コロプラのAI利用率9割達成の秘訣:5段階成熟モデルと心理的浸透戦略 - 生成AIビジネス活用研究所

コロプラのAI利用率9割達成の秘訣:5段階成熟モデルと心理的浸透戦略

コロプラのAI利用率9割達成の秘訣:5段階成熟モデルと心理的浸透戦略

スマートフォンゲームで知られるコロプラが、社員700名のうち9割がAIを活用し、3人に1人が業務量を半減させるという驚異的な成果を上げています。2022年からAI活用推進をスタートし、「あって当たり前の文化」として根付かせたその手法は、多くの企業にとって参考になる実践的なアプローチです。

AI導入において多くの企業が直面する「探索から運用への壁」を乗り越えるため、コロプラは独自の5段階成熟モデル4つの導入ステップ、そして6つの心理的浸透度モデルを構築しました。これらの体系的なアプローチにより、単なるツール導入を超えて、組織文化そのものを変革することに成功しています。

本記事では、コロプラの実践から学ぶAI導入の成功法則を詳しく解説し、あなたの組織でも応用できる具体的な手法をお伝えします。

コロプラが直面したAI導入の根本的課題

多くの企業がAI導入で躓くポイントは、技術的な問題ではなく「探索から運用への移行」にあります。コロプラも例外ではなく、この課題を克服するために体系的なアプローチを開発しました。

一般的なAI活用では、認識・探索段階までは比較的スムーズに進むものの、そこから実際の業務運用に移行する際に大きな壁が立ちはだかります。この壁の正体は、技術的な制約よりもむしろ組織の心理的抵抗や文化的な障壁にあることが多いのです。

AI活用の壁は「最新マシンを導入したジムに通っても、誰もトレーニング方法を変えない」状態に似ています。設備は整っていても、行動習慣が変わらなければ成果は出ません。

コロプラはこの課題を解決するため、技術導入と並行して社員一人一人の心理状態に着目し、段階的な浸透戦略を構築しました。その結果、現在では9割の社員がAIを活用し、そのうち5割が「ほぼ毎日」使用するという高い定着率を実現しています。

5段階成熟モデル:AI活用の全体像を把握する

コロプラが設定した5段階成熟モデルは、組織のAI活用レベルを客観的に評価し、次のステップを明確にするための指標です。

段階状態特徴
1. 認識AIの可能性を認識情報収集や基礎的な理解を深める段階
2. 探索小規模な実験開始パイロットプロジェクトや試験的な導入
3. 運用本格的な業務活用特定業務でのAI活用が定着
4. 体系化組織全体での活用共通ルールやプロセスの確立
5. 変革ビジネスモデル変革AI前提の業務設計や新たな価値創造

この5段階モデルの最大の価値は、「探索から運用への壁」を明確に可視化したことです。多くの企業が探索段階で足踏みしている現状を踏まえ、コロプラは運用段階への移行を重点的にサポートする仕組みを構築しました。

特に重要なのは、各段階で求められる取り組みが異なることを理解し、現在の組織がどの段階にあるかを正確に把握することです。これにより、次に取るべきアクションが明確になり、効率的なAI導入が可能になります。

4つの導入ステップ:段階的な組織展開戦略

コロプラは「探索から運用への壁」を乗り越えるため、以下の4つのステップを設計しました。

コロプラが採用したAI導入の4つのステップを示すフロー図。パイロット、ハブ、スポーク、統合の順に進む。
コロプラ式AI導入の4つのステップパイロットから統合まで段階的に展開

ステップ1:パイロット段階

小規模実験から始める段階です。特定の部門や限定的な業務でAIツールを試験的に導入し、効果を検証します。この段階では、失敗を恐れずに様々なアプローチを試すことが重要です。

例えば、まずはカスタマーサポート部門だけでAIチャットを試験導入。顧客対応時間の短縮効果を測定し、回答の品質をチューニングします。

ステップ2:ハブ段階

パイロットで得られた知見を基に、いくつかの部門で本格的な活用を開始します。この段階では、部門間での情報共有や成功事例の蓄積が重要な要素となります。

カスタマーサポート部門での成功を受けて、営業部や人事部など複数部門でもAI活用を開始。営業では見積り作成支援、人事では応募者スクリーニングに利用するなど、活用範囲を広げます。

