AI技術の進歩により、1枚の画像から完全な3D世界を生成することが現実となりました。スタンフォード大学のAI研究者として知られるフェイフェイ・リー氏が設立したWorld Labsが開発した「Marble」は、単一の画像、動画、テキストプロンプトから高品質な3D空間を生成し、その中を自由に移動できる革新的なツールです。
従来の3D生成ツールとは一線を画すMarbleの最大の特徴は、生成された3D世界の精度の高さ、空間内での自由な移動、そしてレコード機能による動画素材化にあります。これらの機能により、不動産業界でのプレゼンテーション、ゲーム開発、映像制作など、幅広い分野での活用が期待されています。
本記事では、実際にMarbleを使用した体験をもとに、その驚異的な性能と具体的な活用方法について詳しく解説します。
目次
Marbleは、World Labsが開発したマルチモーダル世界モデルです。このツールの核心は、AI研究の「ゴッドマザー」と呼ばれるフェイフェイ・リー氏が提唱する「空間知能(Spatial Intelligence)」の概念にあります。

空間知能とは、AIが3次元空間を理解し、推論し、相互作用する能力のことです。従来のAIが主に2次元のデータ(画像、動画、テキスト)を扱ってきたのに対し、Marbleは現実世界と同様の3次元空間でAIが動作することを可能にします。
World Labsは2億3000万ドルの資金調達を完了しており、Andreessen Horowitz、NEA、Radical Venturesなどの一流投資家から支援を受けています。この巨額の投資は、空間知能技術の将来性と市場ポテンシャルの高さを物語っています。
Marbleの最も印象的な機能は、1枚の画像から空間全体を推測し、高精度な3D環境を生成する能力です。例えば、室内の写真を1枚アップロードするだけで、写真に写っていない部分も含めて完全な3D空間が生成されます。

この技術の背景にはGaussian Splattingという最新の3Dレンダリング技術が使用されています。従来のポリゴンベースの3Dモデリングとは異なり、数百万の小さな3Dガウシアン点を使用して、よりリアルで詳細な3D表現を実現しています。
実際の使用体験では、アニメ風の画像からファンタジー世界、写真からリアルな室内空間まで、様々なテイストの3D世界を高いクオリティで生成できることが確認されています。特に、建築物や室内空間の生成において、その精度は目を見張るものがあります。

生成された3D世界では、ユーザーは完全に自由に移動することができます。上下左右への移動はもちろん、空間の奥行きを感じながら探索することが可能です。
この移動機能の特徴は、単なる視点変更ではなく、実際に3D空間内を歩き回っているような体験を提供することです。例えば、生成された室内空間では、家具の裏側に回り込んだり、天井近くまで上昇したりすることができ、まるで実際にその場所にいるかのような感覚を味わえます。
ただし、元の画像から離れすぎると品質が低下する傾向があります。これは現在の技術的制約ですが、World Labsは将来的に無限に拡張可能な世界生成を目指して研究を続けています。
Marbleの革新的な機能の一つが、3D空間内での移動を録画し、動画素材として出力できるレコード機能です。この機能により、静的な3D空間から動的なコンテンツを生成することが可能になります。

レコード機能の使用方法は直感的です:
実際の使用例では、室内空間を下から上へとグインと上昇するような映像や、建物の周りを回り込むような動画を簡単に作成できます。生成時間は約5分程度で、プロ品質の映像素材が完成します。

実際にMarbleを使用した体験では、ミッドジャーニーで生成したファンタジーアートの画像を入力として使用しました。生成プロセスは以下の通りです:
| ステップ | 内容 | 所要時間 |
| 1. 画像アップロード | ファンタジーアートの画像を選択・アップロード | 数秒 |
| 2. 3D世界生成 | AIが画像を解析し、3D空間を構築 | 約5分 |
| 3. 探索・確認 | 生成された世界内を自由に移動して品質確認 | 任意 |
| 4. 動画作成 | キーフレーム設定とレコード機能で動画生成 | 数分 |
生成された世界は、元の画像のアニメ調の世界観を忠実に再現しており、画像に写っていない部分も自然に補完されていました。特に印象的だったのは、遠景まできれいに生成されており、空間の奥行き感が非常にリアルに表現されていたことです。

