
2025/09/13(土)
レトロな美学が再び大きな注目を集めています。TikTokでVHSテープ風に編集された動画から、ポラロイド風スナップショットにインスパイアされたファッション・ルックブックまで、「過去」が新鮮なクリエイティブの最前線となっています。
しかし、これまで本格的なレトロルックを再現するには、Photoshopで何時間も作業するか、高価なフィルターに投資する必要がありました。
そこで登場するのが、GoogleのGemini 2.5 Flash Image(通称:nano-banana)です。このAI画像生成・編集モデルは、高速でコンテキストを理解した変換を得意としています。多くの人がオブジェクトの削除や背景のクリーンアップといった基本的な編集に使用していますが、nano-bananaには隠されたクリエイティブな可能性があります。それは、適切なプロンプトを使えば、現代の写真をレトロスタイルのビジュアルに変換できるということです。
この記事で分かること
✅ nano-bananaの基本的な仕組みと特徴
✅ レトロ編集に最適な理由
✅ すぐに使える6つのレトロプロンプトスタイル
✅ より良い結果を得るための実用的なコツ
目次
nano-bananaことGemini 2.5 Flash Imageは、Googleが2025年8月26日にリリースしたAI画像生成・編集モデルです。まったく新しい画像を生成する拡散モデルとは異なり、nano-bananaは既存の写真を精密に編集します。写真をアップロードし、希望する変更を説明すると、モデルが関連部分を再描画し、残りの部分はそのまま保持します。
1. アナログテクスチャの再現
フィルムグレインやカラーフェードなどのアナログ的な質感を自然に適用できます。
2. ヴィンテージアイテムへの置き換え
現代的なアイテムをレトロな同等品に置き換えて、時代感を統一できます。
3. 時代別ビジュアルの正確な再現
70年代ポスター、80年代VHSフレーム、90年代グロッシー広告など、各時代の特徴を適切に再現します。
4. 人物・スタイルの一貫性維持
人物・スタイルの一貫性維持に強みがあり、ビジュアルの雰囲気だけを変更できます。
💡 ポイント
従来のフィルターは画像全体に一律の効果を適用しますが、nano-bananaは変更が必要な部分だけを知的に判別します。これにより、人物の個性を保ったまま時代の雰囲気を変えることができます。
nano-bananaで生成・編集されたすべての画像には、AI生成であることを識別するためのSynthID透明デジタル透かしが埋め込まれます。これにより、AIによって作成または編集された画像であることが明確に識別可能となり、コンテンツの透明性と信頼性が確保されています。
nano-bananaって変わった名前ですが、普通の画像生成AIとは何が違うんですか?
nano-bananaは「画像を一から作る」こともできますが、「既存の写真を賢く編集する」ことに特に強みがあります。例えば、あなたの写真をアップロードして「1970年代風にして」と言うだけで、髪型や衣装、背景の雰囲気まで自動で調整してくれます。従来のフィルターのように画像全体に一律の効果をかけるのではなく、「この部分は現代的だから変更が必要」「この部分は活かしたまま」と判断して、必要な箇所だけを精密に編集します。
低遅延で高速に生成できるため、手動編集は一切不要です。
「これを1980年代のVHSスチルに変換して」というプロンプトで、単にグレインを追加するだけでなく、色調、衣装、照明まで調整してくれます。
キャンペーンやルックブック、コンテンツシリーズなど、バッチ作業に最適。すべてが同じ時代から来たかのような統一感を演出できます。
レトロは一つのスタイルではありません。ディスコグラマーからネオンライトアーケードまで、正確な美学を選択できます。
ファッションブランドが異なる年代から引用したルックブックでキャンペーンを展開したい場合を想像してください。スタイリストを雇い、セットをレンタルする代わりに、クリエイティブチームはまずデジタルで実験し、最も効果的な方向性を確定できます。これにより制作リスクを下げながら、より多くのクリエイティブオプションを開拓できます。
レトロ画像をビジネスで活用するって、具体的にどんなシーンで役立つんですか?