ステップ3:スポーク段階

成功した取り組みを共通ルールとして標準化し、他の部門への展開準備を行います。ここでは、再現可能な手順やガイドラインの整備が必要です。

各部門で得られたノウハウを整理し、「AI活用ガイドライン」や「効果測定テンプレート」を作成。新たに導入する部門でも同じ基準で進められるようにします。

ステップ4:統合段階

標準化されたルールを基に全社展開を実施します。この段階では、組織全体でのAI活用が日常業務に完全に組み込まれた状態を目指します。

全社的にAIの運用基準が整い、同じ業務でのAI支援が当たり前に。社内研修や評価制度にもAI活用が組み込まれ、AIが“組織文化の一部”にします。

AI導入は「新しい授業スタイルを学校全体に広める」過程に似ています。1クラスで試す(パイロット)→学年全体に広げる(ハブ)→教員向けマニュアルを作る(スポーク)→全校で実施(統合)という流れで定着していきます。

この4段階のアプローチにより、コロプラは技術的な導入だけでなく、組織文化の変革も同時に実現しました。各段階で得られた学びを次の段階に活かすことで、リスクを最小化しながら確実な成果を積み重ねています。

6つの心理的浸透度モデル:社員の心理状態を可視化

コロプラが提唱するAIに対する社員の心理的浸透度を6段階で示すグラデーション図。無関心、傍観、抵抗、需要、活用、確信の各段階が示されている。
コロプラ式AIに対する6つの心理的浸透度モデル無関心から革新期への段階的変化

コロプラが特に重視したのが、社員一人一人の心理状態です。AI導入の成功は技術だけでなく、「全員が自分に関係があると感じる」ことが不可欠だと考え、以下の6段階の心理的浸透度モデルを構築しました。

段階心理状態特徴
1. 無関心AIに興味を示さない情報に触れる機会が少ない状態
2. 傍観他人事として見ているAIの存在は認識しているが自分には関係ないと感じる
3. 抵抗AIに対して否定的変化への不安や既存業務への愛着から抵抗感を持つ
4. 需要AIの必要性を理解メリットを理解し、使ってみたいと思う状態
5. 活用実際にAIを使用日常業務でAIツールを活用している状態
6. 確信AIの価値を確信AI前提で業務を設計し直すレベルの活用

このモデルの革新的な点は、各社員がどの心理段階にいるかを知ることがAI導入成功の一歩だと明確に位置づけたことです。技術的な準備だけでなく、人の心理面での準備も同様に重要であることを体系化しています。

コロプラでは、この心理状態を定量的に測定するため、以下の指標を活用しているとのことです。

  • AI関連研修参加率:学習意欲の測定
  • AIツール利用率:実際の活用度合い
  • AI活用による業務改善提案数:積極的な関与度
  • 経営層のAIに関する発言頻度:組織としてのコミット度
  • AI投資額の対売上高比率:経営的な優先度

これらの指標により、心理状態と組織的な状況を総合的に評価し、適切な施策を講じることができます。

トップダウン・ボトムアップ・ミドルアップダウンの多方向アプローチ

コロプラの成功要因の一つは、多方向からのアプローチを同時に実施したことです。

トップダウンアプローチ

役職者のAI活用率100%を実現し、率先して活用する姿勢を示しました。経営層が積極的にAIを活用し、その効果を発信することで、組織全体の推進力を生み出しています。

ボトムアップアプローチ

現場の社員が自発的にAIを活用し、その成果を共有する仕組みを構築しました。Slackのチャンネルや勉強会を通じて「AI使ってみた声」を積極的に共有し、実践的な知見を蓄積しています。

ミドルアップダウンアプローチ

中間管理職が上下双方向のコミュニケーションを促進し、組織全体でのAI活用を推進しています。この多層的なアプローチにより、組織のあらゆるレベルでAI活用が浸透しています。

さらに、広報やコミュニケーション活動を積極的に実施し、AI活用の成功事例や効果を組織内で広く共有することで、心理的な抵抗を軽減し、活用意欲を高めています。

革新期に到達した社員の特徴と業務変革

コロプラでは、活用者の4分の1が革新期に到達しており、これらの社員は単なるツール活用を超えて、AI前提の業務設計を行っています。

革新期の社員の特徴は以下の通りです:

  • AI前提の業務設計:既存の業務プロセスをAIの活用を前提として再設計
  • 新たな活用法の創造:従来の使い方にとらわれない独創的な活用方法の開発
  • 継続的な改善:AI活用による効果を測定し、さらなる改善を追求

これらの社員は、AIを「特別な存在」から「日常業務を支える道具」へと認識を変え、さらには「新しい体験を創造する手段」として活用しています。この段階に到達することで、業務効率の大幅な改善だけでなく、新たな価値創造も可能になります。

成功の鍵:定量的測定と定性的理解の両立

コロプラの成功は、定量的な結果と(おそらく)アンケートなどの定性的な情報を併用しながら、組織の状況を継続的に確認していることにあります。

具体的には、以下のような測定・評価を実施しています:

