A2AとMCP・スキルの違い|Googleが作るAIエージェント市場の3層構造 - 生成AIビジネス活用研究所

A2AとMCP・スキルの違い|Googleが作るAIエージェント市場の3層構造

A2AとMCP・スキルの違い|Googleが作るAIエージェント市場の3層構造

  • GoogleがA2A対応のAIエージェントを出品・検索・購入できる市場を整え始めました。
  • スキルは仕事の型、MCPはデータ接続、A2Aは業務の外部委託を担い、3層で積み上がります。
  • ただしA2Aは料金や品質保証を定めないため、選定と検品の責任は利用企業に残ります。

自社のAIエージェントに、どこまで仕事を覚えさせるべきか。最近、スキルやMCPを触りながら、そんなことを考えていませんか。

これまでは、自分のAIに仕事の進め方を教え、必要なデータやツールへ接続するのが中心でした。しかし次に始まるのは、仕事をまるごと外部のAIエージェントへ発注する市場です。

その土台になるのが、エージェント同士が仕事を委託する共通規格「A2A(Agent To Agent)」です。GoogleはA2A対応エージェントを検索・購入・課金できる仕組みまで整え始めました。これはAIツールが増えるだけの話ではなく、「AI社員を外部から雇う市場」が生まれる話です。

GoogleがA2Aエージェントを売り始めた

Google Cloud MarketplaceでA2Aエージェントを出品・検索・購入する流れ

Google Cloud Marketplaceの公式資料では、A2Aに対応したAIエージェントを「Agent as a Service」として出品できます。提供者はエージェントの能力や接続先を登録し、審査を通過すると公開できます。

顧客は自然言語や業界・用途などでエージェントを探し、取得したものをGemini Enterpriseへ追加できます。料金も無料、月額、従量、月額+従量などから設定できます。

つまりGoogleは、エージェントを作る基盤だけでなく、出品・発見・審査・購入・請求・企業内統制まで一つにつなげようとしています。

僕はこれを「AI社員市場」と捉えています。ただし、Googleが公式にAI社員市場という言葉を使っているわけではありません。専門業務を実行するAIが、企業向けサービスとして流通し始めたことを示す比喩です。

スキル、MCP、外部エージェントは何が違うのか

スキルは仕事の型、MCPは接続、外部エージェントは外注という役割の違い

この市場を理解するには、似て見える3つを分ける必要があります。

  • スキル:仕事のやり方を教える
  • MCP:データや機能へ接続する
  • 外部エージェント:仕事そのものを任せる

料理にたとえるなら、スキルは「レシピ」、MCPは「厨房設備や食材への接続」、外部エージェントは「他の料理人への外注」です。

Agent Skillsの公式仕様では、スキルはSKILL.mdを中心に、手順、判断基準、テンプレート、スクリプトなどをまとめたものです。スキル自身が働くのではなく、読み込んだ自社エージェントがその方法に従って仕事をします。

MCPは、AIアプリが外部のデータ、ツール、指示テンプレートなどを使うための共通接続です。CRMを検索したり、社内文書を読んだり、業務システムを更新したりできますが、何をいつ使うかを考える主体は基本的に自社側です。

一方、外部エージェントには「この企業の信用リスクを調査してください」「この契約書を審査してください」と、一定範囲の仕事をまとめて依頼します。部品ではなく、業務遂行能力を買う点が決定的に違います。

Agent Cardがエージェントを商品にする

Agent Cardがエージェントの能力と接続先を示す商品票になる仕組み

A2Aは「Agent2Agent」の略で、異なる企業や開発基盤で作られた独立エージェント同士が、共通の方法で能力を示し、仕事を委託し、進捗や成果をやり取りするための規格です。

最初に重要なのが「Agent Card」です。これはエージェントのデジタルな名刺兼サービス説明書で、提供者、能力、スキル、接続先、対応する通信方式、認証要件などを機械が読める形で示します。

人間の外注でも、相手の経歴や対応業務が分からなければ発注できません。エージェントも同じです。自社の司令塔エージェントはAgent Cardを読み、「この相手なら金融分析を任せられる」「この形式のデータを渡せる」と判断できます。

Google Cloud Marketplaceでは、A2Aエージェントの出品に検証済みのAgent Cardが必要です。つまりAgent Cardは単なる技術メタデータではなく、エージェントを比較・導入するための商品票としても使われ始めています。

ただし、A2Aそのものが世界中のエージェントを検索するMarketplaceを提供するわけではありません。A2Aが商品情報の共通形式を作り、その上にGoogleなどが検索・審査・購入の市場を構築します。

