10月14日、Anthropicの共同創業者ジャック・クラーク氏が来日し、日本法人のメディア説明会に登壇しました。ITmedia NEWSによると、今回が初来日です。
見出しだけを拾うと、「AIがサイバー攻撃に使われていると認めた」「2027年にAIが自己改善を始める」と読めてしまいます。ですが、実際の発言は3つの主張と1つの回答に分かれていて、それぞれ言っている範囲が違います。
発言を一つずつ切り分けて整理します。

ITmedia NEWSの取材記事が伝えるクラーク氏の発言は、次の4つに整理できます。
新モデルの発売や、被害調査の結果を発表した場ではありません。記者の質問に答える形で、考え方を語った内容です。

クラーク氏は、相次ぐサイバー攻撃について、AIツールが使われている可能性はあると述べました。理由は、「ハッカーも企業と同じように、使えるツールを使う」からです。
ここで押さえたいのは、根拠が一般論だという点です。特定の事件のログや攻撃経路を分析してAIの利用を突き止めた、という説明はありません。国内のある企業の被害にAIが使われたと認定した発言ではないのです。
日本法人の東條英俊社長は、Anthropicが4月に限定提供で公表したClaude Mythos Previewの登場時点で、予想できたことだと指摘しています。そのうえで、今からでもできることはあるとして、AIを活用した対応を促しました。
攻撃する側がAIを使うなら、守る側も使う。説明会の温度感は、危機をあおるより、備えを促す方向でした。

Anthropicは、悪用を防ぐ「セーフガード」を設けています。さらにProject Glasswingで、企業に優先して最新モデルを提供しています。守りを固める側に、先に道具を渡す取り組みです。
それでもクラーク氏は、自社の対策だけでは状況は変わらないと話しました。他社のモデルや、オープンウェイトモデル(※学習済みの重みが公開され、誰でも手元で動かせるモデル)があるからです。
車にたとえると分かりやすいでしょう。Anthropicのセーフガードは、自社の車に付けた安全装置にあたります。ところが道路には、他社の車も、メーカーの手を離れて走る車も走っています。自社の車だけを安全にしても、道路全体は安全になりません。
そこでクラーク氏が求めたのが、全事業者に等しく適用される「常識的な交通ルール」です。責任ある行動をAnthropicだけが取っても足りず、エコシステム全体で解決する必要があるとして、政策議論に力を入れていると説明しました。
法案が成立した、全社共通の技術基準ができた、という話ではありません。対策の範囲を、一社から業界全体へ広げたいという方針の表明です。

記者から、AIが自律的に攻撃を行った例はあるかと問われると、クラーク氏は「確認していない」と答えました。
前の発言とは、質問の対象が違います。
2つは矛盾しません。回答を「AIを使った攻撃はない」という意味に広げることはできません。確認していないとは、クラーク氏本人の認識です。世界のどこにも例がないと証明した発言でもありません。

最後が、AIが自らを改良して性能を高め続ける「再帰的自己改善」です。クラーク氏は、早ければ2027年にも可能になり得ると、自身のニュースレターで述べたことに触れました。
根拠として挙げたのは、今年になって、数学から生物学まで科学的なタスクでAIが創造性を示す証拠が出てきたことです。AI研究も科学の一形態なので、来年にはAIによる科学が非常に速いペースで進み始める可能性を想定すべきだ、と語りました。
筋道は3段です。
本人の見通しであり、自己改善が実現したという報告ではありません。2027年に提供する製品の計画でもありません。サイバー攻撃の話とは別に、AI開発のスピードについて示した予測です。

攻撃する側がAIを使う可能性があるなら、守る側も、自分たちのAIエージェントで固める必要があります。クラーク氏が「一社では足りない」と語り、東條氏が「AIを活用した対応」を促したのも、同じ方向です。攻撃にAIが使われるなら、守りにもAIエージェントを使う。仕事で動けることは3つあります。
AIを使った攻撃は、いまは「可能性」の段階です。だからこそ、実際に起きてから慌てるのではなく、守りのAIエージェントを今のうちに育てておく。それが今回の発言から、仕事に持ち帰れるいちばん大きな点です。
今回は、取材記事を通した発言の整理です。説明会の動画や全文が公開された段階で、細かな言い回しを確かめ直します。
認めたのではなく、使われている可能性はあると述べました。根拠は「ハッカーも企業と同じように、使えるツールを使う」という一般論です。特定の事件でAIの利用を突き止めた、という説明はありません。
記者の質問に対し、クラーク氏は「確認していない」と答えました。これは本人の認識であり、世界のどこにも例がないと証明した発言ではありません。人間がAIを道具として使う攻撃とは、質問の対象が違います。
実現するという断定ではありません。早ければ2027年にも可能になり得る、という本人の見通しです。根拠は、科学的なタスクでAIが創造性を示す証拠が出てきたことと、AI研究も科学の一形態であることです。実現した報告でも、製品の計画でもありません。
AIを徹底的に使いこなすためだけのコミュニティ「フロンティア・リーダーズ」。AIの使い方も、守り方も、実務を持ち寄りながら探っています:https://frontier-leaders.vercel.app/
2時間で、AI活用術を実践のハンズオンで学べます(過去回のアーカイブ):https://handson.workstyle-evolution.co.jp/
YouTube『いけともch』:https://www.youtube.com/@iketomo-ch