実はマーケティングや商品開発で非常に実用的です。例えば、アパレルブランドなら「新作を70年代風・80年代風・90年代風」で複数パターン作成し、SNSでどの時代感が一番反応が良いかテストできます。飲食店なら既存店舗の写真を昭和レトロ風に加工して「懐かしカフェ」のコンセプト提案資料を作ったり、不動産会社なら物件写真をヴィンテージ風にして「レトロモダン物件」として差別化を図ることも可能です。デジタルで低コストテストできるのが大きな魅力ですね。
明るく、被写体がはっきりと見える写真を用意してください。レトロ編集は、被写体が明瞭な画像で最高の結果が得られます。
以下の要素を含めて具体的に指示しましょう。
プロンプトを少しずつ変更して、異なるレトロムードを探ってみましょう。
一つの要素が現代的すぎる場合は、その部分をマスクして再編集し、正確性を高めます。
⚠️ よくある失敗例
「ヴィンテージ風にして」だけでは曖昧すぎます。「1970年代のディスコ雑誌の表紙風に、グリッター衣装とサタデーナイトフィーバーの照明で」のように具体的に指示しましょう。
プロンプト:
アップロードされた人物の、温かい黄金オレンジのスポットライトの下に立つムーディーなレトロポートレートをデザインしてください。背景の壁にソフトな円形の光を投射し、ステージのハロー効果を演出します。夕焼けの色合いで特徴的な輪郭を彫刻し、力強いプロフィールの影を作ります。衣装は70年代イブニンググラマーを反映し、きらめく素材とエレガントなテーラリングで。セットはミニマルに - スモーキーな雰囲気、空のスタジオ、強い光の減衰。ドラマティックで、ノスタルジックで、親密さを感じさせるシネマティックなポートレートを撮影してください。
プロンプト:
アップロードされた人物を1970年代のボリウッドアイコンとしてスタイリングした写真リアリスティックな全身画像を生成してください。シーンは賑やかなムンバイの映画館プレミア会場で、ネオンライトで彩られた看板と手描きの映画ポスターが壁を覆っている設定にします。眩いヴィンテージ衣装を着用させ、スパンコールのガウンかサテンジャンプスーツに劇的なフレアレッグ、羽根のボアかフェイクファーのストールで仕上げます。色付きの大きなサングラス、チャンキーな金のジュエリー、グリッターのクラッチバッグでアクセサリーを追加。ボリュームのあるカールの髪型に、太いアイライナーとグロッシーなリップを合わせます。背景にはフラッシュカメラ、記者、ファンを配置。温かいシネマティックトーン、本格的なフィルムグレイン、ヴィンテージコントラストを適用してください。
プロンプト:
アップロードされた人物が、フィットしたブラウスの上にシアーなブラックサリーを片肩に垂らしている、シネマティックで高解像度のポートレートを制作してください。髪は長い波で流し、サイドに新鮮な白い花を飾ります。右側に温かいサイドライトを配置し、プレーンな背景に彼女のプロフィールのソフトな影を落とします。視線は右側に少し傾け、穏やかで思慮深い表情に。最終画像は時代を超越した雰囲気で、穏やかなフィルムソフトネスを持つアーティスティックなレトロフレームに仕上げてください。
プロンプト例を見ると、すごく長くて複雑ですが、AI初心者でも本当に使えるんでしょうか?
ご安心ください!確かにプロ仕様の例は詳細ですが、最初はもっとシンプルで大丈夫です。「写真を1980年代風にして」「ディスコっぽい雰囲気で」程度から始めて、慣れてきたら「衣装も変更」「背景にネオンライト」など要素を少しずつ追加していけばOKです。私がよく使うコツは、まず短いプロンプトで試してみて、気に入らない部分だけ「もっと具体的に」していくことです。ChatGPTに「1980年代のレトロ画像を作るためのプロンプトを考えて」と頼むのも効果的ですよ。
💡 本物のデザイン言語を借用する
「コダクロームトーン」や「イーストマンカラーシネマパレット」のような具体的な用語を使用すると、「温かいヴィンテージルック」のような曖昧な表現よりもはるかに正確な結果が得られます。
効果的なプロンプト例:
❌ 「温かいレトロな感じにして」
⭕ 「1975年のコダクロームフィルムで撮影したような、温かいオレンジとイエローの色調で、軽いグレインとソフトなコントラストを適用」
他のAI画像エディターと比較すると、nano-bananaはフィルターエンジンというよりも精密なリミキサーという印象です。
ツール名 | 特徴 | レトロ編集での強み |
---|---|---|
Adobe Firefly | 画像・動画・音声生成に対応し、商用利用可能なAI創作ツール | 多様なスタイルオプションでレトロを含む様々な美学に対応 |
Runway Gen-3 | AI動画生成に優秀 | 静止レトロ画像には不向き |
Canva AI Editor | アクセシブルで高速 | シンプルなSNSコンテンツ向け |
nano-banana | 人物・スタイルの一貫性維持が得意 | 時代特有の詳細にこだわる場合に最適 |
多くのプロフェッショナルは、nano-bananaを他のAIツールと組み合わせて使用しています。
典型的な制作フロー:
このクロスツールワークフローが、2025年のAI編集で輝く理由です。
nano-bananaは単なる賢い編集ツール以上の存在です。それは効果的なレトロスタイル変換ツールなのです。今回紹介した6つのプロンプトスタイルを活用すれば、現代の画像を過去の数十年間の説得力のある遺物に変換できます。
ポラロイドのカジュアルな親密さ、白黒フィルムのシネマティックドラマ、アーケードのネオングロウ、どれを望んでも、nano-bananaはそのプロセスを瞬時かつ反復可能にします。
レトロは単なるノスタルジアではありません。それはクリエイティブ戦略です。そしてnano-bananaを使えば、フェイクする必要はありません。過去を生成することができるのです。フレームごとに。
🚀 すぐに始められるアクション:
頑張って、素敵なレトロワールドを作り上げてください! ✨
Magic Hour共同創業者兼CEO。Y Combinator採択歴を持つ起業家。
AI動画生成プラットフォーム「Magic Hour」の共同創業者兼CEO。Y CombinatorのWinter 2024バッチに採択された実績を持つ起業家である。Meta(旧Facebook)ではデータサイエンティストとして、新規プロダクト開発部門「New Product Experimentation(NPE)」にて0→1のコンシューマー向けソーシャルプロダクトの開発に従事した経験を有する。
この記事は著者の許可を得て公開しています。
元記事:Nano Banana Tutorial: How to Create Retro Images with Google’s AI Editing Model in 2025
Workstyle Evolution代表。18万人超YouTuber&著書『ChatGPT最強の仕事術』は4万部突破。
株式会社Workstyle Evolution代表取締役。YouTubeチャンネル「いけともch(チャンネル)」では、 AIエージェント時代の必須ノウハウ・スキルや、最新AIツールの活用法を独自のビジネス視点から解説し、 チャンネル登録数は18万人超(2025年7月時点)。