スペースX上場で見えた「俺しか持ってないデータ」最強説 - 生成AIビジネス活用研究所

スペースX上場で見えた「俺しか持ってないデータ」最強説

2026年6月11日 2026年6月11日 未分類

スペースX上場で見えた「俺しか持ってないデータ」最強説

6月12日(金)、いよいよスペースXが上場する。

時価総額は1.77兆ドル、日本円で約260兆円。テスラを上回り、世界トップ10に入る史上最大級のIPOだ。

ロケットで圧倒し、通信で儲け、AIに巨額投資し、SNSのXまで持つ。「結局この会社は何なのか?」

S-1(上場申請資料)を丸一日かけて読み込んだ尾原和啓さんに、いけとも(池田朋弘)が「夢」と「リスク」の両面を聞いた。

ポッドキャスト(いけとも尾原のディープなAIニュース)はこちら:https://open.spotify.com/episode/6qNpzYSBg5Mf5kNPWt0a8v

S-1資料が「楽しくて、楽しくてしょうがない」

いけとも:今週の金曜日、いよいよ巨額上場の第1弾、スペースXが上場します。これは尾原さんの得意領域かなと。この上場をどう見ているのか、AI市場への影響はどうなるのか、考えていきたいです。

尾原:いいテーマですね。上場する時って、たくさんの投資家に「この会社が将来成長するのか」を判断してもらうために、大量の資料が開示されるんですよ。

この資料が本当に楽しくて、楽しくてしょうがなくて。一日これで溶けましたね、スペースXに関しては。

いけとも:写真も豊富で、ビジュアルに訴えてくるロマン溢れる資料でしたよね。

簡単に概要を紹介すると、まず注目したのは規模感です。1135ドルの決め打ちで、株価が最初から固定されているんですよね。普通は投資家がいくらで買うか探りながら決めるらしいんですけど、スペースXは「この金額で行くぞ」と。

その結果、時価総額が約1.77兆ドル。日本円で約260兆円です。日本で今一番のソフトバンクグループが約49兆円なので、遥かに上回る超巨額上場。世界ランキングでもテスラの上、世界トップ10に入る金額です。

尾原:はい、そうですね。

いけとも:スペースXは事業が大きく4つあります。宇宙船事業、それを使った通信のスターリンク事業、AIのGrok(xAI)、SNSのX。

我々はAI業界を扱うチャンネルなので、これからOpenAI、Anthropicが来る中での「巨額AI上場第1弾」でもあるんですが、それ以外の事業もある。これをどう捉えるべきなのか、めちゃくちゃ聞きたいですね。

打ち上げ650回超・99%成功。質量シェアは8割

尾原:AIの話を深掘る前に、まずスペースXの規模感をちゃんと認識したほうがいいので、3つの観点で話しますね。

まず「2.8兆円も売上あんのかよ」という規模のデカさ。スペースXの2025年の売上は約187億ドル、日本円で約2.8兆円です。

しかもエグいのが、宇宙にロケットを上げて人工衛星などを放つという打ち上げ産業で、軌道に運ぶ質量ベースのシェア8を占めているんです。

ニュースを見ていると「ロケットの発射が失敗しました」みたいなところがフィーチャーされるんですけど、実はファルコンシリーズはもう650回以上飛んでいて、99%以上成功している。そんな規模感までもう来てるんだ、という話が1個目。

そして、ロケット産業をベースにしながら作っている「通信」という2段階目の話があって。

スペースXは通信衛星をもう1万基以上射出していて、世界の全稼働衛星の約3分の2をスターリンクが占めている。衛星インターネットのシェアも約8割。通信が寡占状況にあるんです。

ただ1個だけ、前提条件として置いておかなければいけないのは、私たちは投資の専門家ではないので、今日この後話すAIの未来やスペースXの未来の話は、決して投資アドバイスではないです。

いけとも:はい。

尾原:S-1という彼らの資料を見て直感的に思ったのは、未来はめっちゃあるし、良いポジションにいるんだけど、あまりにも資本構成が脆弱で。

上場から数ヶ月で、ロックアップ対象株の3分の1ぐらいが売られるかもしれない構造なんですよ。ディープテック企業で資本を集めてきたからしょうがないんだけど、こんなに短期間で株が売られるかもしれない上場って、なかなか珍しい。

