Copilotに下書きを頼んだのに、結局それをWordに貼り直し、崩れた書式を直して、チームに送り直していませんか。
AIが書いてくれたのは最初の一歩だけで、残りの受け渡しは手作業のまま、という人は少なくないはずです。
その手間ごと引き取りにきたのが、Microsoftが9月25日に発表した新しいCopilotです。「Home」「Code」「Autopilot」の3つが加わり、聞く、任せる、道具を作る、仕事を続けてもらう、までが1つの入口にまとまりました。
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発表したのは、Microsoftで「AI at Work」部門の最高マーケティング責任者(CMO)を務めるジャレッド・スパタロ(Jared Spataro)氏です。公式ブログで、新しいCopilotを、人が頼りにしている道具と、次の世代のAIの能力をつなぐものと位置づけました。加わったのは次の3つです。
①Home:仕事の出発点。「Chat」と「Cowork」が一か所にそろい、Word・Excel・PowerPointも組み込まれた
②Code:誰でも自分用の小さなアプリや自動化を作れる。GitHub Copilotと同じ基盤技術で動く
③Autopilot:利用者が見ていないあいだも働き続ける、常駐型のエージェント
3つに通じる考え方は、Codeの説明の中に書かれています。これまで知的労働の単位は、文書・表・スライドといった「ファイル」でした。Codeはそこに4つ目として、仕事を片づけるための小さな専用の道具を加える、というのです。
「ファイルを作るAI」から「道具を作り、仕事を続けるAI」へ。今回の発表は、この流れで読むと筋が通ります。
部品の多くは、今年に入って順に出てきたものです。仕事を任せる「Cowork」は3月にAnthropicと組んで発表され、Claude Coworkの技術をMicrosoft 365 Copilotに組み込んだものです。常駐型のエージェントは、6月に「Scout」の名前で登場しました。今回は、それらを1つの入口に束ね直した発表です。
提供は段階的です。HomeとCodeは、新機能を先行提供する「Frontier」プログラムで数週間のうちに展開が始まり、Autopilotは9月末ごろからプライベートプレビューを広げる予定と発表されています。

Homeは、仕事の再開地点として設計されています。最近の活動を見直し、Copilotに頼めることの提案を受け、途中の仕事にそのまま戻れます。
仕事は会議、チャット、文書、メールを行き来します。どこまで進んだかを探し直す手間を減らすのが、Homeの役割です。
ここに2つの使い方が並びます。「Chat」は、短い質問、調べもの、下書きなど、その場でやり取りを重ねる用途です。
「Cowork」は、仕事を渡して、仕上がった結果を受け取る用途です。Microsoftは例として、提案依頼書(RFP)への回答、製品発表の資料一式、顧客向けの説明資料、決算の締め資料を挙げています。
分かれ目は、答えの長さではありません。会話を進めたいのか、仕上げてほしい仕事を渡すのかです。
なお、依頼内容を見てChat・Cowork・Codeへ自動で振り分ける機能は「近日提供」とされています。当面は、どちらで頼むかを利用者が選ぶ形です。
もう1つの柱が「Office in Copilot」です。Copilotの画面から、編集できる本物のWord文書、Excelのブック、PowerPointのスライドを作ったり、チームで作業中のファイルを更新したりできます。
変更はOfficeアプリ側と同期し、同僚を@メンションすれば、その人の修正もその場で反映されます。冒頭の「貼り直して、書式を直して、送り直す」手間を、設計ごとなくしにきたわけです。
同じ方向の動きは、Anthropicにもあります。9月16日、ClaudeのチャットとCoworkを1つに統合し、何を使うかをClaudeが判断する方式に切り替えました。Microsoftは2つを並べたまま、振り分けの自動化を後から足す順番を取っています。
進め方は違っても、行き着く先は同じです。「どこで頼むか」を人が選ばなくてよい状態です。
▶︎ あわせて読みたい:「Claude」のChatとCoworkが「one Claude」に統合、Docs・Slidesも登場。「入り口を選ぶ仕事」が消える

毎週月曜、同じ売上表を開いて先週と比べ、地域や商品を変えるたびにフィルターをかけ直す。そんな作業はないでしょうか。
この仕事に必要なのは、毎週作り直す表ではなく、条件を切り替えて見られる画面です。Codeが狙うのは、ここです。
