10月14日、xAIが音声AI「Grok Voice 3.0」をAPIで公開しました。サポート電話を想定した評価「τ-Voice(タウ・ボイス)」の完了率は、旧版の56.5%から71.6%へ上がり、料金は旧版と同じ1分0.08ドルです。
ただし、音声AIの総合評価で1位でも、サポート課題で1位とは限りません。OpenAIのGPT-Live-1(ChatGPTの音声と同系統)とGemini 3.8 Liveを同じ表に並べ、Starlinkの電話窓口での使われ方まで見ると、変わったのは話し方より「電話業務を最後まで終わらせる力」でした。
この記事では、更新の数字、3社の比較、評価の仕組み、Starlinkの業務の流れ、導入前の確認点を順に整理します。

xAIの発表で最も大きく動いたのは、サポート課題の完了率です。τ-Voiceは、訛り・雑音・会話の割り込み・複数ステップの問い合わせを含む顧客対応で、タスクを最後まで終えられたかを測る評価で、56.5%から71.6%へ15.1ポイント上がりました。
総合指数は81.3から86.9になりました。これは音声AIの評価機関Artificial Analysisの指数で、発表の比較表は10月13日時点の値です。内訳では、音声推論が97.2%から98.5%、会話の間を測るFull Duplex Benchが95.1%から97.0%へ上がっています。
一方、別の評価であるTask Success Rateは94.6%から94.8%で、ほぼ横ばいです。伸びが大きいのは、複雑な顧客対応の完了率でした。
流れで見ると、7月29日の2.0(Voice 2.0)は、話しながら裏で考える設計で、会話の間のスコアを大きく伸ばしました。3.0で目立つのは、会話の自然さより業務の完了率です。
料金は2.0と同じ1分0.08ドル(1時間4.80ドル)で、性能が上がっても価格は据え置きです。モデル名に「grok-voice-latest」を指定している利用者は、すでに3.0へ自動で切り替わっています。

3.0を作ったのはxAIです。xAIは2月にSpaceXへ合流し、公式サイトの表記は現在SpaceXSI、発表ページの著作権名義はSpaceXAI LLCです。
そのため、使われている現場も実務そのものです。SpaceX傘下のStarlinkの電話窓口では、事例(8月19日公開)によると、平日は約2万件、週末は約1万件で、Grok Voiceが請求・配送・トラブル対応から注文作成まで受けています。人の介入なしで解決する割合は約70%です。
Teslaの車内でも、1日に数百万件の会話を扱い、予定の確認やメール対応、コーヒーの注文や夕食の予約を音声で行うとxAIは説明しています。Grok Botの音声モードにも3.0が使われます。
会社のページは、ミッションに「人類の科学的発見を加速すること」を置き、行動原則の1つに「素早く動いて直す」を掲げています。速さのための速さではなく、現実の問題を速く解くための速さだと書いています。今回の発表でも、音声の自然さより、サポートの解決率、応答の速さ、実行の費用が前面に出ています。
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音声を直接受け取り、音声で返すモデルは「speech-to-speech(STS)」と呼ばれます。ここでは、Grok Voice 3.0、ChatGPTの音声と同系統のOpenAIのGPT-Live-1(Astra・Medium設定)、Gemini 3.8 Live(Extended Thinking・High設定)を並べます。数字は、発表の比較表(Artificial Analysis、10月13日)と、同社の現在の表です。
★は、その項目の最高値です(時間は最短)。
総合1位はGrokですが、サポート課題の1位はGPT-Live-1の74.5%です。 総合指数は、音声推論・サポート課題・人の選好・Task Success Rateの4成分を等しい重みで足したもので、会話の間は含まれません。GPT-Live-1のサポート課題は1回の試行の値で、差は2.9ポイントです。
選び方は、重視する指標で変わります。サポート課題の完了率を最優先するならGPT-Live-1、応答の速さと定型タスクの安定性ならGrokを比べる理由があります。Geminiは設定で大きく変わり、同じ3.8 Liveでも標準設定のサポート課題は30.1%、Extended Thinking・Highで68.6%です。
速さについて、xAIはサポート課題でGPT-Live-1に匹敵しながら遅延は40%低いと説明しています。0.81秒と1.34秒の差を計算すると約40%で、発表と合います。ただし旧2.0は0.70秒だったので、3.0は旧版より0.11秒遅くなっています。
費用も、xAIの発表図では、Big Bench Audioの1タスクあたりGrok 3.0が0.025ドル、GPT-Live-1が0.030ドル、GPT-Realtime-2.1が0.055ドルです。企業向け評価のEVA-Benchでも、精度74%で最高とxAIは報告しています。
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τ-Voiceの評価方法は、音声で話すユーザー役のAIと、業務の規則文書、業務ツール、データベースを使います。航空・小売・通信の問い合わせを再現し、最後のデータベースの状態が正解と合うかで採点します。「変更しました」と話すだけでは、成功になりません。
原論文は、次のような場面を想定しています。雑音や訛りで氏名を聞き違えると、本人確認ツールが失敗します。綴りを聞き直し、複数回の発話に分かれた情報を合わせて、認証ツールに渡す値を直せるかが問われます。
つまり、途中の聞き違いが、最後のデータの誤りにつながります。音声の入力、情報の保持、規則の判断、ツールの実行が一つの連鎖で、どこか1つ外すと完了になりません。 71.6%はこの評価の数字なので、自社の無人解決率にそのまま置き換えることはできません。