「未来が圧倒的に良いポジションにある」ことと「資本ポジショニングの脆弱性」、この両方を持った上場って面白いなと。だから、あんまり加熱しすぎない方がいいんですよ、というのが尾原の見解ですね。投資アドバイスじゃないです。

火星に100万人移住したら、イーロンに株式報酬

いけとも:なるほど。じゃあ、まずは夢の方からいきますか。

スペースXって、ロケットを出しながら、稼いでいるのは通信で、ガッツリGrokとかAIに投資をしていて。「結局この会社は何なの?」と思う人がいると思うんですけど、尾原さんはどういう会社だと捉えていますか。

尾原:あくまでイーロンがスペースXに掲げた夢は、「地球だけに人類がいるのは持たなくなる」なんですよ。

このままエネルギーや地球の資源を使っていくと、2030年ごろには地球2個分の資源が必要になる、というWWFの推計もあります。だからこそ人類は、火星なり他の惑星に住める状態を作らなきゃいけない。

人類を「複数の惑星に住める種」にすること。これがあくまでスペースXの目的なので、「これが本当に叶えられる」というところが結構見えてきてるな、というのがスペースXから逆算して見える未来だし。

今回、資料を見てて笑えたのが、イーロン・マスクが成果を実現していくと報酬がもらえる形にテスラもスペースXもしてるんですけど、スペースXの最終的な株式報酬が面白くて。

火星に100万人が住めるようになったら、彼はスペースXの株式報酬がもらえるんですよ。しかもS-1自身が、この目標を「達成困難(improbable)」と書いている。

いけとも:(笑)。それ、最高ですね。

尾原:これが最高だなって。改めて狂ってるなと思うのが一方で。

いけとも:その成果って、イーロン・マスク個人なのか、代々受け継がれるような成果報酬になっているのか。結構先じゃないですか。とはいえ彼、たぶん52歳とかのはずなんで、生きているうちに取る報酬として設定されているのが、ちょっとなんだろうと思って。

尾原:これ、イーロンも真剣に信じてる話として。人間って不老不死になるじゃないですか。

それは2つの方向性があって。そもそも人間が老いるというメカニズムを発見できるので、人間を老いなくする、ないしは若返りさせることが、彼が健康なうちに実現するだろうという確率が結構高いというのが1個目。

2個目が、もし身体的な自分がダメになったとしても、電脳空間にイーロン・マスクをアップロードすることによって、電脳空間の中で生き続けるということをイーロンは信じているので。

どっちかというと、S-1資料の中に「イーロンが電脳空間に送り込まれたものでも、報酬が提供されるのか」という定義が書いてなかったのが、ちょっと心配になりましたね、今ね。

いけとも:めちゃくちゃ面白い。死とは何なのか、みたいな。そこまであれなんですね。

「俺しか持ってないデータ」を握る会社

尾原:そもそもスペースXは、ぶっ飛んだ未来を前提にしている会社です、ということが大きいんですが。

結果として、その中間形態として、650回以上打ち上げて99%以上ミッション成功してるから、1万基以上の通信に適した軌道の人工衛星をぶち上げてて。世界の全稼働衛星の約3分の2をイーロン様が占めてしまっているという事実ですよね。

結果的に何が起こるかというと、世界最大の衛星通信キャリアであり、世界最大の通信衛星網を通して地球を細かく観察できるという、物理データを得る会社であり。

かつ、その中にxAIとセットで、Xという1日約5億件投稿されるリアルタイムコミュニケーションデータベースも持っちゃってるから。

結果的にイーロン・マスクは、AIの観点から考えたときに、物理状況とサイバー空間の言説という、この2つの「俺しか手に入れられないデータ」を手に入れている会社になっていることの方が、僕にはビビるって感じですよね。

いけとも:なるほど。GoogleがGmailとかワークスペースでしか得られないデータを持っているのと同じように、スペースXも相当な独自データという強みを保持している状況にあるわけですね。

