
2025/09/13(土)
RAG(Retrieval-Augmented Generation)システムの精度向上に悩んでいませんか?従来のRAGシステムでは、データの前処理が複雑で、特にQ&A形式のデータ構造化や多様なデータソースの統合に課題がありました。しかし、DifyのKnowledge Pipelineという新機能により、これらの課題が劇的に解決されようとしています。
この記事では、Difyの最新機能「Knowledge Pipeline」の詳細な機能解説から、実際の使用方法、そしてなぜこの機能がノーコードRAGの決定版と言えるのかまで、実践的な観点から詳しく解説します。特に、Q&A形式のデータ処理能力と柔軟なデータ変換機能に焦点を当て、従来の手動処理からの脱却方法をお伝えします。
目次
Knowledge Pipelineは、RAG用のデータ処理に特化したDifyの新機能です。この機能の最大の特徴は、ワークフローのような視覚的なインターフェースでデータ処理パイプラインを構築できることです。
従来のRAGシステムでは、データの前処理は別途Pythonなどのプログラミング言語で行い、処理済みデータをチャンクとして投入する必要がありました。私も実際に自分のツールでは事前に処理を作ってデータを投入していました
しかし、Knowledge Pipelineを使用することで、この一連の処理をGUI上で定義し、用途に沿った形でデータ化することが可能になります。
具体的には、以下のような処理フローを視覚的に構築できます:
Knowledge Pipelineが対応するデータソースは非常に幅広く、企業の実際のデータ環境に即した設計となっています。
カテゴリ | 対応サービス・形式 | 特徴 |
ファイル形式 | Excel、HTML、Docs、CSV、PowerPoint | 一般的なオフィス文書を直接処理可能 |
クラウドサービス | SharePoint、OneDrive、Google Drive、Google Cloud | 企業の主要クラウドストレージと連携 |
開発・協業ツール | GitHub、Confluence、Notion | 開発チームや企業の知識管理システムと統合 |
ウェブデータ | WebCrawler(FireCrawl対応) | ウェブサイトの情報を自動収集・処理 |
特に注目すべきは、PowerPointファイルの処理能力です。スライド単位での内容抽出が可能で、構造化されたデータとして活用できます。ただし、現在のところ画像形式での処理は公式サポートされておらず、カスタム処理が必要な状況です。
Knowledge Pipelineの最も革新的な機能の一つが、Q&Aプロセッサーです。この機能により、従来の単純なテキストチャンクではなく、質問と回答のペアとして構造化されたデータを作成できます。
Q&Aプロセッサーで処理されたデータは、以下のような特徴を持ちます:
この仕組みにより、「精度の高いRAG」として知られるパターンを簡単に実装できます。従来は手動でQ&Aデータを作成する必要がありましたが、Knowledge Pipelineでは元データを投入するだけで、適切なQ&A形式に自動変換されます。
Knowledge Pipelineでは、データの性質や用途に応じて3つのチャンク構造を選択できます:
従来の一般的なテキスト分割方式です。文書を一定の長さで区切り、シンプルな検索に適しています。
階層構造を持つデータに適した方式で、文書の構造を保持しながら検索精度を向上させます。
前述のQ&A形式に特化したチャンク構造で、最も検索精度が高い方式です。質問部分での検索と、回答部分でのコンテキスト提供により、ユーザーの意図により正確に応答できます。
Knowledge Pipelineの柔軟性は、豊富な処理ツールとプラグインによって実現されています。
Knowledge Pipelineでは、処理ツール自体もプラグインとして提供されており、必要に応じて機能を拡張できます。現在利用可能な主要プラグインには以下があります
Knowledge Pipelineの導入により、RAGシステムの構築プロセスが根本的に変わります。
これまでRAGシステムで高精度を実現しようとすると、以下のような手動作業が必要でした:
これらの課題が、Knowledge Pipelineにより以下のように解決されます:
Knowledge Pipelineで処理されたデータは、最終的に知識ベースノードで検索可能な形式に変換されます。この段階で重要なのが、エンベディングモデルと検索方法の選択です。
特にQ&Aチャンクを使用する場合、検索時には質問部分のみが使用されるため、より精密なマッチングが可能になります。これにより、ユーザーの質問意図により正確に応答できるRAGシステムを構築できます。
DifyのKnowledge Pipelineは、RAGシステムの構築において革新的な変化をもたらす機能です。特に以下の点で、従来のアプローチを大きく上回る価値を提供します:
精度にこだわるRAGシステムを構築したい方にとって、DifyのKnowledge Pipelineは現時点で最も実用的で効果的な選択肢の一つと言えるでしょう。特に、企業での本格的なRAG導入を検討している場合、この機能の活用により、従来では困難だった高品質なRAGシステムを効率的に構築することが可能になります。
Dify Knowledge Pipelineは、RAG(Retrieval-Augmented Generation)システム用のデータ処理に特化したDifyの新機能です。視覚的なインターフェースでデータ処理パイプラインを構築でき、データソースの選択、データ変換処理、最終的なデータ保存といった一連の処理をGUI上で定義できます。
Dify Knowledge Pipelineは、Excel、HTML、Docs、CSV、PowerPointなどのファイル形式、SharePoint、OneDrive、Google Driveなどのクラウドサービス、GitHub、Confluence、Notionなどの開発・協業ツール、WebCrawler(FireCrawl対応)など、幅広いデータソースに対応しています。
Q&Aプロセッサーは、Dify Knowledge Pipelineの革新的な機能の一つで、データを質問と回答のペアとして構造化できます。検索時には質問部分のみが使用され、より精密なマッチングが可能になり、回答部分には詳細な情報が含まれるため、コンテキストとして高品質な情報を提供できます。
Dify Knowledge Pipelineでは、データの性質や用途に応じて、標準チャンク、親子チャンク、Q&Aチャンクの3つのチャンク構造を選択できます。Q&Aチャンクは、質問部分での検索と回答部分でのコンテキスト提供により、最も検索精度が高い方式です。
ウェブサイトのデータ処理には、まずFireCrawlで対象サイトのURLを指定し、クロール設定を行います。次に、Dify Extractor、Variable Aggregator、LLM処理、Q&Aプロセッサーなどを組み合わせてデータ処理パイプラインを構築します。処理後、CSV形式で結果を確認したり、知識ベースに統合してRAGシステムで利用できます。
Workstyle Evolution代表。18万人超YouTuber&『ChatGPT最強の仕事術』著者。
株式会社Workstyle Evolution代表取締役。YouTubeチャンネル「いけともch(チャンネル)」では、 AIエージェント時代の必須ノウハウ・スキルや、最新AIツールの活用法を独自のビジネス視点から解説し、 チャンネル登録数は18万人超(2025年7月時点)。