Starlinkは、サポートだけでなく販売の電話も受けています。Residential(自宅向け)かRoam(持ち運び向け)かの選択、住所照会、決済まで、注文作成を最後まで進めます。
ハードウェアの故障では、診断を走らせ、交換の選択肢を照会し、登録住所を確認して、交換品を発送します。xAIは、これを担当者へのチケット引き継ぎではなく、客が必要なものを受け取るところまで進める仕事だと説明しています。変わったのは、返答から「業務の実行」への踏み込みです。
英語の販売回線では約24.5%の通話が注文に至り、10月の発表では「販売電話の4件に1件」とされています。StarlinkのCustomer Experience部門のディレクター、Jeff Honeywellさんは、導入で顧客対応を無理なく拡大できたとコメントしています。
仕組みの面では、モデルが配送のデータベースに直接書き込むわけではありません。API文書によると、モデルが関数名と引数を出し、接続側のアプリが実際の処理を実行して、結果をモデルに返します。そのため、人の確認は全件の受け答えから、本人確認・対象機器・送り先・交換規則といった実行の条件と、例外の判断へ移ると考えられます。
音声AIと実際に話してみると、会話はかなりリアルで、議論もスムーズに進みます。電話サポートでAIが応対することは、これから一般的になっていくでしょう。
ただし、全部がAIに置き換わるわけではなさそうです。Starlinkの約70%は、約7割をAI、残りの約3割を人が受けているとも読めます。Klarnaも2024年に、AIがチャットの3分の2を処理していると発表し、その後は品質を重視して人間の担当者を再び採用する方針を示したと報じられました。
単純な問い合わせはAI、複雑な問題や気持ちの面の対応は人という分担で、7〜8割をAIが、2〜3割を人が受ける形に落ち着いていくでしょう。

料金表では、音声は1分0.08ドル、テキスト入力は1件0.004ドルです。仮に1通話の請求対象の音声を5分、テキスト入力を2件とすると、0.08×5+0.004×2で0.408ドル、1万通話で4,080ドルです。Starlinkの実費ではなく、計算の例です。
この数字には、回線、顧客管理システムとの連携、保守、品質の監査、有人への引き継ぎ、初期の構築と事前評価が入っていません。音声の単価が同じでも、聞き直しや待ちが増えれば、1件の費用は変わります。
比べる単位は、通話1件ではなく、同じ品質で終わった業務1件です。従来の1件あたりの継続費より、新方式の継続費が安ければ、初期費は「初期費÷(従来の1件単価−新方式の1件単価)」の件数で回収できます。誤配送や再入電が増えて新方式のほうが高くつくなら、件数を増やしても回収できません。
Starlinkの約70%は、自社にそのまま持ち込める数字ではありません。事例ページの中でも、本文は約70%、統計カードは60%と食い違っています。業務ごとに、正しく終わった割合を測り直す必要があります。

3.0が示したのは、音声AIの選び方が「声の自然さ」から「電話業務をどこまで終わらせるか」へ移ったことです。導入前に確かめることは、次の3つです。
音声は1分0.08ドル(1時間4.80ドル)で、旧版の2.0と同じだ。テキスト入力は1件0.004ドルである。請求対象の音声5分・テキスト入力2件なら1通話0.408ドルになるが、回線・システム連携・保守・有人への引き継ぎは含まれない。
指標によって分かれる。総合指数ではGrok Voice 3.0が86.9で首位、最初の音声までの時間も0.81秒で最短だ。一方、サポート課題の完了率はGPT-Live-1が74.5%で首位(Grokは71.6%、Gemini 3.8 Liveは68.6%)である。重視する指標で選ぶ必要がある。
当てはまらない。71.6%は評価用の課題での数字であり、Starlinkの約70%も、事例ページの中で本文は約70%、統計カードは60%と食い違っている。業務ごとに「正しい完了」を決め、代表的な通話で測り直すのが確実だ。
AIを徹底的に使いこなすためだけのコミュニティ「フロンティア・リーダーズ」で、電話やサポートの業務をAIに任せる設計も、実務を持ち寄りながら探っています:https://frontier-leaders.vercel.app/
エージェントアプリを、2時間で実際に動かして学ぶ「エージェントアプリ活用ハンズオン」など、過去回のアーカイブ:https://handson.workstyle-evolution.co.jp/
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