尾原:そうです。これからインターネットにつながれない残り約20億人の方々の、インターネット通信のプロバイダーになる可能性は十分にあるし。

何よりも、Xという言説空間でどういうオピニオンが作られていくかという場所のリアルタイムデータは、スペースXしか扱えない。

さらに言うと、これから本当に人間が月や火星みたいなところにどんどん活動範囲を広げていくと、月の資源を採掘する時の月の情報や、火星に移住していく過程にある火星の状況みたいなデータって、スペースXしか手に入らないわけですよね。

さらに今はやってないんですけど、ここにテスラがくっついて「Xカンパニー」みたいな話になると。世界で一番、自動運転が街中を走り回ってる。移動する監視カメラですからね、テスラ。

そうすると、「地球上にあるあらゆるデータって、いいのしか持ってないんじゃないの?」な話になる状況に、限りなく近くなってるということですよね、今。

いけとも:なるほど。今の話で言うと、地球上のデータもありますし、フィジカルAIと言われてますけど、その先はスペースAIというか。宇宙空間で100万人が生活している時の、様々なインフラを扱うためのデータを全部スペースXが持っていて、それがなければ新しい生活スタイルが実現しないみたいなことになるわけですよね、先々の夢としては。

尾原:そう。今はAIのフロンティアモデルとして「最先端のAIすげー」ってみんな驚いてるけど、一方で厳然たる事実として、最新のAIの性能って3ヶ月から半年で追いつけるんですよね。

そうすると、金さえありゃ半年で追いつけるということは、「俺しか持ってないデータ」を持っているところの方が、最終的には強くなっちゃうわけですよね。

さっき言ったように、世界の稼働衛星の3分の2と、8割ぐらいの衛星通信のシェアをもう握っていて。

かつXって、なんとなくみんな昔のイメージでいるけど、AIが入ったことでものすごく良いメディア化がされていて。新しい情報がすぐにキャッチアップできるメディアとして、アメリカの中で「読む方」のユーザーが1億人を超えたので、あれはもうパブリックメディアなんですよ、Xって。

1人あたりの利用時間も1日約31分と、Threads(約8分)を圧倒していますから。

いけとも:えー、そうなんだ。知らなかった。

AnthropicとGoogleから、年間3.5兆円のデータセンター契約

いけとも:次のビジネスの話で言うと、スペースXの売上のメインはスターリンクですよね。スターリンクの売上が約114億ドル、1.7兆円くらいで、めちゃくちゃ黒字を出しちゃうんですよと。

それに加えて直近の発表として、スペースXはデータセンターを持っていて、これをAnthropicやGoogleに貸し出す事業を最近始めたと。

この規模が、Anthropicが年間150億ドルで約2兆円。Googleが年間110億ドルで約1.5兆円。2つ足したら今の売上を超えてるくらいの契約が、この1、2ヶ月でバンバン発生していて。データセンター事業としても結構な規模に一気になっちゃってるじゃないですか。

さらにその先、データセンターは宇宙空間に行くであろうと。宇宙データセンター、そこでできるのはスペースXだけってことで、AIを使うためのインフラ事業としても一歩リードというか、でかく立っている感じがするんですけど、これどうなんですか。

尾原:一歩じゃないんですよね。

なんでスペースXがAnthropicやGoogleにAIインフラを貸せるかというと、イーロンがテスラで磨いた「物理インフラを作ることの徹底力と速さ」なんですよ。

実際、NVIDIAからしてみても、スペースXが一番早くAIデータセンターを作れるから優先していろんなことをやる、みたいなところがあって。

例えばわかりやすい話で、10万GPU級の新規のAIデータセンターって、普通だと作るのに数年かかるんですよ。これが困ったことに、xAIのColossusはなんと122日で稼働させちゃったんですね。しかもその後、92日でGPUを倍に増やしている。

いけとも:えぇー。なんでそんな早くできるんですか。

尾原:いくつかあって。そもそも物理的な建物は既存にあるものを活用し、もともとテスラで工場設計をしたノウハウがあるので、既存の建築インフラの中で最も効率よくAIデータセンターにするにはどうすればいいか、をAIを使って最適化することがアホみたいにうまいですよね、という話とか。

