10月19日、Inceptionが拡散型の言語モデル「Mercury 3」を発表しました。拡散型とは、文章を一語ずつ左から書き進めず、粗い下書きをブロックごとに並列で書き直して仕上げる方式です。
規模は初代の40倍超、文脈は100万トークンになりました。速度は毎秒1,068トークンです。
では、この速さは仕事のどこで効くのか。答えは、人が結果を待っていて、何度も確かめたい場面です。僕も自分用のニュース分析アプリに入れて、日々使っています。

逐次型のモデルは、直前の一語を確定させてから、次の一語を予測します。拡散型は、粗い出力を作ったうえで、複数の箇所をまとめて何度も直します。待ちが減る代わりに、直す工程を繰り返すのが特徴です。
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Mercury 2.5からの更新は、速さの上積みではありません。速度は毎秒1,107から1,068トークンへ、ほぼ横ばいです。
変わったのは精度です。前の版は速くても粗すぎて、実務では使いにくい印象でした。今回は、文章でも、スライドなどのアウトプットでも、それなりの品質が出ます。

▲ 左がMercury 2.5、右がMercury 3の出力(課題:ビフォーアフターの図)

▲ 同じく、課題はロボットのアイコン。2.5は下端が切れ、3は頭から足まで収まっています
どちらも、AIモデルの比較ツールに残っている一回の出力です。Mercury 3にも文字の重なりなどの粗は残りますが、前の版よりは、手直しして使える形に近づいています。
枠も広がりました。文脈は26万から100万トークンへ約4倍になり、出力できる量の上限も倍になりました。速さを保ったまま、精度と扱える仕事を広げた更新です。
使い方は、Inception自身のAPIのほか、OpenRouterなど複数のサービスから、OpenAI互換のAPIで呼べます。

Inceptionは、GPT-6 LunaとClaude Haiku 5.5との比較を、3つとも同じ設定で出しています。数字はInceptionが自社で測った値です。
指示に従う力のテストでは、Mercury 3が約77%、Lunaが約62%、Haikuが約55%でした。
実際のコード課題を解くテストや、検索のテストでも、LunaとHaikuの両方を上回っています。
一方、逆転する課題もあります。ツールを使いながらコード課題を最後まで解くテストは、Haikuが上です。長文から必要な情報を取り出すテストも、LunaやHaikuが上回る項目があります。
小さくて速いモデルの中では、指示に従う力と実際のコードで頭ひとつ抜けている一方、課題によって勝ち負けが入れ替わる。これが比較の読み方です。
「4〜8倍速い」という表現にも注意が要ります。これは生成速度の比で、仕事全体の完了時間の比ではありません。

効くのは、一回の応答が速くなって、確かめる動作を何度も重ねられる場面です。
僕は自分用のニュース分析アプリに、Mercury 3を使った三つのボタンを付けました。解説を読んでいて気になる箇所で押せる、「もっと簡単に」「具体例」「だから何なの?」です。
押すと、数秒で回答が返ります。「具体例」は、先にウェブ検索をしてから文章を作りますが、それでも待たされません。通常のモデルで検索つきの回答を作ると30秒から1分かかるので、読みながら気軽には押せませんでした。
前の版では、レベルが低すぎて使えませんでした。今回は、さすがにLunaには及ばないものの、妥当な内容が出てきます。パッと使う用途なら実用に耐える水準です。

▲ 左がMercury 2.5、右がMercury 3の出力(課題:システムの構成図)
しかも、めちゃくちゃ速く表示されます。情報を集める途中の「考える待ち時間」がなくなり、確かめられることが広がったと感じています。
学習アプリのRevisionDojoも、ヒントや採点結果が約1秒で返ると説明しています。人が画面の前で結果を待つ仕事で、速さの価値が出ています。

逆に、ある程度時間をかけて任せてよい仕事では、速さより精度が大事です。
長い資料を扱う仕事が、その典型です。100万トークン入ることと、必要な情報を正確に取り出すことは、別の話です。資料を丸ごと渡す方法と、関係箇所だけを検索して渡す方法を、同じ正解条件で比べるのが確かです。
コード課題でHaikuが上だったように、やり直しが増えると、完了までの時間は逆転します。一回の生成が速くても、最終の成功までの時間で見る必要があります。
一方、リアルタイムでパッと処理したい場面では、拡散型の重要度が高くなります。任せる仕事は精度の高いモデルに、待たせたくない仕事は拡散型に。この使い分けが現実的です。

通常料金は、100万トークンあたり入力0.20ドル、出力0.70ドルです。発売記念で当面は半額ですが、終了日は発表されていません。
前の版と通常価格で比べると、出力が少し安くなっています。ただし前の版は、発売時に80%引きでした。割引同士で比べると、新版のほうが高いことになります。継続の予算は、通常価格で置くのが安全です。
▶︎ あわせて読みたい:呼ぶ回数が多い処理に軽量モデルを置く——Haiku 5.5の3つの使い所
移行では、推論の既定値に注意してください。前の版は中程度のmediumですが、新版は、軽めのlowが既定です。モデル名だけを替えると、推論の量も変わります。
旧版は新規提供が終わり、10月19日より前から使っていた人は、11月15日まで使えます。期限内に、切り替えを済ませる必要があります。

速いモデルが仕事を変えるのは、答えの質より、確かめる回数です。数秒で返る道具があると、人は気になった時点で聞き直せます。
全部をMercury 3に任せる必要はありません。人が待つ工程と、短い応答を何度も呼ぶ工程から任せ、精度が要る判断は従来のモデルに残す。この線引きが、使い方の核心です。
拡散型は「速いが粗い」という見方を、更新する段階に来ました。待ちが成果を左右する工程から、じわじわと広がっていくでしょう。使う側は自分の処理で速さと成功率を測り、アプリを作る側は、速さを「待たせない画面」に変える設計が問われます。
人が結果を待っていて、何度も確かめたい場面です。筆者の自分用ニュース分析アプリでは、Mercury 3を使った3つのボタンが数秒で回答を返します。通常のモデルで検索つきの回答を作ると30秒から1分かかるので、読みながら気軽には押せませんでした。
通常料金は、100万トークンあたり入力0.20ドル、出力0.70ドルです。発売記念で当面は半額ですが、終了日は発表されていません。前の版は発売時に80%引きだったため、割引同士で比べると新版のほうが高くなります。継続の予算は通常価格で置くのが安全です。
推論の既定値が、前の版の中程度のmediumから、新版では軽めのlowに変わります。モデル名だけを替えると、推論の量も変わります。旧版は新規提供が終わり、10月19日より前から使っていた人は11月15日まで使えます。
AIを徹底的に使いこなすためだけのコミュニティ「フロンティア・リーダーズ」。新しいモデルを、自分の仕事に組み込んで確かめる場です:https://frontier-leaders.vercel.app/
2時間で、自分専用のアプリをAIで作る実践ハンズオン(過去回のアーカイブ):https://handson.workstyle-evolution.co.jp/
Mercury 3の実演も入れた、週次のAIニュース解説動画(YouTube『いけともch』):https://www.youtube.com/watch?v=cWnuhBXVWeQ&t=1069s