「サブスクリプションのAI枠を、APIのように外から呼べないか」。そう考えて、2026年10月の初めに実験をしました。
使ったのは、OpenAIが用意している「MCP Events」です。外部サービスで起きた出来事を、ChatGPTに通知して仕事を頼める仕組みです。
結果は、動きました。ニュースを登録すると、利用者のChatGPT側で調査・執筆が進み、解説講座の保存まで届きました。
ただ、動いたことと、使えることは別でした。初回は中身が薄く、途中では作業が止まりました。直したのは、モデルへの依頼文よりも、通知の「先」の設計でした。
実際にあったことから、学びを3つにまとめます。
実測したこと、公式仕様、設計案、まだ確かめていないことは、見出しで分けて書きます。
目次

公式仕様によると、MCP Eventsは「webhook(ウェブフック)」と呼ばれる通知の方式で動きます。流れは、次の4つです。
今回の仮説は、ここから生まれました。サービス側が生成AIのAPIに料金を払って文章を作る代わりに、利用者自身のChatGPTの枠で処理してもらえないかというものです。
使える場所は、公式ドキュメントによると、ChatGPT webのWorkチャットと、Cloudを選んだデスクトップアプリのWorkチャット、dotsです。プラグインとイベント起動タスクについては、ワークスペースの管理設定も効きます。
もとになっているのは、MCP Eventsの「ドラフト(草案)」の仕様です。ChatGPTが対応するのは、そのうちwebhookの配送とコールバック検証だけです。草案ベースなので、変わりうる前提で、使う前に最新の仕様を確かめてください。

僕がやっているAIニュースのサービスでは、ニュースを登録すると、AIがそのニュースの解説講座を作ります。1つのニュースから、3〜5講(章のようなものです)、15〜25問ほどの講座ができます。
これまでは、この講座づくりに、AIの「API」を使っていました。APIは、使った分だけ料金がかかる仕組みです。講座づくりでは、1記事あたり数ドルの費用がかかっていました。
今回変えたのは、この「作る係」です。APIの代わりに、利用者自身のChatGPTへ、MCP Eventsで講座づくりを頼みました。MCPは、AIが外部のサービスとやり取りするための共通の接続口です。
新しい流れは、次のとおりです。
PC上のCodexアプリを外から起動する構成ではありません。依頼を届けるきっかけがイベントで、実際の作業はChatGPTのクラウド実行が担います。
初回は、ニュース登録から約2秒でイベントを受け取り、6分40秒で4講20問の保存を確認できました。通知を受け取ったことと、講座が完成したことは別なので、保存後に本文を読み戻して、完成を確かめています。

最初のMCP版は、結論や料金の計算は読みやすい一方で、具体例・因果関係・業務の工程の説明が、従来のAPI版より薄くなりました。回答の本文は、MCP版が3,309字、API版が6,123字でした。
問題は、短さそのものではありません。読者が判断するのに必要な説明が、抜けていたことです。
保存の形にも不足がありました。回答ごとの出典や、追加の問いを保存する欄がなく、API版にあった出典35件・追加質問23件に相当する情報を、保存できる形になっていませんでした。
つまり、呼び出しの経路を変えるだけでは、質は上がりません。依頼の仕方と、保存の形を、両方整える必要がありました。
直し方は、「深く考えて」と一度に頼むのをやめることでした。第1講から順に1講ずつ作り、次の講には前の講の全文と点検の結果を渡します。この手順を土台に、2026年10月の初めにA〜Fの6回、毎回別のニュースとして新しく作りました。
最後に、Fと既存のAPI版を、方式名を伏せて比べました。後続の講の説明力は、Fが52/60点(86.7%)、API版が30/45点(66.7%)でした。
この点数は、説明の力を見た評価です。事実の正答率ではありません。また、同じモデル・同じ時刻・同じ調査の予算で比べたわけではないので、方式やモデルの優劣の証明にはなりません。API版にも、短くまとまる強みと、競合比較の強みが残りました。