あともう一つでかいのが、結局AIを動かすのは電力インフラが大事なので。テスラはそもそも蓄電池の塊ですから、電力インフラを扱う技術者がむちゃくちゃいるし、知見もある。

実際Colossusでは、送電網の接続を待たずに、トラックで運べる移動式発電機を大量にかき集めて初期電力を確保して。さらにテスラの大型蓄電池Megapackを200基以上ずらっと並べて、AI特有の電力の急変動を吸収しながら動かし続けたんですよ。

いけとも:すごいパワープレイで(笑)。なるほど。

尾原:このイーロン・マスクの、エグいまでにスケールアップするためにシンプリファイしていくところが、実はコアなんですよね。

スペースXのS-1の中に、彼らがどうやれば物理的にスケールアップが最短距離でできるのかという徹底ぶりが書いてあって。その章だけでもぜひ読んでください。めちゃくちゃ、これからの「物理にAIが入っていく世界」の教科書みたいなことが書いてあるんで。

いけとも:宇宙データセンターは、宇宙船に乗せたものがうまく稼働するかどうかが重要で、これまだわかんないじゃないですか。だからその前段で、データセンター建築屋としても超一級というか、すごいノウハウですよね。

尾原:そうです。要は、巨大インフラをアホみたいに効率的に、アホみたいに早く作る企業遺伝子こそが、スペースXの一番の強みになっていて。

いけとも:そう考えると捉え方が変わってきますよね。今、不動産を買ってデータセンターを建てるプレイヤーが多数あって、この1年ぐらいで評価が上がってると思うんですけど、そういう部分もスペースXの一つのバリューの出し方としてありえちゃうわけですね。

尾原:そうなんですよ。いろんなところにそういう哲学がちりばめられていて。

申請資料だから嘘を言ってないと思うんですけど、例えばスペースXのロケットって、会計上は25回までしか使えないという形で処理してあるんですけど、「物理的には40回以上使えるから」みたいなことがサラッと書いてあったりとか。実際、今年の6月には1機のブースターが35回目の再利用に成功してたりとか。お前らどこまで品質突き詰めてんだ、みたいな話があったりとかしますし。

あと、宇宙AIデータセンターに関しては、正直僕はまだダウトなところがあるんですけど。

みんな「宇宙で冷やすから、めちゃめちゃ効率よく冷やせるんだ」って言いますけど、真空の中って空気が滞留しないので、むしろ宇宙の方がデータセンターは熱がこもる。どうやって熱廃棄を電力を使わずにするんだっけ、という物理機構を作るのがめちゃめちゃ大変なんで、そんな簡単にできるもんじゃないですからね。

ただ、さっき言ったようにスペースXの哲学だったら、やっちゃうんだろうなというのが1個目だし。

あと、AIデータセンターになると、熱を放熱しなきゃいけないから衛星がでっかくなるんですよ、絶対に。そうすると今作ってるファルコン9じゃ多分無理なんですね、本当にビジネススケールするレベルでAI宇宙データセンターを作るには。

そうすると、今作ってるスターシップのV3が、ファルコン9の積載量の4ぐらいまで行くので。スターシップV3ができたら、多分本質的にバンバンスケールアップするAI宇宙データセンターができちゃうという話になってくる。

みんななんとなくアマゾン創業者ベゾスのブルーオリジンとかを競合とか言ってるけど、ブルーオリジンのNew Glennはファルコン9の2倍ぐらいの積載量までは来てるものの、スターシップ級には遠く及ばないから、はっきり言って競合があんまりいないんですよ、スターシップレベルになってくると。

いけとも:いやー、面白い。

尾原:すいません、ちょっとAIの話じゃないとこ多いんですけど、尾原、宇宙マニアなので。

通信の3倍、AIに1.8兆円。「バランスの悪さ」が怖い

いけとも:めちゃくちゃ面白い夢を聞いたんですけど、別の方も聞いておきたいですね。とはいえ「財務が脆弱だろう」みたいな話もあったかなと。これはどんな風に見られてるんですか。