作りたいアプリ、進捗の管理表、ダッシュボード、自動化、ワークフローを言葉で伝えると、Copilotが作り方を選んで作ります。デスクトップに常駐する小さな表示から、データを探れるダッシュボード、チームで共有する社内アプリまで、形は用途に応じて変わります。
ここで大事なのは、「作る」と「動かす・配る」を分けて考えることです。作ったアプリを同僚が使えるようにするには、動かす場所と、共有やデータ接続の管理が要ります。
そのためにMicrosoftが用意したのが「Copilot Managed Runtime」です。会社のMicrosoft 365環境の中でコードを安全に動かす基盤で、IT部門の管理下に置かれます。利用者はアプリを同僚と共有し、実際のデータにつなぎ、どこからでも開けます。現在はプレビュー段階です。
CodeはGitHub Copilotと同じ基盤技術で動き、隔離された環境(サンドボックス)で実行されます。ただし、開発者は引き続きGitHub Copilotで日々の開発を続けます。
つまりCodeは、開発者の置き換えではありません。業務を知る人が、道具の原型を自分で作れるようになる話です。Microsoftは、こうした道具を作ることが、メモを書く、予算表を組むのと同じくらい基本的なスキルになりつつある、とまで書いています。

Coworkは、渡した仕事を仕上げて返したところで一区切りです。Autopilotは、その先を担います。
Scoutから名前を変えたAutopilotを、Microsoftは「デジタルのチームメイト」と呼びます。名前と役割と目標を与えると、チャンネルを見張り、スレッドの返事を追いかけ、定期的な作業を回し、数日後に同じ仕事へ戻ってきます。いちいち指示を待たずに、です。
Microsoftが挙げた例は、取引先の審査です。Autopilotが日程と逆算の作業計画を組み、準備、会議、会議後のフォローまで進め、関係者への進捗確認まで自分で送る、という使い方です。発表で示された想定の動きで、実際の導入成果が示されたわけではありません。
こうした継続を支えるのが、Autopilotの持ち物です。会社のテナント(Microsoft 365上の、組織ごとの専用領域)の中に、専用のID、記憶、コンピューター、作業スペースを持ち、クラウドで動きます。利用者が寝ているあいだも、仕事は止まりません。
たとえるなら、毎回呼び出す「外注先」ではなく、席と社員証を持った「同僚」です。社員証にあたるIDがあるから、何をしたかが記録に残り、何をしてよいかを権限で決められます。
現れる場所も、TeamsやOutlook、チャット、チャンネル、文書と、人がふだん働く場所です。同僚と同じように@メンションで呼べます。
人の役割も書かれています。目標と境界は人が決め、Autopilotはそこから先を担います。権限・監査・組織の管理の下で動き、状況を人に伝えながら進める設計です。
任せるのは「作業」ではなく「役割」。これが、Coworkとのいちばん大きな違いです。
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もう1つ見落とせないのが、課金の設計です。Microsoftは、日常のAI利用と、エージェントに任せる仕事を分けて考えています。
素早い回答、最初の下書き、要約、分析といった日常の利用は、利用者ごとのライセンス(USL)の定額でまかないます。ChatのほかWord・Excel・PowerPoint・Outlook・Teamsの中のCopilotも、ここに入ります。
その中心にあるのが「Auto」です。依頼ごとに、正確さ・速度・コストをはかりにかけて、その仕事に合ったモデルを選びます(課金の説明ページでは、考える深さも合わせて選ぶと説明されています)。ただし候補になるのは、管理者が利用者のグループごとに許可したモデル群の中だけです。
一方、Cowork・Code・Autopilotと、AstraやFableといった最先端のモデルは、使った分だけ払う従量課金(UBB)です。最高水準のモデルを選べる代わりに、費用と価値の釣り合いを見る責任は利用する側に移ります。
これを支える仕組みとして、Microsoftは「FinOps for AI」(AIへの支出を管理し、事業の価値につなげるための管理手法)の機能を発表しました。主なものは次の4つです。
①管理者は、支出の方針をAPIでまとめて管理できる
②利用者からのクレジット追加の申請を、既存の承認フローや自動化に流せる
③Coworkのどの仕事が成果を出しているかを見て、使い方を続けるか、広げるか、最適化するかを判断できる
④利用者自身も、Copilotの画面でクレジットの使用量・残高・履歴を見られる
「ライセンスを配れば終わり」ではなくなる、ということです。AIを使うたびに、その仕事が費用に見合うかを問う場面が、利用者の手元にまで降りてきます。