TaskとArtifactが仕事の委託を標準化する

A2AのTaskで進捗を管理しArtifactとして成果物を受け取る流れ

A2Aの中心にあるのは「Task」です。A2Aの基本概念では、外部エージェントへ依頼する仕事の単位として定義され、受付、実行中、追加入力待ち、認証待ち、完了、失敗などの状態を持ちます。

単純なAPIは、呼び出したらすぐ結果が返ることを想定しがちです。しかし実際の仕事には時間がかかります。市場調査で追加条件を確認したり、人間の承認を待ったり、数時間かけて複数の資料を処理したりします。

A2Aは、このような長時間の業務を途中経過ごと管理できます。これは「関数を呼び出す」というより、案件を発注して進捗を追う仕組みに近いものです。

そして、外部エージェントが作った文書、画像、ファイル、構造化データなどの具体的な成果物を「Artifact」として返せます。A2Aでは原則として、途中の会話はMessage、納品物はArtifactと分けて扱います。

ここがMCPとの差です。MCPで検索ツールを呼べば、検索結果という材料が返ります。A2Aで市場調査エージェントへ依頼すれば、その材料を集め、比較し、判断し、レポートとして納品するところまで相手側へ任せられます。

なお、短い処理ではTaskを作らずMessageだけを返す場合もあります。すべてのA2A利用が大規模な業務委託になるわけではありません。それでも、TaskとArtifactが規格に入っていること自体が、完成した仕事をやり取りする設計を示しています。

▶︎ あわせて読みたい:MCPは道具、A2Aは同僚——仕事を委任する仕組みを基礎から

A2Aは売買規格ではない

A2Aが共通規格を担いMarketplaceが審査・購入・請求を担う役割分担

ここは誤解しやすいポイントです。

A2Aが決めるのは、相手の能力を知り、仕事を依頼し、進捗を共有し、成果を受け取る方法です。料金、決済、品質保証、損害賠償などは、A2Aのコア仕様では決まりません。

つまり、A2Aだけでは「市場」になりません。Google Cloud Marketplaceが、その上に出品審査、検索、購入、請求、権限管理を重ねることで、初めて商取引の仕組みになります。

道路の規格がA2Aで、料金所や運送契約がMarketplaceです。道路が共通化されるから多くの運送会社が走れますが、料金や補償は各サービスの契約で決まります。

この分離には意味があります。A2Aの相手は、内部でどのモデルやツールを使っているか、どんな手順で判断しているかをすべて公開する必要がありません。依頼側は、能力と入出力と状態だけを共通形式で扱えます。

専門会社は独自データや業務手順を秘密にしたまま、成果だけを外部へ提供できます。A2Aは、エージェントの中身ではなく仕事の境界を標準化するのです。

3つの市場は積み重なる

知識と接続を束ねて業務成果として売るスキル・MCP・エージェントの3層市場

スキル、MCP、外部エージェントは、どれか一つが残る競争ではありません。3つは競合ではなく、産業の階層です。

外部エージェントの裏側では、複数のスキルが仕事の進め方を定め、MCPがデータやツールへ接続します。それらを組み合わせて一つの専門サービスにし、A2A経由で仕事として提供します。

産業構造として見ると、次の3層です。

  1. スキル市場:知識、手順、判断基準を売る
  2. MCP市場:データ、機能、接続権を売る
  3. エージェント市場:業務遂行能力と成果物を売る

レシピと食材を仕入れた料理店が、完成した料理を販売するのと同じです。上の層へ行くほど単価を高くしやすい一方、運用負担や品質責任も大きくなります。

ここで重要なのは、企業が買うものが「モデルの処理時間」から「仕事の結果」へ移ることです。どのモデルを何万トークン使ったかより、信用調査が期限内に終わり、必要な根拠が付いているかが価値になります。

▶︎ あわせて読みたい:AIが人月契約を成果課金へ変え始めた理由

外部エージェントで作業コストから成果物コストに

作業コストから成果物コストへ企業の支払いが変わる構造

外部エージェントには大きな利点があります。モデルの運用、専門データの更新、ワークフロー改善、監視などを提供者側へ移せるからです。

特に、海外規制の監視や信用調査のように、専門データを継続的に更新する仕事では、複数顧客へ同じ基盤を提供する事業者に規模の経済が働きます。自社で一から作るより、安く、速く、高精度になる可能性があります。

