造業での品質管理

製造ラインでの視覚検査において、ERNIE-4.5-VLは欠陥部品の検出や安全装備の確認を自動化できます。検出結果をJSON形式の座標データとして出力することで、PLC(プログラマブルロジックコントローラー)やロボット制御システムとの連携も可能です。

研究開発支援

回路図や設計図の解析において、オームの法則やキルヒホッフの法則を適用した技術的検証を自動実行。初回品質保証や新入社員への技術説明資料作成にも活用できます。

動画コンテンツの知識化

研修動画や会議録画から自動的に字幕を抽出し、タイムスタンプと紐付けて検索可能な知識ベースを構築。特定のトピックが議論された正確な時間を瞬時に特定できます。

導入時の注意点と成功のポイント

導入時の注意点と成功のポイント

ERNIE-4.5-VLを実際に導入する際には、以下の点に注意が必要です。

技術的考慮事項

  • ハードウェア投資:80GB GPU要件は相応の初期投資を必要とします
  • データセットバイアス:ベンチマークと実際の業務環境の違いを考慮した検証が必要
  • 堅牢性の確保:視覚ノイズや照明条件の変化に対する対策が重要

ガバナンスと プライバシー

画像や動画データには機密情報が含まれる可能性があるため、厳格なアクセス制御、監査証跡、明確なデータ保持ポリシーの策定が不可欠です。

成功のための3つの質問

導入を検討する際は、以下の3つの質問に答えることをお勧めします:

  1. 活用されていない高価値な視覚・動画データはありますか?
  2. ハードウェア、ランタイム、ガバナンス要件をサポートできますか?
  3. ラベル付きサンプルがあるか、ERNIEKitでのファインチューニングに投資できますか?

これら全てに「はい」と答えられる場合、ERNIE-4.5-VLは有力な選択肢となります。

まとめ:オープンソースAIの新時代を切り開く革新的モデル

まとめ:オープンソースAIの新時代を切り開く革新的モデル

ERNIE-4.5-VL-28B-A3B-Thinkingは、単なる技術的進歩を超えた、AI業界のパラダイムシフトを象徴するモデルです。

主要なポイントを整理すると:

  • 効率性の革命:3Bパラメータ活性化でトップクラス性能を実現
  • 実用性の向上:Apache 2.0ライセンスによる商用利用の自由度
  • 日本語対応:高精度な日本語処理能力を確認
  • 多様な機能:視覚推論からツール活用まで包括的な能力
  • ベンチマーク優位性:GPT-5やGemini 2.5 Proを上回る性能指標

このモデルが示すのは、AIの未来が「より大きく」ではなく「より賢く、より効率的に」進化していくということです。企業にとって、高性能なマルチモーダルAIがより身近で実用的な選択肢となった今、ERNIE-4.5-VLは新たなビジネス価値創造の強力なツールとなるでしょう。

オープンソースの力により、これまで一部の大企業にしか手の届かなかった最先端AI技術が、より多くの組織で活用可能になりました。ERNIE-4.5-VLは、その先駆けとして、AI民主化の新たな章を開いているのです。

参考リンク

本記事の作成にあたり、以下の情報源を参考にしています:

📺 この記事の元となった動画です

よくある質問(FAQ)

Q1 ERNIE-4.5-VLとは何ですか?

ERNIE-4.5-VLは、Baiduが開発した最新のマルチモーダルAIモデルです。画像理解と推論に優れており、特に効率性と性能のバランスが取れている点が特徴です。独自のMoEアーキテクチャにより、推論時にはわずか3Bパラメータのみを活性化し、高速な処理とメモリ使用量の削減を実現しています。

Q2 ERNIE-4.5-VLはGPT-5やGemini 2.5 Proと比較してどうですか?

ERNIE-4.5-VLは、特定のベンチマークにおいてGPT-5やGemini 2.5 Proと同等、またはそれ以上の性能を示しています。特にChartQA(チャート分析)では、他のモデルを大きく上回るスコアを記録しており、複雑なチャートやグラフの分析において高い能力を発揮します。

Q3 ERNIE-4.5-VLは日本語に対応していますか?

はい、ERNIE-4.5-VLは非常に高い日本語処理能力を持っています。日本語のExcelデータや組織図を正確に読み取り、分析する検証結果が得られています。資料の読み取りやデータ分析において、日本企業での活用が期待できます。

Q4 ERNIE-4.5-VLは商用利用できますか?

はい、ERNIE-4.5-VLはApache 2.0ライセンスで提供されているため、商用利用が可能です。これにより、企業はERNIE-4.5-VLを自社の製品やサービスに組み込みやすくなっています。

Q5 ERNIE-4.5-VLを導入するにはどのようなハードウェアが必要ですか?

ERNIE-4.5-VLをシングルカードでデプロイメントする場合、最低80GBのGPUメモリが必要です。また、推論フレームワークとしてはTransformers、vLLM、FastDeployに対応しています。メモリ使用量を削減するために、8bit整数量子化(wint8)を利用することも可能です。


この記事の著者

池田朋弘のプロフィール写真

池田朋弘(監修)

Workstyle Evolution代表。18万人超YouTuber&『ChatGPT最強の仕事術』著者。

株式会社Workstyle Evolution代表取締役。YouTubeチャンネル「いけともch(チャンネル)」では、 AIエージェント時代の必須ノウハウ・スキルや、最新AIツールの活用法を独自のビジネス視点から解説し、 チャンネル登録数は18万人超(2025年7月時点)。

著書:ChatGPT最強の仕事術』(4万部突破)、 『Perplexity 最強のAI検索術』、 『Mapify 最強のAI理解術

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