三菱UFJ銀行がOpenAIとの戦略提携を発表し、全行員3万5千人がChatGPT Enterpriseを利用する本格的なAI-Native企業への変革を開始しました。この動きは、みずほ銀行に続く3大メガバンクの2社目となるOpenAIとの大型提携であり、日本の金融業界におけるAI活用競争が新たな局面を迎えています。
この戦略提携では、単なるツール導入にとどまらず、OpenAIの専門家チームが現場に参加してサービス実装を並走支援する体制を構築。リテール分野での革新的な新サービス開発から、グループ全体15万人を対象とした振興イベントまで、包括的なAI変革プログラムが展開されます。
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三菱UFJ銀行の今回の取り組みで最も注目すべきは、その導入規模の大きさです。全行員3万5千人がChatGPT Enterpriseを利用するという規模は、日本の金融機関としては前例のない大型導入となります。
ChatGPT Enterpriseの標準料金は1人あたり月額60ドルですが、これほどの大規模導入では大幅な割引が適用されると考えられます。仮に半額の30ドルで計算した場合、月額費用は約105万ドル(約1.5億円)、年間では約20億円規模のツール費用となる計算です。
この投資規模は、三菱UFJ銀行がAI活用を単なる実験段階から本格的な事業戦略の中核に位置づけていることを明確に示しています。従来の部分的なデジタル化とは異なり、全社規模でのAI-Native企業への変革を目指す姿勢が表れています。

今回の提携で特徴的なのは、OpenAIから専門家チームが現場に参加し、サービス実装に向けて並走していく体制を構築することです。これは単純なライセンス提供を超えた、戦略的パートナーシップの形態と言えます。
この並走支援体制により、三菱UFJ銀行は以下のような効果を期待できます:
この体制は、FDE(Field Deployment Engineer)と呼ばれるOpenAIの専門チームが三菱UFJ銀行内にチームを立ち上げ、がっつりと並走していく形で実現されると想定されます。

三菱UFJ銀行は、リテールサービス「MUFG」において第3弾の展開として、4つの主要な取り組みを発表しています:
お客さまの相談に対応するAIコンシェルジュを導入し、24時間365日の顧客サポート体制を構築します。このサービスでは、顧客の金融状況や過去の取引履歴を踏まえた個別最適化されたアドバイスを提供します。
申し込みなどの手続きをAIで自動化し、顧客の利便性を大幅に向上させます。従来の複雑な手続きを簡素化し、必要な情報を自動で入力・処理する仕組みを構築します。
ChatGPTのアプリケーション内にMUFGのサービスを統合し、銀行残高の確認や各種対応が可能になります。これにより、顧客は慣れ親しんだChatGPTのインターフェースを通じて銀行サービスを利用できるようになります。
最も革新的な取り組みとして、エージェンティックコマースの展開があります。これは、AIが顧客の代理として商品やサービスの購入を行う仕組みで、インスタントチェックアウト機能により、シームレスな購入体験を提供します。
これらのサービスにより、顧客は自己投資のバランスを考慮した提案を受けたり、データに基づいた個別最適化されたサービスを享受できるようになります。

三菱UFJ銀行は、AI変革を支える基盤として大規模な投資を計画しています。600億円のデジタル投資に加え、3700億円をデジタル系スタートアップ企業への投資に充てる方針を発表しました。
この投資戦略の背景には、少子高齢化による後継者採用の困難さと人手不足の深刻化があります。AI利用者の増加により、これらの課題を技術的に解決し、同時に新たなビジネス機会を創出することを目指しています。
特に審査業務においては、ベテラン職員の熟練技術をAIで標準化・デスキル化することで、後継者育成の課題を解決し、キャリアチェンジの促進も図る計画です。

現在、3大メガバンクのうち2社がOpenAIとの提携を選択している状況です:
| 銀行名 | AI戦略 | パートナー |
| みずほ銀行 | クリスタルインテリジェンス導入 | SB OAI Japan(ソフトバンク×OpenAI) |
| 三菱UFJ銀行 | ChatGPT Enterprise全社導入 | OpenAI直接提携 |
| 三井住友銀行 | 検討中 | 未発表 |
残る三井住友銀行の動向が注目されます。同行がOpenAIを選択すれば3大メガバンク全てがOpenAIとなりますが、差別化戦略としてGoogleやAnthropicといった他のAIベンダーとの提携を選択する可能性もあります。
三井住友銀行は現在、アクセンチュアとの連携やマイクロソフトとの関係も報告されており、最終的にどのAIベンダーを選択するかが業界の注目を集めています。また、富士通との連携も報告されており、富士通の背後にあるAIベンダーとしてはカナダのCohere社との連携が確認されています。