尾原:まず、「このような良い論じゃなきゃ許されないだろう」っていう。さっき言ったように、通信が今めちゃくちゃ儲かってきてるわけですよ。

で、このスペースXの設備投資費用の内訳が、通信が41億ドルに対して、ロケットのセグメントですら38億ドル。つまり6000億円ぐらいですよ。

それに対して、AIのセグメントには3倍の127億ドルも投下してて、1.8兆円ですよ。何ちゅうバランスの悪さなんだという話で。

論理的に外の投資家から見たら。ロケットの射出で圧倒的なシェアを占めているから、通信の部分で8割のシェアを占められるという優位性を確保してるんだから、そこをきっちり儲かるようにして、通信事業でまず世界を席巻しろよと。

そこに対して、3倍の金額をAIにボワーンと突っ込んでしまって、「ここが赤字垂れ流してもいいですよ」みたいなことを平気でやるところは、やっぱりイーロンの頭のおかしさであり。

実際、スターリンクは営業黒字なのに、AI部門の赤字でスペースX全体では最終赤字ですからね。

逆に言うと、ロケット事業と衛星通信事業は圧倒的なシェアを占めていて、ここに追いつくのは結構時間がかかるので、ここが収益を上げてくれるから、AIにもっともっと金を突っ込めると多分見込んでると思うんですよね。

Googleが「検索」というむちゃくちゃキャッシュカウがあるからAIにバンスカお金を突っ込めるのに対して、OpenAIとAnthropicはAIそのもので儲けなきゃいけないから上場を急ぐというのもあるし。

Anthropicに関しては、収益性が高いB2Bにまずフォーカスすることで、きちんと収益性を担保しながら成長する、みたいな「収益性と投資のバランス」をみんな葛藤してるのに。

スペースXは「宇宙とくっつければいいんじゃないか」ということで、ポイっとそこをジャンプしてしまう。その凄さであり、夢があるんだけど、そこってちょっと怖えよな、というところが1個目ですね。

売上の94倍。「上場直後の株価で判断するな」

いけとも:時価総額もあれですよね。本来のバリュエーションではありえないぐらいの、超強気設定をしてるなと見てるんですけど。

尾原:繰り返すんですけど、僕は投資アドバイスではないので、投資としての判断ではないんですけれども。

今回の時価総額は、わかりやすい事実として、現状の売上に対して評価額が94ですね。つまり、今の売上だと94年分やらないと評価額に到達できない。

投資として算定できる調整後EBITDAで言うと約266倍。つまり266年分の利益でようやく評価額に合う、というぐらい。

本当に倍々ゲームどころじゃないレベルで利益額が上がっていくシナリオにならないと実現できないぐらいの時価総額を、彼は設定していて。

ただ、さっき言ったように、衛星通信事業はそろそろ追いつくプレイヤーも現れ始めてるけど、少なくとも宇宙AIデータセンターみたいなものを作れるぐらいのペイロードのロケットの規模感を作れる会社が、この後追いつけるのかというと「何年かかるんだろうね」というレベル感なので。このバリュエーション、合うんかな、どうなんかな、というところですね。事実を並べていくと。

一方で、最初に「脆弱性」って言ったのが。

当然これだけの規模感の投資を集めての上場なので、上場に至るまで大量の投資を集めてますから。こういった方々が、上場した後にすぐ「株を売っていいよ」となると株価が大混乱するので。

一般的には180日間、機関投資家や上場前に持ってた人たちは株を売らないで保持しようね、ということが多かったり、短くても90日だったりするんですけど。

今回ちゃんと読んでみると、最初の四半期決算の発表直後、つまり8月頃からロックアップ対象株の20%が解禁されて、そこから段階的に売っていっていい。9月中旬までに対象株の約3分の1が「売っていいよ」という状態になるんですよ。

ちなみにイーロン本人と主要株主は366日間売れない設計なので、そこは安心材料なんですけど。

将来の夢で持ち続けてくださる機関投資家の方もいるんでしょうけど、それなりに株価がついちゃったら、いろいろ起こりますよね。

そういうところで、上場直後の株価で「やっぱスペースXダメだった」って思わない方がいい、というのが僕のアドバイスですね。

いけとも:なるほど。先々のものとは違うわけですね、短期的には。

尾原:うん。これ、Amazonにめっちゃ似てますよ。Amazonも、上場の時から「短期的な利益よりも長期的な市場リーダーシップを優先する。当面は赤字が続く」と宣言して上場した会社ですからね。