  • 利用率の定量測定:9割利用、5割がほぼ毎日使用という具体的な数値
  • 効果の定量測定:3人に1人が業務量半減という成果指標
  • 心理状態の定性評価:6段階の心理的浸透度による個人の状況把握
  • 組織文化の変化測定:「あって当たり前の文化」への変化度合い

この両面からのアプローチにより、現在の組織がどの水準にあるかを正確に把握し、次に取るべき施策を適切に判断できています。

まとめ

コロプラのAI利用率9割達成は、技術的な優位性だけでなく、体系的な組織変革アプローチの成果です。以下の要点を押さえることで、あなたの組織でも同様の成功を実現できるでしょう:

  • 5段階成熟モデルにより組織のAI活用レベルを客観的に評価し、「探索から運用への壁」を明確に認識する
  • 4つの導入ステップ(パイロット→ハブ→スポーク→統合)により段階的かつ確実な組織展開を実現する
  • 6つの心理的浸透度モデルにより社員一人一人の心理状態を可視化し、適切なサポートを提供する
  • 多方向アプローチにより組織のあらゆるレベルでAI活用を推進し、文化として根付かせる
  • 定量・定性両面の測定により現状を正確に把握し、継続的な改善を図る

AI導入の成功は、技術だけでなく「社員一人一人の理解」が鍵となります。コロプラの実践から学び、あなたの組織でも「あって当たり前のAI文化」を築いていきましょう。

参考リンク

本記事の内容は、以下の資料を参考にしています。

📺 この記事の元となった動画です

よくある質問(FAQ)

Q1 コロプラがAI活用で高い成果を上げている要因は何ですか?

コロプラがAI活用で高い成果を上げている要因は、技術導入だけでなく、組織全体の心理的な障壁を取り除くための体系的なアプローチにあります。5段階成熟モデル、4つの導入ステップ、6つの心理的浸透度モデルを構築し、社員一人ひとりの理解を深めることで、AI活用を文化として根付かせています。

Q2 AI導入における5段階成熟モデルとは何ですか?

5段階成熟モデルとは、組織のAI活用レベルを客観的に評価するための指標です。認識、探索、運用、体系化、変革の5段階があり、各段階で求められる取り組みが異なります。このモデルにより、組織がどの段階にあるかを把握し、次に取るべきアクションを明確にできます。

Q3 コロプラのAI導入における4つのステップとは?

コロプラでは、AI導入を4つのステップで段階的に進めます。まずパイロット段階で小規模実験を行い、次にハブ段階で複数の部門で本格活用を開始。その後、スポーク段階で共通ルールを標準化し、最後に統合段階で全社展開を実施します。このステップにより、リスクを最小限に抑えつつ、着実に成果を積み重ねることができます。

Q4 AIに対する社員の心理的浸透度を測る6つの段階とは?

コロプラは、社員のAIに対する心理状態を6つの段階で評価します。無関心、傍観、抵抗、需要、活用、確信の段階があり、各社員がどの段階にいるかを把握することが重要です。研修参加率やツール利用率などの指標を用いて心理状態を定量的に測定し、適切なサポートを提供します。

Q5 コロプラはどのようにしてAI活用を組織全体に浸透させたのですか?

コロプラは、トップダウン、ボトムアップ、ミドルアップダウンの多方向アプローチを採用しました。役職者が率先してAIを活用する姿勢を示し、現場の社員が自発的にAIを活用する仕組みを構築。さらに、中間管理職がコミュニケーションを促進することで、組織全体でのAI活用を推進しました。


この記事の著者

池田朋弘のプロフィール写真

池田朋弘(監修)

Workstyle Evolution代表。18万人超YouTuber&『ChatGPT最強の仕事術』著者。

株式会社Workstyle Evolution代表取締役。YouTubeチャンネル「いけともch(チャンネル)」では、 AIエージェント時代の必須ノウハウ・スキルや、最新AIツールの活用法を独自のビジネス視点から解説し、 チャンネル登録数は18万人超(2025年7月時点)。

著書:ChatGPT最強の仕事術』(4万部突破)、 『Perplexity 最強のAI検索術』、 『Mapify 最強のAI理解術

合わせて読みたい
関連記事

公式LINEで最新ニュースをゲット

LINE登録の無料特典
LINE登録の無料特典
icon

最新のAIニュース
毎週お届け

icon

生成AIの業務別の
ビジネス活用シーン

がわかるAIチャット

icon

過去のAIニュースから
事実を確認できる
何でもAI相談チャット

icon

ニュース動画
アーカイブ

ページトップへ