三菱UFJ銀行の取り組みは、金融業界全体のAI活用トレンドを反映しています。McKinseyの調査によると、銀行業界はAIによる年間2000億~3400億ドル(営業利益の9~15%相当)の潜在的価値創出が期待されており、主に生産性向上によるものとされています。
特に注目すべき活用領域は以下の通りです:
これらのトレンドは、三菱UFJ銀行の戦略と高い親和性を示しており、同行の取り組みが業界標準を先取りしていることを示しています。

三菱UFJ銀行のAI-Native企業への変革は、単なる効率化を超えた競争優位性の構築を目指しています。全社規模でのAI活用により、以下のような効果が期待されます:
顧客体験の革新:AIコンシェルジュやエージェンティックコマースにより、従来の銀行サービスの枠を超えた新しい顧客体験を提供します。顧客は24時間365日、個別最適化されたサービスを受けることができ、金融機関との関係性が根本的に変化します。
業務プロセスの最適化:審査業務でのベテラン技術のAI標準化により、人的リソースの制約を克服し、より戦略的な業務に人材を配置できるようになります。これは、少子高齢化社会における持続可能な成長モデルの構築につながります。
新規事業創出:3700億円のスタートアップ投資と組み合わせることで、従来の銀行業務の枠を超えた新しいビジネスモデルの創出が可能になります。

三菱UFJ銀行のOpenAIとの戦略提携は、日本の金融業界におけるAI活用の新たなマイルストーンとなります。以下の要点が特に重要です:
この取り組みは、少子高齢化や人手不足といった社会課題に対するテクノロジーを活用した解決策として、他の金融機関や業界全体への波及効果も期待されます。AI-Native企業への変革を通じて、三菱UFJ銀行がどのような新しい金融サービスの形を創出するか、今後の展開が注目されます。
本記事の作成にあたり、以下の情報源も参考にしています:
三菱UFJ銀行は、OpenAIとの提携を通じて、AI-Native企業への変革を目指しています。具体的には、全行員へのChatGPT Enterprise導入、OpenAI専門チームによるサービス実装支援、リテールサービスにおけるAI活用などを通じて、顧客体験の向上、業務効率化、新規事業の創出を目指しています。
ChatGPT Enterpriseは、OpenAIが提供する企業向けのChatGPTサービスです。三菱UFJ銀行は、このサービスを全行員3万5千人に導入し、業務効率化や顧客対応の質向上を目指します。大規模言語モデルを活用し、自然な対話形式で様々な情報提供やサポートを行うことが可能です。
MUFGアプリ内で、AIコンシェルジュによる24時間365日の顧客サポート、AIによる申し込み手続きの自動化、ChatGPTアプリとの連携による銀行残高確認や各種手続き、AIが顧客の代理として商品やサービスを購入するエージェンティックコマースなどが展開されます。
三菱UFJ銀行は、AI変革を支える基盤として、600億円のデジタル投資と3700億円のデジタル系スタートアップ企業への投資を計画しています。これにより、AI技術の導入と活用を加速させ、新たなビジネス機会の創出を目指します。
OpenAIとの提携により、顧客体験の革新、業務プロセスの最適化、新規事業創出が期待されます。AIコンシェルジュやエージェンティックコマースなどの新しいサービスを通じて、顧客満足度を高め、人的リソースの制約を克服し、持続可能な成長モデルを構築することを目指します。
Workstyle Evolution代表。18万人超YouTuber&『ChatGPT最強の仕事術』著者。
株式会社Workstyle Evolution代表取締役。YouTubeチャンネル「いけともch(チャンネル)」では、 AIエージェント時代の必須ノウハウ・スキルや、最新AIツールの活用法を独自のビジネス視点から解説し、 チャンネル登録数は18万人超(2025年7月時点)。