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ここまでの発表を並べると、企業にとっての論点が変わってきます。
一度きりの依頼なら、成果物を受け取った時点が区切りです。中身を確かめ、採用するかを決めれば済みます。
ところがAutopilotのように日をまたいで動く仕事では、区切りと区切りのあいだにも動きが生まれます。取引先の審査の途中で条件が変わったら、どこまで先へ進めてよいのか。そこが、新しく人の判断が必要になる場所です。
もう1つ、分けて考えたい判断が3つあります。
①その情報が「見える」こと
②その機能が「使える」こと
③その操作を「任せる」こと
MicrosoftはCopilotに、Power BIのデータを取り込む「Fabric IQ」や、Dynamics 365・Power Platformの業務データをつなぐと発表しました。プラグインをIT部門が一か所で承認・管理する仕組みも入ります。これで①と②は広がります。
ただ、プラグインが承認されたからといって、個々の仕事でどこまで任せるか(③)までは決まりません。
しかも、任せる範囲を広げるほど、従量課金の支出も続きます。関連するやり取りをすべて追わせれば取りこぼしは減る一方、費用は膨らむでしょう。対象を絞れば予算は読みやすくなりますが、見落としが出るかもしれません。
任せる範囲と使う予算は、セットで決めるものになりそうです。
日本の組織でいえば、稟議や承認フローにエージェントのクレジット申請が乗ってきます。情報システム部門の役割も、ツールを配る係から、接続・権限・予算を設計する係へ移っていくと考えられます。
一方で、発表ではまだ分からないこともあります。Autopilotの個々の操作に人の承認をどう挟むのか、止めたいときの手順、問題が起きたときの責任の分け方は、具体的に示されていません。業務の成果や費用対効果の実測値も、これからです。

提供が広がる前でも、準備はできます。
①自分の仕事を4つに仕分ける
その場で聞けば済むもの(Chat)、仕上がりごと渡したいもの(Cowork)、繰り返し使う道具にしたいもの(Code)、役割として続けてほしいもの(Autopilot)。1週間分の仕事を並べるだけで、どこから試すかが見えてきます。
②毎週同じ手順で見ている表を1つ選ぶ
「道具にしたら、何を切り替えて見たいか」を書き出しておきます。それが、そのままCodeへの最初の依頼文になります。
③任せたい継続業務を1つ選び、線を引く
「任せてよいこと」と「必ず人に戻すこと」を先に書きます。Autopilotに渡すのは、目標と境界だからです。
聞く、任せる、作る、続けてもらう。入口が1つになっても、何をどこまで任せるかを決めるのは人の仕事として残ります。そこを先に言葉にしておいた組織から、新しいCopilotを使いこなしていくはずです。
分かれ目は答えの長さではなく、会話を進めたいのか、仕上げてほしい仕事を渡すのかです。Chatは短い質問・調べもの・下書きなど、その場でやり取りを重ねる用途です。Coworkは提案依頼書への回答や説明資料一式のように、仕事を渡して仕上がった結果を受け取る用途です。依頼内容に応じて自動で振り分ける機能は「近日提供」とされています。
Autopilotは、6月に「Scout」の名前で登場した常駐型エージェントが名前を変えたものです。Microsoftの発表では、9月末ごろからプライベートプレビューを広げる予定とされています。HomeとCodeは、先行提供の「Frontier」プログラムで数週間のうちに展開が始まります。
二本立てです。回答・下書き・要約・分析といった日常の利用は、利用者ごとのライセンス(USL)の定額でまかない、中心の「Auto」が依頼ごとにモデルを選びます。一方、Cowork・Code・Autopilotと最先端のモデルは、使った分だけ払う従量課金(UBB)です。管理者向けには支出を管理する「FinOps for AI」の機能が用意され、利用者もクレジットの使用量・残高を画面で確認できます。
AIエージェントに何をどこまで任せ、どこで線を引くか。AIを徹底的に使いこなすためだけのコミュニティ「フロンティア・リーダーズ」で、実務を持ち寄りながら探っています:https://frontier-leaders.vercel.app/
「言葉で伝えて、自分用の道具を作る」を、2時間のハンズオンで実践しながら学べます。「AIで2時間でツールを作る会」などの過去回をアーカイブで受講できます:https://handson.workstyle-evolution.co.jp/
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