ただし、コストが消えるのではなく利用料へ変わるだけです。導入、権限設定、出力の検品、ベンダー管理など、自社側の仕事も残ります。利用量が多く、自社固有の手順が競争力になる仕事なら、内製の方が有利な場合もあります。

責任も完全には移せません。提供者にシステム稼働、処理時間、再実行などを契約で担わせることはできますが、利用企業側にもエージェントの選定、継続監視、出力の検品、リスク管理が残ります。

一般的なSLAで稼働率や処理時間を決めても、業務判断が必ず正しいことまで含まれるとは限りません。NISTのAIリスク管理指針も、第三者AIの継続監視や障害時の代替手順を求めています。成果物の合格条件、間違った場合の修正、データの保存、事故時の対応は、導入前に決める必要があります。

企業AIは自社の司令塔と外部専門家へ

自社の司令塔エージェントが外部の専門エージェントへ業務を発注する構成

将来の企業AIは、すべてを自社で作る形でも、すべてを外部へ任せる形でもないと思います。

自社の司令塔エージェントが、独自の判断基準をスキルとして持ち、MCPで社内データへ接続し、必要な専門業務だけを外部のA2Aエージェントへ依頼します。

例えば経営企画エージェントが、外部の市場調査エージェントへ分析を依頼し、法務エージェントへ規制確認を頼み、返ってきたArtifactを自社データと照合して経営会議資料へまとめる形です。

これは、自社エージェントが元請けとなり、専門工事を外部へ発注する構造です。中核となる方法論や顧客理解は自社に残し、標準化しやすい専門業務だけを外から調達します。

どれを選ぶか迷ったら、次の3問で考えると整理できます。

  1. 自分のエージェントへ仕事のやり方を教えたいか。そうならスキルです。
  2. 自分のエージェントへデータや機能を使わせたいか。そうならMCPです。
  3. 相手へ仕事を任せ、成果を受け取りたいか。そうなら外部A2Aエージェントです。

AI市場の競争単位は、モデルだけではなくなります。独自データ、業務手順、評価結果、ブランド、販売網を持つ企業は、それまで人が提供していた専門サービスを「24時間働く外部エージェント」として販売できます。

AIを使う市場の次に、AIへ仕事を発注する市場が始まります。 Googleが整え始めたのは、その入口です。

よくある質問(FAQ)

Q1. A2AとMCPは何が違うのですか?

MCPはデータや機能への接続、A2Aは仕事そのものの委託です。
MCPで検索ツールを呼べば検索結果という材料が返りますが、A2Aで市場調査エージェントへ依頼すれば、材料を集めて比較し、判断してレポートに仕上げるところまで相手側へ任せられます。
部品を借りるのがMCP、業務遂行能力ごと買うのが外部エージェントだと整理すると分かりやすいです。

Q2. A2Aに対応すれば、エージェントをそのまま販売できるのですか?

できません。A2Aが決めるのは、相手の能力を知り、仕事を依頼し、進捗を共有し、成果を受け取る方法までです。
料金、決済、品質保証、損害賠償はA2Aのコア仕様には含まれません。
Google Cloud Marketplaceのような市場側が、出品審査・検索・購入・請求・権限管理を重ねることで、初めて商取引として成立します。

Q3. 外部エージェントを使えば、自社のコストと責任はなくなりますか?

なくなりません。コストが消えるのではなく利用料へ変わるだけで、導入、権限設定、出力の検品、ベンダー管理といった自社側の仕事は残ります。
一般的なSLAで稼働率や処理時間を決めても、業務判断が必ず正しいことまで含まれるとは限りません。
NISTのAIリスク管理指針も第三者AIの継続監視と障害時の代替手順を求めているため、合格条件・修正手順・事故時の対応は導入前に決める必要があります。

AIエージェントや企業AIの最新動向を、動画でも継続的に追いたい方へ:https://www.youtube.com/@iketomoch

エージェントへ仕事を任せる設計を、Claudeを使った具体的な自動化へ落としたい方へ:https://amzn.to/4eTUVG1

スキルやエージェントを読むだけでなく、2時間手を動かして自分の仕組みを残したい方へ:https://gais-event-voice-259747770348.asia-northeast1.run.app/

合わせて読みたい
関連記事

公式LINEで最新ニュースをゲット

LINE登録の無料特典
LINE登録の無料特典
icon

最新のAIニュース
毎週お届け

icon

生成AIの業務別の
ビジネス活用シーン

がわかるAIチャット

icon

過去のAIニュースから
事実を確認できる
何でもAI相談チャット

icon

ニュース動画
アーカイブ

ページトップへ