黒字にする暇があったら、国際展開とか領域展開した方が絶対いいと思うんで、実際に通年で黒字化したのは上場から6年後ですから。

それに似た匂いをすごく感じる資本構成だったりするので。上場直後の株価は良いとして、決算発表後ぐらいから株が何かおかしなことになっても、「やっぱスペースXダメだった」とか言わない方がいいよ、というのがアドバイスですね。すみませんね、マニアなもんですから。

いけとも:いや、面白い。

この後、9月から年末にかけてはOpenAIやAnthropicの上場も行われると言われていて。スペースXはAI銘柄だけじゃない面もあるので、これだけで何かが決まるわけではないと思うんですけど、その後の上場の整備や株価によっては、また投資がすごい増えるのか、逆転するのか。このあたりが注目ポイントかなと個人的には思ってます。

尾原:そうですね。OpenAIは6月8日に、Anthropicはその1週間前に、上場申請に向けての書類を非公開でSECに提出済みなので。普通であれば2ヶ月後ぐらいに、もろもろの書類が公開されると思うので、それがあればまた解説したいと思いますし。

スペースXのIPOは調達額だけで750億ドルと史上最大。時価総額は、全世界の年間スタートアップ投資総額の3倍を超える規模なので。当たり前ですけど、スペースXに投資が大移動するって話になりますから、他の株価もいろんなことが起こりますから。そういうことはちゃんと考えておいてくださいね、という話と。

あともう一つ。これだけの時価総額になってくると、スペースXもOpenAIもAnthropicも、いずれS&P500の中に組み込まれることになる。

S&P側は今年6月に「メガキャップ向けの早期組み入れ特例」を見送ったので、ルール上、最短でも上場から12ヶ月はかかるんですけど。

イーロンは最初から考えてるんじゃないかと思うんですけど、S&P500に組み込まれると、世界中のインデックス投資が自動的にスペースXに投資することになるんですよね。

しかもスペースXの時価総額だと、S&P500の中の時価総額配分に合わす形でインデックス投資が投資してくれるので、世界中のインデックス投資の金が勝手にイーロンのところに集まる構造が生まれてくるので。そういうことも含めて、いろいろ長期で考えようね、みんな。アドバイスにならないよ、投資は。

S-1資料を「分析に昇格」させるプロンプト術

いけとも:スペースXの資料も公開されてまして、NotebookLMとかに入れると、いろんな形式に変換しながら議論できるわけですからね。

尾原:楽しいよー。最後に、ちょっとしたプロンプトのコツをやって終わりたいんですけど。なんかあります? いけともさん、こういう資料を見るときのコツ。

いけとも:僕は難しい内容は、まずスライドとかインフォグラフィックで全体を理解する。どうしても入ってこなかったら音声にする。流し聴きしといて、なんとなく見る気になってから見に行こうと。プロンプトというより変換形式としてですね。

尾原:尾原がよくやるのは。とりあえず読むのは、要約とかに変換できるじゃないですか。でも「要約から分析に昇格する」ことが大事で。

僕がよく使っているプロンプトは、「ソースの中の複数箇所をピックアップしないと見えてこない仮説分析を20個作ってください」というのをやります。

そうすると、特にNotebookLMとかでやると、「ここの部分とここの部分から情報を取ると、こういうことが見えるんじゃないですか」みたいなことを教えてくれるので。結構面白い分析の仕方になるので、皆さんも試してください。

英語の資料で120ページくらいあるんですけど、AIを使えば要約だけでも楽しめるものなので。これを機会にね。ダウンロードできるPDFですから、楽しんでいただければと思います。概要欄にS-1資料のリンクを貼っておきますので。

いけとも:ありがとうございます。早速、終わった瞬間にやってみようと思います、このプロンプト。

尾原:はい、やってみてください。

いけとも:本日もありがとうございました。大変参考になりました。

ポッドキャスト(いけとも尾原のディープなAIニュース)はこちら:https://open.spotify.com/episode/6qNpzYSBg5Mf5kNPWt0a8v

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