講座を作らせた初回の1つ(F)は、約26分走って、第4講まで進んだところで止まりました。
原因は、ChatGPTの会話が、長い作業の途中で圧縮されたことでした。長くなった会話は、途中で内容がまとめ直されます。そのとき、「この依頼をいま自分が担当している」という印と、「どこまで終わったか」の記録が、抜け落ちてしまいました。
もう一度、担当を名乗り出ても、「すでに処理中です(409 busy)」と断られました。ニュースサービス側には「処理中」の記録が残ったままです。通知は成功し、途中の原稿もありましたが、完成した講座は保存されていませんでした。
会話の中に「どこまで進んだか」を覚えさせるだけでは、長い処理は安定しない。ここが、いちばんのハマりどころでした。
対応は、MCP Eventsの標準機能ではなく、ニュースサービス側に作った仕組みです。ゲームの「セーブ」と「ロード」に近い考え方です。
この修正のあと、Fを同じ依頼の2回目として実行し、5講25問を完成保存できました。段階ごとに前の講の全文が引き継がれ、確定した原稿と保存された本文が一致することも確かめています。
ただし、止まった初回の第4講を、そのまま復元したわけではありません。古い担当の印の期限が切れたあとに同じ依頼をやり直し、修正版の途中保存から復元して最後まで進めた試験です。わざと会話の圧縮を起こして、完全に自動で復旧できるかは、まだ試していません。

ここは、公式仕様の話です。サービス側の設計に効く点を絞りました。
つまり、MCP Eventsが担うのは、依頼を届けるところまでです。再送や、重複への備えも、送る側が用意します。その先の「やったか、終わったか、二重になっていないか」は、サービス側が見る必要があります。

ここは、ニュースサービスで実装して動かした内容と、設計案を分けて書きます。
別の接続として登録し直された場合は、古い接続の暗号化された進捗は読ませず、第1講からやり直す設計にしています。
配送の再送と、作業の途中復元は別の話です。通知の再送を受けられても、書きかけの文章はサービスが保存していなければ戻せません。
完成の保存を二重にしない仕組みは作れます。ただしそれは、重複した通知によるモデルの起動や、利用枠の消費まで防げる、という意味ではありません。

この学びは、MCP Eventsに限った話ではありません。APIでも、普通のチャットでも使えます。
実測で効いたのは、次の点検でした。
「深く考えて」と一括で頼んだだけでは、足りませんでした。何をどの順で点検するかまで、工程として渡して初めて、説明の質が上がりました。

実測した範囲と、分からない範囲を分けておきます。
この実験は、2026年10月の初めの時点の記録です。利用枠や接続の状態が、将来も同じである保証はありません。

この章は実測ではなく、提案です。自分のサービスでMCP Eventsを試すなら、モデルへの依頼文より先に、次の3つを決めてください。
サブスクリプションの枠をAPIのように使う発想には、実用性があります。ただし、それを支えるのは、依頼の台帳と、途中の保存と、点検の工程でした。
実験では、ニュースの登録をきっかけに利用者のChatGPT側で調査と執筆が進み、解説講座の保存まで届きました。ただし、この講座だけの消費量や1件あたりの金額は算出できていません。大量・同時・長期の運用も試していないため、「必ず動く」とは言えません。
意味しません。公式仕様は、2xxを受領の確認、ChatGPTの処理は非同期と説明しています。完了の判定には、保存した成果物を読み戻して確かめるなど、サービス側の確認が要ります。
会話に進み具合を覚えさせず、講を1つ書き終えるたびに状態を暗号化して保存します。止まったら依頼IDだけを渡して、保存済みのデータから続きを再開します。これはMCP Eventsの標準機能ではなく、サービス側に作った仕組みです。
エージェントにどこまで任せ、どこで線を引くか。AIを徹底的に使いこなすためだけのコミュニティ「フロンティア・リーダーズ」で、実務を持ち寄りながら探っています:https://frontier-leaders.vercel.app/
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