移動体験では、上下左右への移動がスムーズで、まるで実際にその世界に入り込んだような没入感を味わうことができました。ただし、元の画像から大きく離れた部分では、やや品質が低下する傾向が見られました。
3D生成AI市場には、Luma AIのGenie、Meshy.AI、3D AI Studioなど複数の競合ツールが存在します。しかし、Marbleは以下の点で他のツールと差別化されています:
多くの競合ツールがリアルタイムで環境を生成するのに対し、Marbleは持続性のある3D世界を生成します。これにより、一度生成した世界を保存し、後から再度アクセスすることが可能です。

Marbleは以下の形式での出力をサポートしています:

不動産業界では、物件の内見体験を革新する可能性があります。平面図や1枚の写真から完全な3D空間を生成し、顧客が実際に物件を訪れることなく没入感のある内見体験を提供できます。
建築設計においても、コンセプトスケッチから3D空間を生成し、クライアントとのコミュニケーションを向上させることができます。従来は専門的な3Dモデリングスキルが必要だった作業が、簡単な画像アップロードで実現可能になります。
ゲーム開発では、背景環境やレベルデザインの初期段階でMarbleを活用することで、開発時間の大幅な短縮が期待できます。コンセプトアートから直接プレイ可能な3D環境を生成し、ゲームエンジンに直接インポートすることが可能です。
VR/AR体験の制作においても、没入感のある環境を迅速に構築できるため、プロトタイピングから本格的な体験制作まで幅広く活用できます。
映像制作では、背景セットの生成や、実写では撮影困難なシーンの制作に活用できます。特に、カメラワークの精密な制御が可能なため、プロ品質の映像素材を効率的に制作することができます。
従来のAI動画生成ツールが抱えるカメラ制御の問題や一貫性の課題を、Marbleの3D空間生成とレコード機能が解決します。
Marbleは現在ベータ版として提供されており、無料プランも用意されています。料金体系は以下の通りです:
| プラン | 料金 | 主な機能 |
| 無料プラン | $0 | 基本的な3D世界生成、限定的な出力 |
| 有料プラン | 詳細未公開 | 高品質出力、商用利用、優先処理 |
現在はベータ版のため、アクセスには招待が必要です。公式サイトでアカウント登録を行い、招待を待つ必要があります。
World Labs「Marble」は、1枚の画像から高品質な3D世界を生成する革新的なツールとして、多くの産業に変革をもたらす可能性を秘めています。その主な特徴と利点をまとめると以下の通りです:
現在はベータ版段階ですが、無料プランも提供されており、実際に体験することが可能です。3D生成AI技術の最前線を体験したい方、業務での活用を検討している方は、ぜひ一度試してみることをお勧めします。
Marbleの登場により、AIは2次元の理解から3次元の空間知能へと進化の新たな段階に入りました。この技術が今後どのような革新をもたらすのか、その発展から目が離せません。
本記事の作成にあたり、以下の情報源を参考にしています:
Marbleは、World Labsが開発したAIを活用した3D空間生成ツールです。1枚の画像、動画、テキストプロンプトから高品質な3D空間を生成し、その中を自由に移動できます。不動産業界のプレゼンテーションや、ゲーム開発、映像制作など幅広い分野での活用が期待されています。
Marbleは、ガウシアンスプラッティングという最新の3Dレンダリング技術を使用しています。従来のポリゴンベースの3Dモデリングとは異なり、数百万の小さな3Dガウシアン点を使用することで、よりリアルで詳細な3D表現を実現しています。
Marbleのレコード機能を使用します。移動したい地点でキーフレームを設定し、複数のキーフレーム間でスムーズなカメラ移動を自動生成します。設定したカメラパスに沿って8秒間の動画を生成し、動画素材として出力できます。生成時間は約5分程度です。
Marbleは持続性のある3D世界を生成できる点が特徴です。一度生成した世界を保存し、後から再度アクセスできます。また、ガウシアンスプラット、メッシュファイル、動画ファイルなど、多様な出力フォーマットに対応しており、AIを活用した編集機能も備えています。
Marbleは現在ベータ版として提供されており、無料プランも用意されています。無料プランでは基本的な3D世界生成と限定的な出力が可能です。有料プランでは高品質出力、商用利用、優先処理などの機能が利用できますが、詳細な料金は未公開です。
Workstyle Evolution代表。18万人超YouTuber&『ChatGPT最強の仕事術』著者。
株式会社Workstyle Evolution代表取締役。YouTubeチャンネル「いけともch(チャンネル)」では、 AIエージェント時代の必須ノウハウ・スキルや、最新AIツールの活用法を独自のビジネス視点から解説し、 チャンネル登録数は18万人超(2025年7月時点)。